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ブックマーク / honz.jp (44)

  • 『レッド・プラトーン 14時間の死闘』耳をつんざく砲弾の音、着弾時の振動、立ち込める煙 - HONZ

    9.11後、アフガニスタンに派兵したアメリカは、パキスタンとの国境地帯で反乱の急増に悩まされていた。そこで2006年夏、この急峻な山地帯に前線基地を点々と連ねて敵の補給線を分断するとともに、現地の村人には不足している物資を供給し人心を勝ち取るという作戦を立てた。これにより谷間の川沿いにくねくねと伸びている狭隘な道沿いに十数箇所の前哨基地が作られていった。奥へ奥へと進んでいった最後の前哨が「キーティング」と呼ばれる場所だ。だがこの前哨はとんでもない代物だった。 四方を切り立った山に囲まれている。斜面には花崗岩の露頭が点々とあり、木々は生いしげり、敵は隠れ放題だ。一方そこから見下ろされる「キーティング」の中にはほとんど隠れる場所がない。ヘリコプターの降着地帯は川を隔てたところにあり、橋を渡らなければ行かれない。最も近い米軍基地から車両でこようと思えば一しかない4メートルにも満たない幅の道路を

    『レッド・プラトーン 14時間の死闘』耳をつんざく砲弾の音、着弾時の振動、立ち込める煙 - HONZ
  • 『レッド・プラトーン 14時間の死闘』今年一番の戦争ノンフィクション! - HONZ

    戦闘前哨(COP)キーティングはアフガニスタン北東部に位置するヌーリスタン州の山岳地帯に作られた。パキスタンの国境から、わずか22.5キロメートル。9.11以降アフガニスタンに派兵した米軍はアフガニスタン東部での反乱に悩まされていた。アルカイダとタリバンの戦士達はこの急峻な山岳地帯の網の目のような隠れ谷をうまく利用し、戦士や武器をパキスタンから補給していた。この地方の複雑な地形を利用した輸送線は米軍だけでなく1970年代のソ連軍をも悩ましていた。米軍はこの問題を解決するためにヌーリスタン州及びクナール州の奥地に前進基地を点々と連ね、敵の補給線を断ち、米軍に疑いの目を向けている現地住人に不足している物資を提供し懐柔を図ると共に、インフラ建設を施し、タリバンからの離反を促す戦略を取る。COPキーティングはそうした戦略の一環として誕生した。 書『レッドプラトーン』はこのCOPキーティングに派遣

    『レッド・プラトーン 14時間の死闘』今年一番の戦争ノンフィクション! - HONZ
  • 『<映画の見方>がわかる本 ブレードランナーの未来世紀 』 - HONZ

    町山智浩は〈今世紀最初の映画評論家〉である。 2002年に最初の映画評論集──書の前作にあたる『〈映画の見方〉がわかる─『2001年宇宙の旅』から『未知との遭遇』まで』(洋泉社)を上梓し、このとき初めて町山さんは映画評論家を名乗った。映画について書く映画ライターは大量に輩出されても、映画評論家を新たに名乗る者など皆無だった時期に、である。そこにはどんな意味があるのだろうか。 映画評論家なんて誰でもなれると言われる。実際、おすぎさんは『映画芸術』(1996年秋号)の映画批評特集で「映画評論家になりたかったら、自分で名乗ればいい」と言われて名乗るようになったと明かしている。しかし、続けて「評論とか批評とか言うにはおこがましい仕事ばかりしているように思えます」と省みて、だから自身を「劇場勧誘員」と称しているのだと語る。〈映画評論家〉を名乗ることへの畏れは、過去の優れた映画評論を読んでいなけれ

