ブックマーク / blog.tatsuru.com (68)

  • トランプのアメリカ - 内田樹の研究室

    ジョー・バイデンとドナルド・トランプの討論が終わった。双方とも相手を罵り合うという見苦しい展開だったが、口から出まかせの嘘を自信たっぷりにつきまくるトランプを相手にきちんとファクトに基づいて反論することができなかったバイデンの衰えぶりに米国の有権者はショックを受けたようだ。民主党は大統領候補者を替えた方がよいという意見が出て来たが、今から候補者を選定して11月の大統領選に間に合うだろうか。 おそらく世界は二期目のトランプを迎えることになる。彼は「アメリカ・ファースト」を掲げて、前任者の政策のほとんどを覆し、国際秩序の維持には副次的な関心しか示さないだろう。 ただし、「アメリカ・ファースト」はトランプの独創ではない。この言葉を最初に使ったのはチャールズ・リンドバーグ大佐をリーダーに頂いた大戦間期の反戦派の人々である。彼らは欧州の戦争に米国は関与すべきではないと主張した。仮にナチスがヨーロッパ

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    BUNTEN 2024/07/14
    「日米安保条約についても廃棄をちらつかせる可能性」その時「俺は手を引く。お前らは勝手に共産国家にでも何でもなってしまえ」とか言われたら日本の支配層はどんな法外な代償でも受け入れるに違いない。
  • 民主政の終わり - 内田樹の研究室

    都知事選の翌日にニッポンドットコムという媒体からインタビューを受けた。以下はその記事に少しリタッチしたもの。 今回の都知事選では、選挙は民主主義の根幹を為す営みであるという認識がかなり深刻な崩れ方をしているという印象を受けた。選挙というのは有権者が自分たちの立場を代表する代議員を選ぶ貴重な機会であるという認識が日からは失われつつあるようだ。 投票する人たちは「自分たちに利益をもたらす政策を実現してくれる人」を選ぶのではなく、「自分と同じ部族の属する人」に投票しているように私には見えた。自分と「ケミストリー」が似ている人間であるなら、その幼児性や性格の歪みも「込み」で受け入れようとしている。だから、仮に投票の結果、自分の生活が苦しくなっても、世の中がより住みにくくなっても、それは「自分の属する部族」が政治権力を行使したことの帰結だから、別に文句はない。 自分自身にとってこの社会がより住みよ

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    BUNTEN 2024/07/12
    経済合理的に考えれば、投票に行ってもほぼ無駄だと言える。しかし日本の選挙制度をフランスやドイツなどと比べれば、日本の制度はその種の無力感を醸成するようにされているのがわかるだろう。
  • 大学存続の秘策 - 内田樹の研究室

    大学入試の季節になった。東京にある医療系大学の理事と地方の女子大学の評議員をしているので、この季節になるとそれぞれで入試状況の報告を聞き、生き残れる大学と崖っぷちの大学の格差が年々広がっていることを実感する。 今のところは定員を満たしている大学も少子化が続けば、遠からず「崖っぷち」に立たされる。せっかく全国津々浦々に良質の教育研究拠点があるのだ。これを市場原理に委ねて統廃合し、教育機関の東京一極集中を放置しておいてよいのだろうか。 近代日において、教育の充実は国家的急務であった。明治末までに東京、京都、仙台、福岡に四つの帝大ができ、最終的には台北、京城を含む九帝大ができた。旧制高校の設立はさらに早く、東京の一高が明治19年。明治41年までに仙台、京都、金沢、熊、岡山、鹿児島、名古屋に8つの「ナンバースクール」が設立され、以後も都市名を校名とする「ネームスクール」は松江、弘前、水戸から旅

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    BUNTEN 2024/05/08
    今の国策はエリート以外は奴隷になるか野垂れ死ね、だから。
  • コミュニズムのすすめ - 内田樹の研究室

