成年後見利用が自動的に選挙権喪失に繋がるのかどうなのか、いろんな動向を調べている。その中で、昨年の2010年5月20日にヨーロッパ人権裁判所が下した判決にぶつかった。 EU加盟諸国の間では、障害者の選挙権制限を撤廃ないし緩和する動きが顕著であるが、なお後見利用が自動的に選挙権喪失に連動する法制度を持つ国もある。この事件の被告側となったハンガリーもそうした国の一つであり、同国憲法には、後見に付されたものは選挙権を失う旨の規定が明記されている。2010年5月20日にヨーロッパ人権裁判所は、同国のこの後見規定がヨーロッパ人権条約に抵触するとの判決を下した。ECtHR, Alayos Kiss v. Hungary, No38832/06,Judgment of 20 May 2010. なおヨーロッパ人権裁判所というのはヨーロッパ人権条約を批准している加盟国の条約実施状態を監督するために1950
成年後見の選挙権喪失問題について、訴訟が提起されます。 下記は、そのニュースです。 ●後見人で選挙権失った女性、憲法違反と提訴へ/茨城 http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20110113-OYT1T01108.htm 成年後見人が付くと選挙権を失うのは、法の下の平等を保障した憲法に違反するとして、茨城県牛久市の名児耶 匠さん(48)が来月にも、国に選挙権を認めるよう求めて東京地裁に提訴することがわかった。 父親の清吉さん(79)によると、娘の匠さんはダウン症で中程度の知的障害があり、07年に清吉さんが後見人になった結果、選挙権を失ったが、それまでの選挙では欠かさず投票していたという。清吉さんは「後見人が付くか付かないかだけで、選挙権の有無が決まるのはおかしい」と話している。 下記はNHKのサイトです。名児耶さん親子のお話が聞けます。そのうちにアク
知的障害者や認知症高齢者の方々の選挙権行使についての話題は、国政選挙のたびに支援者が逮捕されるニュースとともに人々の認識するところとなるが、今回の参議院選挙の後は、報道がいつもより長引いているような気がする。 まえの記事 選挙権話題(続) 認知症の方の選挙権 上記アップ以降次の記事がある。 ○知的障害者への投票干渉「止めるの難しい…」 県内選管、対応に苦慮 http://www.shimotsuke.co.jp/news/tochigi/top/news/20100716/351925 ●不正広がる入所者投票 http://mytown.asahi.com/yamanashi/news.php?k_id=20000001007160003 以上は7月の記事であるが、8月に入って記事がある。 http://mainichi.jp/area/yamanashi/news/20100813ddl
昨日、知的障害者と選挙権の話を書いていたら、知人が次のような新聞記事を知らせてくれました。ご高齢の方の場合も同じ問題がありますよねえ。 認知症、一票は 朝日新聞神奈川版 7月9日記事 昨年9月、朝日新聞の声欄に、認知症の妻を総選挙の投票所に連れて行ったが、自分の意思が告げられず投票できなかったという投書が載った。今後増えていくといわれている認知症。その一票をめぐる環境はどうなっているのか。参院選を前に、現場の声を聞いた。 ○ 投票できぬケースも 川崎市麻生区の男性(74)は認知症の妻(74)を在宅介護している。要介護4の妻は字を認識できず、名前を見て候補者を選ぶことができない。区の選挙管理委員会に確認したら「その状態では投票できません」といわれた。「字は認識できないが、日常の会話はできる」という男性は「投票できないのは人間としての大事な権利を奪われたのと同じ。認知症の人こそ言いたいことがた