    『<映画の見方>がわかる本 ブレードランナーの未来世紀 』 - HONZ
  • 『日本の15歳はなぜ学力が高いのか?』教育の旅紀行 - HONZ

    ロンドンの貧困地区の中等学校で数学を教えていたイギリス人教師が、学校をめぐる旅に出た。OECD(経済協力開発機構)が実施しているPISA(学力到達度調査)で高得点をあげた国々を選び、学校を訪問する。この旅を通じたフィールドワークはユニークなものだ。PISAの成績上位国の学校で働く教師たちのメールアドレスをネットで探し、彼ら・彼女らの学校での手伝いをしながら、その教師たちの自宅に2、3週間滞在させてもらう。こうして、公式のルートで依頼したらあてがわれてしまいそうな「ピカピカの」学校ではないところに入り込む。さらには、教師たちの家族や友人との会話を通じて、「公式見解」とは異なる、その国の教育の実情に迫る。選ばれた国や地域は、シンガポール、上海、日、フィンランド、そしてカナダである。 帰国後、彼女はクラウドファンディングで出資を募り、旅の記録を一冊のにまとめた。それが書『日の15歳はなぜ

    『日本の15歳はなぜ学力が高いのか?』教育の旅紀行 - HONZ
  • 『子育ての大誤解 重要なのは親じゃない 』「言ってはいけない」真実が示す、親と子の幸福なあり方 - HONZ

    『子育ての大誤解 重要なのは親じゃない 』「言ってはいけない」真実が示す、親と子の幸福なあり方文庫解説 by 橘 玲 『子育ての大誤解』は掛け値なしに、これまででわたしがもっとも大きな影響を受けたのひとつだ。なぜなら長年の疑問を、快刀乱麻を断つように解き明かしてくれたのだから。 いまでいう「デキ婚」で24歳のときに長男が生まれたのだが、その子が中学に入るくらいからずっと不思議に思っていたことがあった。親のいうことをきかないのだ、ぜんぜん。13、4歳のガキと30代後半の大人では、経験も知識の量も圧倒的にちがう。どちらが正しいかは一目瞭然なのに、それを理解できないなんてバカなんじゃないのか、と思った。 しかしよく考えてみると、自分も親のいうことをまったくきかなかった。だとすればこれは因果応報なのだとあきらめたのだが、それでも謎

    『子育ての大誤解 重要なのは親じゃない 』「言ってはいけない」真実が示す、親と子の幸福なあり方 - HONZ
  • 『週刊文春 』や『 週刊新潮』の読者は、どんな本を読んでいるのか? - HONZ

    「文春砲」という言葉が世の中に広く認知されてからまだ1年足らず。今年はどんなスクープを?と思っていた矢先、週刊新潮が週刊文春についてのスクープ記事を出すという、思いもしない展開に突入。出版業界を戸惑わせています。 相変わらず雑誌の売れ行きは厳しく、再生までの道のりは長そうです。しかし、一方で、雑誌というのは書店店頭にお客様を定期的に呼び込む大事な商品でもあります。毎月、毎週決まった時にお店に足を運ぶからこそ、出会うことのできたも多いはず。今回は、話題になっている週刊誌について調べてみたいと思います。 先日、日雑誌協会が印刷証明付き部数(2017年1月〜3月)を公表しました。その情報を元に、一般週刊誌ジャンルの雑誌について、読者の男女比を出してみました。それが下記の表です。(男女比は日販WIN+調べ) *各誌とも3月末発売の号の読者データを参照しています。 雑誌名 出版社名 印刷証明付き

    『週刊文春 』や『 週刊新潮』の読者は、どんな本を読んでいるのか? - HONZ
    AKIYOSHI
    AKIYOSHI 2017/05/31
    女性読者がプレイボーイに12%、現代に26%、SPAに30%もいるとは皮膚感覚では俄に信じがたい。
  • 『セガ vs. 任天堂 ゲームの未来を変えた覇権戦争』 - HONZ