    『だからあれほど言ったのに』所収の一文であるが、これをブログに上げたのは、ある学習塾の小学校六年生対象の模試に以下の文章が使用されたからである。これを小学校六年生に読ませたのか・・・と思うと驚く。世の中は変わりつつあるのかも知れない。 現代日の際立った特徴は富裕層に属する人たちほど「貧乏くさい」ということである。富裕層に属し、権力の近くにいる人たちは、それをもっぱら「公共財を切り取って私有財産に付け替える」権利、「公権力を私用に流用する権利」を付与されたことだと解釈している。公的な事業に投じるべき税金を「中抜き」して、公金を私物化することに官民あげてこれほど熱心になったことは私の知る限り過去にない。 税金を集め、その使い道を決める人たちが、公金を私財に付け替えることを「務」としているさまを形容するのに「貧乏くさい」という言葉以上に適切なものはあるまい。今の日では「社会的上昇を遂げる」

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    BUNTEN 2024/05/01
    「天文学的な富を私有して」いる奴がいても、「豪奢な消費活動を」してくれるなら世にカネが回る。金持ちが納税も消費しないで金をため込むから世の中がカネ詰りになってしまうわけで。
  • 『東京ミドル期シングルの衝撃』(宮本みち子、大江守之編著、東洋経済新報社) - 内田樹の研究室

    東洋経済新報社の渡辺さんから新刊の書評を頼まれたので少し長い紹介を書いた。タイトルはやや挑発的だけれど、人口動態と地域コミュニティ形成についての手堅い研究である。でも、ほんとうに衝撃的なのは、こういう研究にごく最近まで誰も見向きもしかなったという事実の方なのである。 人口減問題について語る人たちの多くはマンパワーの不足やマーケットのシュリンクや年金や医療制度の持続可能性について話すけれど、ほんとうにシリアスなのは「高齢期に入って社会的に孤立化したシングルのアンダークラス化」にある。書はそのタブーを正面から取り上げた例外的な仕事である。 「アンダークラス」というのは「ワーキングクラス」のさらに下に位置する、生活保護なしでは暮らしていけない最貧困層のことである。差別と排除の対象となり、社会の底辺に吹き溜まる閉鎖集団である。 日でもこれから「高齢者アンダークラス」が大量出現する可能性がある。

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    BUNTEN 2024/04/15
    「貧しく、孤独で、社会性のない」呼んだ? まあ、俺を見てれば想像はつくだろうよ。
  • 文字の書けない子どもたち - 内田樹の研究室

    高校の国語の先生から衝撃的な話を聴いた。生徒たちが文字を書けなくなっているというのである。教科書をただノートに筆写するだけの宿題を毎回課すが、やってくるのは半数以下。授業中に書いた板書をノートに写すようにという指示にも生徒たちは従わない。初めはただ「怠けているのか」と思っていたが、ある時期からどうもそうではないらしいことに気がついた。 『鼻』の作者名を問うテストに「ニコライ・ゴーゴリ」と答えを書いた生徒がいた。ゴーゴリもその名の短編を書いているが、教科書で読んだのは芥川龍之介である。どうしてわざわざゴーゴリと書いたのか生徒に訊ねたら「漢字を書くのが面倒だったから」と答えたそうである。 生徒たちの提出物の文字が判読不能のものが増えて来たという話は大学の教員たちからも聴く。学籍番号までは読めるが、名前が読むのが困難で、コメントの文字に至ってはまったく解読不能のものが少なくないという。何を書いた

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    BUNTEN 2024/02/27
    今でも手書きがろくにできない俺の小学校低学年時代は、筆圧のコントロールができずに鉛筆の芯を折りまくっていた。あれはたぶん先天的な不具合なんだろう。誰にどう指導されても治らなかった。
  • 改憲はできないと思う理由 - 内田樹の研究室

