内閣府の経済財政諮問会議が、植田和男氏を座長とする専門調査会に委嘱していた日本経済の長期展望についての報告書が発表された。中身が地味なので新聞でもベタ記事だが、これがサミットで日本政府の方針として発表されるらしいので、少し気になった点をコメントしておく。 まず記者発表で、これを「新前川リポート」などと名づけるセンスが最悪だ。前川リポートなんて20年以上も前の話で、今の若者はだれも知らないだろう。しかもバブル初期の1986年に「内需拡大」をとなえた前川リポートは、経済学的にナンセンスで、超低金利やバラマキ公共事業や土地投機などの「内需」を正当化してバブルを拡大した犯人だというのが、経済学者の一般的な評価だ。 植田氏をはじめとする経済学者の委員は、当然それぐらいのことは知っているはずだが、本文中に前川リポートを肯定的に評価する言葉はあっても、その批判的な総括はない。このように過去の政策の失