    書は映画化を視野に入れたストーリー性重視のノンフィクションで、ゲームの内容やテクノロジーよりも、企業の競争戦略や個性的な登場人物たちの葛藤や苦悩、生き様などに焦点を当てた点がユニークな作品となっている。著者はゲーム業界をビジネス的観点から描くことで、マーケティングや営業の現場が創造的プロセスにどんなインパクトを与えたかを、興味深いエピソードを積み重ねながら明らかにしていく。もちろん、熾烈な市場シェア争いを描いたビジネス戦記として読むことも可能だし、最近はやりの「お仕事小説」としての側面も備えた、読み応えたっぷりの娯楽作品である。 2016年の『ポケモンGO』ブームや、最近最終作が公開された映画『バイオハザード』シリーズなどは、日発のゲームやキャラクターが世界に与えた影響力の大きさを物語る最新事例だが、書(原題は Co

    『セガ vs. 任天堂 ゲームの未来を変えた覇権戦争』 - HONZ
  • 『ニワトリ 人類を変えた大いなる鳥』 - HONZ

    ニワトリ無くして、人類無し! もし世界からニワトリが消えたなら? きっと各地でパニックが起きるに違いない。鶏肉は牛肉・豚肉などと比べて国際的な生産・消費量が急増しており、とりわけ新興国・途上国での需要がぐんと伸びている。安価で栄養価の高い肉や卵は、多くの庶民の健康を陰で支えてきた。 その膨大な加工品も含めて、人類にとってますます不可欠な材となり、成長する巨大都市のエネルギー源にもなっている。 もし私たちが他の惑星へ移住する時がきたならば、最も重要なタンパク源としてニワトリをまず同行させるだろう。実際、NASAはニワトリが惑星間旅行に耐えられるかどうかの実験をしており、可能と結論づけている。 材だけではない。インフルエンザの世界的流行をい止めるのにも、ニワトリは重要な役割を担っている。インフルエンザワクチンを作る入れ物として、卵が使われているのだ。 「宇宙船よりも複雑な構造」を持つ卵

    『ニワトリ 人類を変えた大いなる鳥』 - HONZ
  • 『「日本スゴイ」のディストピア 戦時下自画自賛の系譜』最近、再び増殖中 - HONZ

    「ディストピア」とはユートピアの反対語。理想郷じゃない場所のことだ。「日スゴイ」ならユートピアなんじゃないの?と思いながら読みはじめると、戦時下に行われたプロパガンダによって洗脳された日人の姿に戦慄させられる。言葉の力は強大だ、プラスに働いてもマイナスでも。 書には昭和初期から終戦までに出版された、当時の「日スゴイ」の中から「日主義」「礼儀」「勤労」など、現代にも通ずる日礼讃キーワードごとに、膨大なを吟味していく。こんなことが大真面目に語られていたかと驚くばかりである。 そもそも「日スゴイ」のネタの原型はどこにあるのか。探っていくと見つかったのは週刊新潮の版元、新潮社が出していた月刊総合雑誌「日の出」であったのだ。 満州事変を契機とする日の国際連盟脱退を受けた「日の出」1933年10月号には「世界に輝く日の偉さはこゝだ」という特別付録が付いていた。地球上に全く孤立無援

    『「日本スゴイ」のディストピア 戦時下自画自賛の系譜』最近、再び増殖中 - HONZ
    AKIYOSHI
    AKIYOSHI 2016/08/06
    昔の新潮社ってそんなの出してたんだ。今なら文藝春秋社で出してそう。
  • 『「イスラム国」の内部へ 悪夢の10日間』ISとは何者なのか? - HONZ

    イラクとシリアに跨るISの支配地域の内情がどの様なものであるのかは多くの謎に包まれている。メディアなどで語られる情報は反IS側の陣営によるプロパガンダ的な要素を含んだ物が多く、その内容のどこまでが真実であるのか釈然としない点も多い。IS側もこれまでジャーナリストを支配地域に入れる事を拒んできた。多くのジャーナリストがIS の戦闘員に拘束され殺されている。書はそんな状況の中で西側陣営のジャーナリストとして初めてISの指導者であるバクダーディーから正式に許可を得てIS支配地域を取材にしたドイツ人ジャーナリスト、トーデンヘーファーのルポタージュだ。 ジャーナリストとしての著者の立ち位置は明確だ。事が起こった際には、批判的精神を持ちつつ当事者双方の意見に耳を傾けるというものだ。当たり前なように聞こえるがこれは当に難しい事だろう。日の事を例にとって考えればわかるだろう。中国北朝鮮などの国々と