    政治学者の白井聡さんと対談した時に改憲の話になった。自民党は「やるやる」と言い続けるだけで、気でやる気はないという結論に落ち着いた。 国会での発議は可能だが、国民投票で過半数をとれるかどうか確信が持てないからである。 国民投票で否決されたら、自民党はほとんど党の存在理由を否定されたことになる。それではリスクが高すぎる。 それより「やるやる」と言うだけ言って、改憲派の支持層を固めておいて、それを選挙で利用するだけにしていた方が政権維持には有利である。 事実そうやって自民党は国政選挙で勝ち続けている。 だが、それは所詮は小選挙区制のマジックのおかげである。有権者の50%が棄権し、野党が候補者の一化ができない現状が続く限り、20%ほどのコアな支持層を確保しているだけで自民党は永遠に政権の座にあることができる。 だが、国民投票ではそうはゆかない。選択肢が「賛成か反対か」の二者択一だからだ。「野

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    BUNTEN 2024/02/09
    護憲派が勝つかどうかは微妙だと思う。国民投票に選挙運動の規定を準用して有料宣伝自由だがビラの制限はきつくしたうえで脱皮2を投入すれば…(以下自粛)。
  • 大阪万博は中止すべきだ - 内田樹の研究室

    大阪・関西万博のための政府支出の「全体像」を政府が示した。インフラ整備費に8390億円、会場建設費などの直接経費に1647億円(会場建設費783億円、日館関連360億円、途上国支援240億円、警備費199億円、万博の機運醸成38億円、誘致費用27億円など)。この他、間接的インフラ整備費約9兆円、各府省の事業費3.4兆円が示された。正気の沙汰とは思われない。 半年だけ開催される「お祭り」に10兆を超える公金が投じられる。万博の経済波及効果は当初は6兆円超と言われていたが、だんだん縮んで2兆円になり、それも言われなくなった。その一方で、桁外れの税金がこの「高い可能性で失敗が予測されているイベント」に注ぎ込まれている。繰り返し言うが、正気の沙汰とは思われない。 だいたい「機運醸成38億円」とは何か。その費目の存在そのものが開催まで500日を切ったがまったく機運が盛り上がらない現実をはしなくも露

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    BUNTEN 2023/12/27
    「これまで投じた資金が無駄になろうと」失敗が確実視されているのだから、今撤退するのが損失を最小にする方法。
  • 書評『新しい封建制がやってくる グローバル中流階級への警告』ジョエル・コトキン著、寺下滝郎訳、東洋経済新報社、 - 内田樹の研究室

    標記の書物の書評を東洋経済オンラインから依頼されたので、こんなことを書いた。 タイトルから二つのことがわかる。「新しい封建制」が切迫していること。それによってもっとも大きな負の影響を受けるのがミドルクラスだということである。少し前にこのコラムで紹介した『意識高い資主義が民主主義を滅ぼす』と問題意識の多くは共通している。超富裕層への富の集中、テックジャイアントの国家化、左右のポピュリズムの興隆、ミドルクラスの没落と民主主義の機能不全・・・どれも最近のアメリカの書物や論文に頻出する文字列である。でも、さすがに「封建制」まで踏み込んだ用例を私は知らない。さて、「新しい封建制」とは何か。 「今日、アメリカその他の国で出現しつつあるのは、新しいかたちの貴族制である。というのも、脱工業経済のもとで、富が少数者の手に集中する傾向がますます強まっているからだ。社会の階層化が進み、多くの人びとにとって社会

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    BUNTEN 2023/11/16
    たとえば今の日本だが、再分配なしに総需要が伸びることのない世界に堕している。で、世界経済の中でGDP総額でも順位を落としつつあるのが実態だ。既に「高所得国」ではない。最貧国入りを目指す金持ちども。
  • 受験についてのインタビュー - 内田樹の研究室

    ある教育雑誌から受験についてのインタビューを受けたので、採録。 ――今の教育や受験制度についてどう思われますか。 内田 受験は、同学齢集団内部で「誰でもができること」を「他の人よりうまくできる」競争です。でも、「競争」と「学び」は違うものです。そして、僕が経験に言えるのは、相対的な優劣をどれほど激しく競わせても、それによって集団全体の知的なパフォーマンスが向上することはないということです。競争を強いると個人的には力を伸ばす人もいますが、集団全体としては弱くなる。 僕がかかわっていたフランス文学研究の世界でも、就職が難しくなってきてから、受験同様、研究者の間で優劣を競うようになりました。限られた教員の専任ポストを巡っての競争ですから、当然厳密な査定が必要になります。そして、精度の高い査定をするためには、「研究者ができるだけ多い分野」で「他の人より優れた業績」を上げることが求められます。当然で