昨日、期日前投票にいきました。すごい混みようです。受付の前は長蛇の列。政党名を記入する比例区のしくみが変更になっていて少し戸惑いました。 さて投票に行く前に投票所入場整理券を見てみると家族4人の整理券が全部ありました。そこには、我が次男の名前もあります。もう二十歳を超えていますから当然でしょう。ほーー、来てるねえ、と家人に告げて私だけ投票所へ行きました。 昨日、次男のAAPEPの検査報告をご担当の方から詳細に聞きました。この検査、私の予想以上に的確です。家族の事前アンケートだけでなく、通っている事業所のアンケート、そして担当者の方が直接、本人面接していろいろチェックする直接観察の結果を踏まえて、実に丁寧な考察を加えているのです。そうとうな時間を割いてくださっていることは間違いありません。関係者の方に感謝・感謝です。 結果は,私の予想(希望)よりも次男の能力を低く評価してあり、説明を受けてな
成年後見法学会で聞いた家事審判法改正動向のその2は、申立の取り下げ制限である。現在、成年後見などの申立は自由に取り下げができる。これを制限しようという意見が法制審議会ででているらしい。 詳しい理由や内容は学会でポツリと言われただけなので分からない。以下は推測である。 現在の成年後見審判の手続は、後見人の選任については、裁判所の専権とされていて、申立にあたって申立人が推薦する候補者に拘束されない。紛議事例では、申立人が推薦した候補者が選ばれることはほとんどなく,第三者の専門家後見人が選任されるのが普通である。このときにも申立人から高裁へ不服申立てが起こされ、審判が確定しないので、その間に取下げ、というケースがある。これが取り下げの乱用だといわれるケース。しかしこれ以外にもある。 まったく紛議がなく、ごく普通に暮らしている親子の家庭において、親が「親亡き後を心配して」申立を決意し、さりとてほか
この間の5月30日に法政で開かれた成年後見法学会で聞いたことは、さすがに学会らしくて、いろいろ参考になった。その中で最近の動きとして議論されたものをいくつか書いておこう。 まず立法動向 私の認識では、成年後見制度のそのものの改正は民法の改正であり、どうも動かないようだし、選挙権などの欠格条項の見直しもぱっとしない。残念ながら動きが鈍いなあと思っていた。 ところが、家事審判法の改正に絡めてつぎの意見が出ているという。 1)鑑定省略を原則化してはどうか。 2)申立の取り下げを制限してはどうか。 いま、後見申立の最新統計では、鑑定を省略しているケースが約7割ある。法の仕組みは鑑定を行うのが原則だろうけど、申立人の意向と裁判所の事情が重なり合って鑑定省略がどんどん広がっている。みんなが喜ぶのなら、これを原則化しようではないか、そんな提案らしい。 ここで「みんな」というのは、本人を除いての話である。
後見人が被後見人の預貯金を横領するニュースが,知人から届いた。年間200件に上る解任事例の一こまであろう。 ●1200万円横領容疑 地検が逮捕/秋田 http://mainichi.jp/area/akita/news/20100206ddlk05040018000c.html これは後見人はいとこ。その母親に代って後見人に就任して、自宅の購入費用にお金を使ったらしい。 ●知的障害者の200万円着服容疑――奈良、実質的な成年後見人を逮捕/奈良 http://www.nikkei.co.jp/kansai/news/news007510.html こちらは記事からは確認できなが、どうも後見人は親族ではないようだ。 友人か勤め先の社長か? 横領事例は家族だけでなく弁護士・司法書士・社会福祉士などの専門職でもあるから、「だから家族や非専門家はだめだ」と即決することはできない。 また前にも書いたが
暮れも押し迫った28日に大阪高裁で、先の政権交代を実現した衆議院選挙の選挙区割りが「違憲」であると判断された。画期的な判決だそうだが、どのみち選挙は無効だという結論は出さないのであるから、あまり興味がなかった。ところが、今日の新聞を読んでいると、一票が一番軽かったのは千葉四区だったという。 え、それって私が住んでいるとこです。。。 そうかあ、私の一票は軽かったのか。。。初めて知ったこの事実、とはオーバーか。とはいえ選挙無効の行政訴訟を起こす意図 はないし、先の総選挙の結果はあれはあれで良かったので無効にされては困る(satoshoは民主党の支持者というわけではなく典型的な無党派層である: 念のため)。 それよりも、格差でそんなに騒ぐのであれば、毎年2万人から3万人の人が選挙権を剥奪されていることを、マスコミはどうして問題にしないのだろう。 これこ そ違憲だ。いうまでもなく成年後見の利用者の