    『「イスラム国」の内部へ 悪夢の10日間』ISとは何者なのか? - HONZ
  • 『数学者たちの楽園 「ザ・シンプソンズ」を作った天才たち』著者サイモン・シン インタビュー 数十年来の陰謀を暴く - HONZ

    前作『代替医療解剖』の発表から実に8年。人気サイエンスライター、サイモン・シンの最新作の翻訳版がついに完成しました。テーマはズバリ『ザ・シンプソンズ』。1989年の初放映からすでに600話超! 今も続くアメリカの大人気アニメーションです。黄色い肌に、大きなギョロ目、極端にデフォルメされた姿はきっと多くの人がご覧になっているはず。社会風刺のたっぷりきいたドタバタアニメは時に社会問題にからんで日でも話題に上ります。 でも今回の切り口は、風刺でもなければアニメ論でもありません。『ザ・シンプソンズ』、実は超難解「数学コメディー」だった!! というサイモン・シンならではのものです。この背景にはハーバード大などで数学の博士号を取得した「天才」たちが、研究職をなげうってまで『ザ・シンプソンズ』の脚家になったという、驚くべき事実があるのですが、なぜ、そんなことが起こってしまったのか、そもそもどんな理由

    『数学者たちの楽園 「ザ・シンプソンズ」を作った天才たち』著者サイモン・シン インタビュー 数十年来の陰謀を暴く - HONZ
  • 『エコノミストの昼ごはん』毎日の食事が、未来のシステムへの一票になる - HONZ

    毎年元旦になると、それなりに新たな決意を胸に秘めており、ここ数年のテーマは料理経済学である。おそらく来年の今頃も同テーマで決意を新たにしている姿が早くも脳裏に浮かぶが、書を読むことで少しでも膠着状態を打開したいと思い、手に取った。 現在、の分野では多くの専門家たちのミスリードにより、以下の3つの通説がまかり通っている。 ・最良のべ物には、より多くのお金がかかる ・安価な料の最大の供給源ーー巨大アグリビジネスーーは、救いがたい悪である ・イノベーションの源として、消費者は信頼に値しない。 著者は、これらの通説を時には天邪鬼なモノの見方で、また時には世界中の美味しいものをべ歩きながら情報を感じ取り、美味しさの正体を構造的に紐解いていく。 書は『大停滞』『創造的破壊』などの著者としても知られる、経済学者タイラー・コーエンが、良いとは何かということについて経済学的アプローチで探求し

    『エコノミストの昼ごはん』毎日の食事が、未来のシステムへの一票になる - HONZ
  • 『コーランには本当は何が書かれていたか?』 - HONZ

    イスラムを深く知るためには、「コーラン」を避けて通ることができない。ジハードで死ぬと、楽園の72人の乙女という報酬があると書かれているのは当か? そして過激派たちによってどのように曲解され、利用されてきたのか? 今あらためて問われる、コーランに書かれている内容の質。(HONZ編集部) 書はカーラ・パワー(Carla Power)著If the Oceans Were Ink――An Unlikely Friendship and a Journey to the Heart of the Quran(『たとえ海がインクであっても――奇妙な友情とコーランの心髄への旅』)(2015年 ヘンリーホルト刊)の邦訳です。 副題にある「奇妙な友情」とは、著者である気鋭のアメリカ人女性ジャーナリスト、カーラ・パワーと、書における彼女の対話の相手、イスラム学者のモハンマド・アクラム・ナドウィー師と

