■Dear Girls 「女のくせに」「男らしくない」。私たちの身の回りにはジェンダー(社会的な性)をめぐる固定的な考えがあふれ、ひとりひとり進みたい道を選びとれなかったり生きづらさを感じたりすることにつながっています。もう終わりにしたい、ジェンダーにまつわる「呪縛」を8回にわたってとりあげま…
人種や性的指向などを理由に、少数者に向けられるヘイトスピーチ。差別や偏見は、ネットの世界だけでなく、雑誌やテレビにも広がる。「言いたい放題」の風潮が広がるのはなぜか。 ■差別楽しむ人、一定数いる 崔江以子さん(川崎市ふれあい館副館長) 初めてヘイトスピーチに遭遇したのは2013年春、川崎駅前…
鹿児島県は未だに「男尊女卑がある」と言われる地域。そこで生活する女性たちは「被害者」扱いされることもあるが、鹿児島出身の私に言わせると、まったく逆だ。実は日本で一番、男社会での処世術を知っている女性は、鹿児島女性なんじゃないかと思うこともある。 私は鹿児島県南九州市の頴娃町というところで生まれた。すぐに横浜に移り住んだものの、両親も親戚もみんな生粋の鹿児島人である。私もきっちり文化を受け継いでいる。 九州の中でも、鹿児島県はとくに男が強い文化として有名。東京でこのことを話すと、「男尊女卑」だと後ろ指をさされることはザラである。 たしかに、男は家庭では何もしない。本当に何もしない。料理は運ばれてくるのを当然のように待ち、食事が終われば皿が下がるのを待ち、お茶を待つ。ありがとうは一言もない。父親をキッチンで見かけた記憶もほぼない。 親戚の宴会ともなれば、男女は別れて座る。男はどっしり上座を取っ
2016年6月に発表された安倍内閣の「ニッポン一億総活躍プラン」では、働き方改革は一億総活躍社会の実現に向けた横断的課題であると明記された。同年9月には働き方改革担当大臣という新しい大臣ポストが誕生し、初代大臣には加藤勝信衆議院議員が任命された。 働き方に関する課題はそもそも厚生労働省が管轄しているのだから、今回の働き方改革も厚生労働省に音頭を取ってもらうことも検討されたはずだが、新たに大臣ポストを設置したということは、安倍政権が働き方改革を重要課題として位置づけていることの証左であろう。 また同じく2016年9月からは、安倍首相自身が議長を務める「働き方改革実現会議」が継続的に開催されている(現時点で2017年2月22日の第8回まで終了している)。この会議で検討するテーマは次の通り、9項目となっている。 1 同一労働同一賃金など非正規雇用の処遇改善 2 賃金引き上げと労働生産性の向上 3
年末年始の帰省が嫌だ、という人はどれくらいいるだろう。それぞれの親族は好きでも、一同に集まるのはちょっと辛い。共通の話題は「最近あったこと」くらいしかなく、場をもたせるのに苦労する。 親族の一部には「結婚はまだなの」「子どもは?」と彼らの世代では当たり前だった人生を押し付けてくる人もいる。今期のドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』でも見せて、 「私達の周りにはたくさんの呪いがある。あなたが感じているのもその一つ。自分に呪いをかけないで」 と百合ちゃんばりに返したいものだが、現実の私たちって何て無力なのか。むしろ自分がアウトコースにいるんじゃないか? 25歳で結婚して子供をポンポンと3人産んだ従姉妹を見ながら自分が嫌いになる。だから、帰省はユウウツだ。 と、思わせないためにここからの文章を書く。帰省の前に読んで、あらかじめ自分を解毒しておけるように。少しでも勇気が湧くように。 親戚から飛んでくる
