禅には昔からおっかないイメージがあった。 それはきっと若い頃に読んだエピソードが強烈だったせいだろう。 禅の始祖である達磨に弟子入りを乞い、覚悟のほどを示すために自らの左肘を斬り落としてみせた慧可のエピソードである。雪舟の国宝『慧可断臂図(えかだんぴず)』にも描かれた有名な場面だ。 この話を初めて知った時、あまりに訳がわからなすぎて混乱した。弟子入りを断られたからといって腕を斬る慧可もどうかしているが、それを見て「その意気やよし」と弟子入りを認める達磨もどうかしている。もちろん宗教というのは、自分のような凡夫の常識が及ばないものなのだろうが、それにしても無茶苦茶である。この訳のわからなさに加えて、坐禅で姿勢を正す際に使われる警策(きょうさく)の痛そうな印象もあいまって、禅は怖いというイメージが刷り込まれてしまったのだ。 だから、スティーブ・ジョブズがなぜ禅に傾倒していたのか、ずっと疑問だっ
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