    『コーランには本当は何が書かれていたか?』 - HONZ
  • 残念ながら、日本人の8割にこのビジネス書はいらない『異文化理解力』 - HONZ

    まずは下の写真を見て欲しい。これは「人物を撮る」ように言われた二人の被験者が撮影した写真だ。撮影した二人のうち、一人はアメリカ人、もう一人は日人である。どちらの写真がどちらによって撮られたものか、お分かりだろうか。 多くの人が正解を予想できたのではないかと思うが、左がアメリカ人、右が日人によって撮影された写真である。複数の被験者に対して行われたこの実験において、アメリカ人はほとんどの場合、人物の顔がはっきり分かるようにクローズアップ写真を撮った一方で、日人は背景まで写るように撮影し、人物が非常に小さくなる傾向にあることがわかった。 西洋の実験参加者「だけど人物の写真を撮れと言われたんだから、左のこそが人物写真だよ。右の写真は部屋の写真だ。どうして日人は人物の写真を撮れと言われて部屋の写真を撮るんだ?」 アジアの実験参加者「左の写真は人物写真とは言えない。顔のクローズアップ写真だ。こ

    残念ながら、日本人の8割にこのビジネス書はいらない『異文化理解力』 - HONZ
  • 『印刷という革命 ルネサンスの本と日常生活』初期近代印刷文化の興亡と万有書誌の夢 - HONZ

    ここに翻訳をお届けする『印刷という革命──ルネサンスのと日常生活』は、西欧印刷史の泰斗アンドルー・ペティグリーが満を持して2010年に世に問うた、実にスリリングな初期近代メディア文化史の傑作である。 原著で400ページを超えるその浩瀚なヴォリュームと射程の広さ、扱うトピックの目くるめく多様性にもかかわらず、原題は『ルネサンスにおける』(The Book in the Renaissance)と意外なほどシンプルで、そのややもするとぶっきらぼうにも見える骨太な表題のうちに、著者の自信のほどがうかがえる魅惑の一冊だ。邦題の選定にあたっては、そのあたりの含みをうまく伝えられないものかと苦心したが、結局は書の内容を要約した『印刷という革命』に落ち着いた。 ペティグリーは現在、イギリスのセント・アンドルーズ大学歴史学講座で教鞭をとる気鋭

    『印刷という革命 ルネサンスの本と日常生活』初期近代印刷文化の興亡と万有書誌の夢 - HONZ
  • 『英国一家、フランスを食べる』日本版へのあとがき - HONZ

    NHKでアニメ化もされた大ヒット作『英国一家、日べる』『英国一家、ますます日べる』。その著者、マイケル・ブースの原点ともいえる作品が、待望の翻訳。英国で「ミシュランシェフの包丁よりキレッキレの書き味!」などと大絶賛された作の、日版あとがきを公開します。 最近引っ越しをした。棚や屋根裏の片づけをするときによくある話だが、昔の写真や書類に気をとられて、荷造りなんかそっちのけで、久しぶりに目にするアルバムについつい見入ってしまった。 そのなかには、家族を連れてパリで暮らしていたころの書類もあった。山をあさっていると、ル・コルドン・ブルーへの出願書類が出てきた。この学校の入学希望者は、一般的な出願書類や履歴書のほか、入学審査委員会宛てに志望理由を書いて提出しなくてはならない。たぶん学校側はこれを読んで、経験豊かなシェフたちの貴重な時間を無駄にしない、真剣な生徒かどうかを判断するんだ