2018年に明治維新150周年を迎えます。福沢諭吉は「一身にして二生を経るが如く一人にして両身あるが如し」(『文明論之概略』)と記しましたが、それにならってみれば近代日本はこの150年で三生も四生も経たように思います。 近代に憧れ“坂の上の雲”を追った時代、日清・日露の戦勝(後者は危ういものでしたが)を経て第一次世界大戦で大国となったのが1918年、ちょうど明治維新後50年にあたります。その後、軍国主義、帝国主義の道をひた走った30年弱、そして戦後曲がりなりに民主主義国家となって70年余、日本はどれほどの変化を経てきたのでしょうか。この100年は日本になにをもたらしたのでしょうか。 夏目漱石研究者の石原さんは「漱石の書き込んだ風俗は、当時どんな意味を持ったのだろうか」、「漱石の時代の読者は、漱石の小説をどんな風によんだのだろうか」という関心から、2千冊以上の「雑書」にあたったそうです。そこ
スピン経済の歩き方: 日本ではあまり馴染みがないが、海外では政治家や企業が自分に有利な情報操作を行うことを「スピンコントロール」と呼ぶ。企業戦略には実はこの「スピン」という視点が欠かすことができない。 「情報操作」というと日本ではネガティブなイメージが強いが、ビジネスにおいて自社の商品やサービスの優位性を顧客や社会に伝えるのは当然だ。裏を返せばヒットしている商品や成功している企業は「スピン」がうまく機能をしている、と言えるのかもしれない。 そこで、本連載では私たちが普段何気なく接している経済情報、企業のプロモーション、PRにいったいどのような狙いがあり、緻密な戦略があるのかという「スピン」を紐解いていきたい。 10月7日、電通の新入社員の女性が「過労自殺」だったとして労災認定された。また、政府はこの日の閣議で「過労死等防止対策白書(2016年版)」を決定、これを受けて「残業100時間くらい
残業削減のため様々な知恵を絞る日本企業だが、成果を上げているのは一部にとどまる。残業が減らない背景には、経営層の1つの誤解と、諸外国にはない2つの事情がある。日本人は皆、家に帰りたくない──。そのぐらいの前提に立って対策を練らないと残業は減らない。 バブル華やかなりし1988年、こんなキャッチコピーのCMが流行した。俳優の時任三郎氏を起用した、三共(現・第一三共ヘルスケア)のドリンク剤「リゲイン」のCMだ。24時間戦ったかはともかく、昭和はそのぐらい「残業が当たり前の時代」だった。 バブル崩壊後残業は減ったか が、その後、バブルが崩壊。社員は一転、効率性を要求されるようになり、企業も残業削減のため様々な施策を打ち出した。 裁量労働制やフレックス制、在宅勤務、サマータイム、早朝出勤制などを導入し「無駄のない働き方」を目指した企業もあれば、定時消灯や罰金制、事前申告制などにより半ば強引に労働時
非正規労働者の相対的貧困率は、若年男性(25~34歳)では23.3%と5人に1人であるのに対し、壮年男性(35歳~44歳)では3人に1人(31.5%)、配偶者のいない女性ではさらに増え、2人に1人(51.7%)に上ることがわかった――。 これは先日、独立行政法人労働政策研究・研修機構が行った「壮年非正規労働者の仕事と生活に関する研究」で明らかになったことである。 就職氷河期に、学校を卒業した人たちが40歳前後となった。40になれば、親も高齢になり、若い世代とは、違う問題があるに違いない――。そんなリサーチクエスチョンのもと、「ミドルの非正規社員」にスポットを当てた調査を、労研が実施したのだ。 「今はまだ、母の面倒を見なきゃならないんで、なんとかなってますけど。自分1人になったら……ヤバいなぁって思うんです」 昨年夏、元女性歌手の転落死に関する報道が問題になったとき、非正規で働く40代の男性
2011年春、東北の被災地に行ってきたことがある。 GW後ならば、私のような非力な人間でも需要があるだろうと思い、友人のプロジェクトに参加させてもらう形で、規制線内に物資などの支援に行ってきた。 語弊があるかもしれないが、そこで見たのは、死者に優しく、弱者に厳しい世界だった。自衛隊員が絶望的な表情で、膨大な人力と重機で遺体捜索する一方、道路が寸断された向こう側では、眼鏡、スリッパ、毛布、サインボール等が散乱する海岸近くの砂地で被災者たちがテント生活を送り(公共施設からはみ出る形)、そこには水道もガスもトイレもなく、風呂はサウナ、電気は発電機で若干しかない状態だった。他方、上空では、海自のヘリがしきりに遺体捜索で飛んでいた。 元自衛官の友人は、「自衛隊は遺体捜索より、さっさと道路等のインフラを修復し、被災者の生活再建と向上に注力するべき」ではないかと呟いたが、私も同感だった。既に亡くなった方
