大学には属さずに数学を研究している独立研究者・森田真生(まさお)さんに、教養の意味や学びの場について聞いた。 ◇ ――教養とは何でしょうか。 たとえば集積された知のパンフレットやデータベースのようなものではありません。知的探求に先立って仮定されているものの妥当性を問うことが、教養だと思います。 そういう意味での「教養」と深く関わる重要な問いが二つあります。一つは、自然とはそもそも何なのか。もう一つは、私とは何か、自己とは何か。この二つの問いはものすごく根本的で、これらに何かしら暫定的な答えを出さずには人は知的探求はできないと思います。 近代西欧で生まれた自然科学的パラダイムが常識になっています。それは生産性が高いし、多くの知見を生み出してきた実績がある。これが仮定にすぎないということを認識して相対化する知恵が教養であり、人文的学問に求められるものだと思うんです。 教養というのは決して確定し