    『英国一家、フランスを食べる』日本版へのあとがき - HONZ
  • 『ピクサー流 創造するちから』 創造する組織を創造する - HONZ

    7つのゴールデングローブ賞、11のグラミー賞、そして27のアカデミー賞。1995年の『トイ・ストーリー』を皮切りに、ピクサーが生み出した14の長編映画は、数えきれないほどの賞を獲得し、世界中の観客の心を動かしてきた。芸術面での高評価にとどまらず、どの映画も多くの人々を映画館へと向かわせ、商業的にも大きな成功を収めている。水物と言われることもあるコンテンツビジネスにおいて、ピクサーの勝率は驚異的だ。 この偉業は1人の天才の手によるものではない。なにしろ、14の映画で14名もが監督にクレジットされているのだ。もちろん多くの稀有な才能に支えられてはいるが、“ピクサーという組織”が継続的に映像技術を革新し、胸打つストーリーを創造してきた。そして、その組織を動かす“ピクサーの仕組み”が、16年間も公開時興行成績1位を逃し続けていたディズニー・アニメーションを蘇らせた。ピクサーには、書の原題である『

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  • 『データの見えざる手』ヒトは一日のうち、どれくらいの時間を原稿執筆に割けるのか? - HONZ

    編集者という仕事柄、様々な文筆家の方とお仕事をさせていただく機会があるのですが、いつも気になっていることがあります。それは彼らが目一杯頑張ったとして、1日のうちどれくらいの時間を、原稿執筆に割くことが出来るのかということです。あるいはそれが、洗い物や料理といった別の作業なら、どれくらいの時間を割くことが出来るのでしょうか。 書の著者である矢野和男さんの研究チームは、2006年、日立製作所中央研究所でウエアラブルセンサを開発しました。24時間365日、腕の動きの加速度を毎秒20回記録するリストバンド型のセンサです。非常に高感度で、ちょっとした動きでさえ逃すことはないとのこと。 このウエアラブルセンサから得られたビッグデータは、意外にも、私たちの日常の関心事である「時間の使い方」に重要なヒントを与えてくれるものでした。 上のグラフは4人の方の1年間のデータを表したものです。横軸が1日24時間

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  • 『ツイッター創業物語』-編集者の自腹ワンコイン広告 - HONZ

    つい先日IPOも果たしてビジネス的にもそこそこ好調っぽいツイッター。 その始まりは、ほとんど失敗に終わって破綻しかけていた「オデオ」というITベンチャー企業でした。そこで、社員をクビにしまくったあと、残った人たちで考えたプロジェクトが「ツイッター」でした。 書は、いまや3億ユーザが使う世界的ツールになった「ツイッター」の創業秘話を追ったものです。 編集し終わっての率直な感想は―― 「フェイスブックだけじゃなくて、ツイッターの社内でもこんなにもドロドロな権力争いと裏切りが起きていたのか!?」 たんなる成功物語ではなく、「友情」と「嫉妬」に揺れ動き、「一人の女性を奪い合う」若者たちの姿はまるで青春ドラマを見ているかのようにハラハラ、ドキドキ、そして時にムカムカします。アメリカテレビドラマ化が決定したのも納得。ストーリーとしておもしろいです。いまや世界中で使われているサービスも、当に「普通

    『ツイッター創業物語』-編集者の自腹ワンコイン広告 - HONZ
  • 『脳には妙なクセがある』をきっかけにサイエンス本の世界にどっぷり浸かる - HONZ

    『記憶力を強くする』、『進化しすぎた脳』などのヒット作で知られる脳研究者の著者による、脳科学の最新知見がこれでもかと盛り込まれたエッセイ集である。349Pの書の巻末に参考文献として挙げられている論文の数は207にも上り、著者自ら“情報の洪水”と言っているのも頷ける。一見バラバラなトピックの寄せ集めだが、その中核にはきっちり、“脳と身体の因果関係への考察”というテーマが据えられており、楽しい寄り道をしながら大きな結論へと導いてくれる。 全26章で取り上げられる研究は、「XXXすれば脳の○○○が活性化して、△△△能力が向上する」という脳科学にこびりつく歪んだイメージの範囲を飛び越えて、行動経済学、進化生物学、栄養学などの領域にまで広がっている。とにかく、あっと驚く人間の特性を暴きだす研究結果が満載なのだ。書を読んで、やっぱりサイエンスは最高のエンターテインメントだと再確認した。サイエンス

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