早速ですが、『日本の男を喰い尽くすタガメ女の正体』(講談社α新書)。いやーまいったな、と思いました。最初は単純な専業主婦攻撃の本かと思いましたが、読んでみるとそうじゃない。日本社会にたくさん存在する、あるタイプの夫婦・親子関係が、現代社会の様々な病理を生み出しているという指摘ですね。 読んでいて、笑いと恐怖が交互にこみ上げてきたんですが、たぶん女性よりは男性、それもいわゆる「高スペック」男性にとっては、恐ろしい本でしょうね。 深尾:ある男性は、読んでいてお腹を下してしまったそうです。ちょうど「ママ友地獄」について書いてある章だったらしいですが。 タガメ女:田んぼに生息してカエルを捕獲するタガメのごとく、収入や社会的地位のある男性を捕獲し、「幸せな家庭」というタガにがっちりとはめて自由を奪い、リソースを吸い尽くす女性。夫だけではなく子供、ママ友など周囲の人間関係をもタガによって呪縛する。搾取
2011年9月15日 日本の若者の幸福度が70%ちかいという事実をどう解釈するか? テーマ: 書評, 社会論 絶望の国の幸福な若者たち という本を読んでいる。かなり面白い。まだ半分くらいしか読んでいないが。その中で、早速、そのとおりと思ったのが、幸福に関する論証だ。 なぜ日本の若者はこんな不幸な状況におかれているのに、立ち上がろうとしないのですか? この本では「なぜなら、日本の若者は実はとっても幸せだからです」という逆説を指摘している。 なんと、自分がいま幸せだと感じる若者は、高度経済成長期やバブル時期よりも顕著で、なんと失われた20年にはいってから今が幸せだと思う若者の割合は増え続け、ついに過去最高の70%に達しようというのだ。 世界幸福度*ランク1位のブータンや北朝鮮にせまろうかという数字。 これはいったいどういうことか。この本の論証によると、 将来の可能性がとざされた人は
取材で鳩山政権の迷走について訊かれる。 どうして日本政府はアメリカに対して毅然とした態度が取れないのかというお訊ねである。 メディアは単純に「それは総理が無能だから」という属人的な説明でケリをつけようとしている。 もちろん統治者の資質が外交の成否に深く関与するのは事実である。 だが、現在の日本のメディアの、すべての政治的できごとの成否を属人的な能力によって説明するスキームの定型性に私はいい加減うんざりしている。 たしかに、外交がうまくいっていないという事実に為政者の個人的能力はふかく関与している。 けれども、それが「外交の失敗のすべての理由である」としてそれ以上の吟味を放棄するのは、思考停止に等しい。 歴代の統治者たちが組織的にある外交に失敗するとしたら、それは属人的な要素によっては説明できない構造的な問題があるのではないか、と考えるのが科学的な考え方である。 日本のジャーナリストには、こ
今日の日経朝刊の一面トップ記事は、JALの企業年金制度の改正案(減額案)が賛成多数に必要な3分の2を集めた、という話だった。 やっとこさ賛意を得たのは、「既に退職しているOBが今後貰う年金は3割減、まだJALで働いている現役社員が将来貰う年金は5割以上の減になる」という案だ。 現役社員はまだこれから稼げる立場とはいえ、削減率はOBより2割も多い。既に“高給”正社員として定年まで勤め上げ、一部退職金も受け取り済みのOBに比べ、現役社員には今後、リストラ、賞与減、退職金減が待っている。持ち株会の株式は紙切れだし、年金額の半減は厳しいだろう。 にもかかわらず、現役社員の方は、今月4日には早々と減額案賛成数が3分の2を超えていた。そして先週末に減額賛成数は9割を超えた。活発な組合員もいるJALとしては驚くほどの団結力といえる。 理由は明確だ。現役社員にとっては、将来の年金なんかより「今、自分の働い
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