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    BUNTEN 2023/08/29
    「母語の外に出て異文化圏に入り込み、母語とは違うロジック、違う感情を追体験すること、それが外国語を学ぶことのもたらす最大の贈り物です。」昔聞いた記憶があるがそのへんの境地にはたどり着かなかった。
  • いま私たちが学ぶべきこと - 内田樹の研究室

    いきなり「ちゃぶ台返し」をするのも申し訳ないのだけれど、「いま私たちが学ぶべきこと」という問いの立て方が「ちょっと違う」ような気がしたので、それについて書くことにする。たぶん、すごくわかりにくい話になると思うので、覚悟して読んで頂きたい。 「学ぶ」というのは一言で言えば「別人になること」である。だから「私は学ぶ」という文型を私はどうもうまく呑み込むことができないのである。それは「学び」がほんとうに起動した場合には、「私」という主語はもう同一性を持ちこたえることができないはずだからである。 「呉下の阿蒙」という話がある。三国時代の呉の国に呂蒙という将軍がいた。勇猛な武人であったが、惜しいかな学問がない。主君の孫権が「将軍に学問があれば」と嘆じたのに発奮して、呂蒙はそれから学問に励んだ。しばらくしてのちに同僚の魯粛が久しぶりに呂蒙に会ってみると、その学問の深さ見識の広さはかつての彼とは別人であ

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    BUNTEN 2023/07/07
    内田先生が「修行」で得たような体験を俺はしたことがない。おそらくこれからもないだろう。俺に学がないのも無理はない。
  • 憲法の主体とは誰のことか - 内田樹の研究室

    憲法記念日は毎年どこかで講演する。いつもだいたい「憲法は空語だ」という話をする。憲法に書かれているのは「あるべき世界」についての願望である。現実とは乖離している。けれども、それは透視画法の消点のようなもので、そこをめざして現実を変成してゆくための目標である。 「人間は自由で権利において平等なものとして生まれる」という人権宣言の言葉も、「すべての人間は生まれながらにして平等であり、その創造主によって生命、自由、および幸福の追求を含む不可侵の権利を与えられている」という独立宣言の言葉もどちらも空語である。現在のフランスにも米国にもそんな現実はないからだ。 「現実と乖離しているから憲法を書き換えろ」という人たちがいる。 「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して」という憲法前文を取り上げて「この世界のどこに『平和を愛する諸国民』が存在するのか。誰もが自己利益を追求して、殺し合っているではないか」

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    BUNTEN 2023/05/10
    紙と鉛筆を渡されても書けない俺だが、パソコンでなら日本国憲法の経緯や心を別の言葉で書ける(つもり)ではあるな。
  • 『「意識高い系」資本主義が民主主義を滅ぼす』書評 - 内田樹の研究室

    『「意識高い系」資主義が民主主義を滅ぼす』(カール・ローズ、庭田よう子訳、東洋経済新報社、2023年)の書評を東洋経済オンラインに寄稿した。 「ウォーク資主義(woke capitalism)」とは聴き慣れない言葉である。書はこの「聴き慣れない言葉」の意味をていねいに教えてくれる。でも、説明されても「ああ、『あのこと』ね」とぽんと膝を打つという人はあまりいないと思う。woke capitalism は日にはまだ存在しないからである。 woke はwake (起こす、目覚めさせる)という他動詞の過去分詞である。「目覚めさせられた」という意味だが、60年代からアフリカアメリカ人の間では「人種的・社会的差別や不公平に対して高い意識を持つこと」という独特の含意を持つようになった。そういう意味で半世紀ほど使われたあとに、意味が逆転した。 意味を逆転させたのは「政治的に反動的な信念を抱く人々