ここ数日、福祉関係者の間で、標記の件にかかわる新聞報道についてのコメントが飛び交っている。震源地は9月29日の宮崎地裁延岡支部判決だ。わいせつ行為の被害を受けた女性の告訴を「知的障害があり、告訴能力がない」と判断したようでだ。 読売新聞の記事 被害女性に知的障害、裁判所「告訴能力なし」 宮崎地裁延岡支部が、わいせつ目的誘拐と強制わいせつ罪に問われた男について、公訴棄却の判決を言い渡していたことが分かった。 両罪とも被害者の告訴が必要な親告罪で、同支部は被害者女性に知的障害があり「告訴能力がない」と判断した。 宮崎地検延岡支部は29日、判決を不服とし福岡高裁宮崎支部に控訴した。 地検の発表によると、起訴されたのは宮崎県高千穂町向山、無職被告人(60)。起訴状では、被告人は2月11日、高千穂町内で、県内の20歳代女性を乗用車に乗せ、体を触るなどのわいせつな行為をした、としている。判決は16日に
長妻厚労大臣が、自立支援法を廃止すると明言してからなにかと騒がしいのが、同法を巡って提起されている各地の訴訟。 国側が、「主張」を3ヶ月ほど留保してほしいという申入れをしたという報道が流れ、これをもって、「和解」の申し入れだと解説してみたり、「前面的に争う姿勢を転換した」と分析する報道が、ここ数日流れている。 法科大学院を巡る報道や成年後見についての報道もそうであるが、マスメディアの報道は、よく分からない話が多い。 まず、いまの段階で、「和解の申し入れ」などということはあり得ないことである。急な政変による担当大臣の変更で、あちこ ちが動揺していることは事実であろうが、国の代理人たるもの、国の関係機関の意向を確かめつつ訴訟の進行を裁判所に伝えていく職責があり、担当大臣が替わったからといって和解を一存で申し入れるということはあり得ない。 たしかに、大臣が替わって、しかも、いままでと違うことを言
新聞報道で散見する法科大学院関連の記事にはピンぼけというか、オカド違いと思えるものが多いが、下記の朝日の記事は現状をよく伝えている。 「法科大学院 多すぎる? 司法試験合格者、前年下回る」(9月21日朝日) http://www.asahi.com/edu/news/TKY200909210120.html 新司法試験の合格者数が、初めて前年を下回ったことを受けて、関係者の意見を拾っている。以下、同記事から。 合格者「2043人」。昨年を下回る人数に、どの法科大学院幹部も「まさか、減るとは……」と驚きを隠さなかった。 うーん、驚いた人もいるとは思うけど、「法科大学院幹部」って表現の方に驚いた。誰のことなんだろう??? 「10年ごろに3千人」とする政府計画を目指し、今年の合格者の目安は2500~2900人だった。しかしほど遠い結果で、計画達成は困難になった。 計画を達成するなという政治的主張
先日蒲郡に行って来ました。権利擁護と成年後見について講演を依頼されたのです。 この種の講演依頼が毎月のようにあります。もとより私にできる数少ない社会活動の一つですので、日程と依頼内容が合えばできるだけ引き受けるようにしています。しかも、今回は、現地の友人の依頼ということもあり、とにもかくにも出かけることになりました。 話の内容は、単純明快です。 1)日本の成年後見制度は権利侵害の温床になる。 ノーマライゼーションの制度だと謳われていますが、実はその正確な内容は、判断能力の充分ではない人に、その旨のレッテルを貼って、法的な能力を制限 し、契約社会から排除するとことで、その人達を保護する、という考えに依拠して作られている制度です。このことは法律家なら誰でも知っていることですが、 なぜか福祉関係者にハッキリ説明する人はいません。 2)そのことを踏まえて使い方の工夫をする。 成年後見制度がそのよう
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