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    BUNTEN 2023/05/10
    日本の労働階級は社会問題に関わることを許されないほど搾取されて疲弊しているから企業が社会問題でええかっこしてもほとんど業績に影響しないのだった。(涙)
  • 豊かな社会とは - 内田樹の研究室

    『診療研究』というコアな雑誌に標記のような原稿を寄稿した。いつもの話ではあるけれども、こういうことは何度繰り返し語っても足りないのである。 これまでずいぶん長く生きてきたけれども、日の国力がこれほど低下した時期は過去になかった。パンデミック、異常気象、ウクライナ戦争、人口減...など地球的規模での大きな問題が目白押しのところに、国内では、政治とメディアの劣化がとめどなく進行し、経済は衰退局面を転がり落ち、国民生活の最後の支えである教育と医療も気息奄々というありさまである。どこにも希望が見られない。 それでも気を取り直して、よくよく見れば、日の国力にはまだまだ余力がある。列島には豊かな山河がある。温帯モンスーンの温和な気候と肥沃な土壌と豊かな水資源に恵まれ、植物相・動物相は多様で、温泉や桜や紅葉の名所や神社仏閣のような観光資源はいたるところにあり、文化もエンターテインメントも伝統芸能も

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    BUNTEN 2023/05/01
    1人当たりGDPは既に韓国に抜かれているのではなかったか?
  • 岸田政権は何をしようとしているのか - 内田樹の研究室

    ある媒体からインタビューのオファーがあった。岸田政権の新年度予算成立を受けて、「なぜ政権はこれほど性急に防衛予算の拡大に進むのか」について訊かれたので、次のように答えた。 今回の防衛費増額の背景にあるのは岸田政権の支持基盤の弱さだと思う。 彼にとって喫緊の課題は二つだけである。一つは国内の自民党の鉄板の支持層の期待を裏切らないこと。一つは米国に徹底的に追随すること。日の将来についての自前のビジョンは彼にはない。 今回の防衛予算や防衛費をGDP比2%に積み上げるのも、米国が北大西洋条約機構(NATO)に求める水準に足並みをそろえるためであって、日の発意ではない。日が自国の安全保障戦略について熟慮して、必要経費を積算した結果、「この数字しかない」と言ってでてきた数字ではない。アメリカから言われた数字をそのまま腹話術の人形のように繰り返しているだけである。 国民がこの大きな増額にそれほど違

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    BUNTEN 2023/04/02
    「システムを「ハック(hack)」する」これも万能な方法ではないのは、安倍友を目指した籠池氏を見れば明らかである。結局、血統が全ての封建的日本。革命でひっくり返すしかなかろうよ。
  • 『アメリカは内戦に向かうのか』バーバラ・F.ウォルター - 内田樹の研究室

    原題はHow civil wars start 「どのようにして内戦は始まるのか」。アメリカのことだけを論じているわけではない。「内戦論」である。さまざまな国におけるこれまでの内戦を統計的に分析して、どういう条件が整うと内戦が始まるのかを解説する。 これまでの世界各地の内戦を分析する箇所での筆致は学術的で抑制的である。しかし、ひとたび話題がアメリカに及ぶと、文体がいささか感情的になってくる。学術的な書き物の場合、筆者が個人的な恐怖や不安をあらわにすることはふつうしない。個人的感情を抑えて論文は書かれなければならないと大学院では教える。もちろん筆者ウォルターも大学教師だから、そういうルールは熟知しているはずである。でも、内戦の切迫が彼女の自制心を乱している。「アメリカにおける第二の南北戦争勃発の危険性に危機感を募らせるようになった」(21頁)からである。 でも、私はそのことをこの書物の瑕疵だ

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    BUNTEN 2023/04/01
    日本で内戦が起きないのは民主主義が満点だからではなく(たとえば選挙時の戸別訪問禁止はほかに一国あるだけだからカウントされてはいまい。)秀吉以来の刀狩りもとい強力な銃器規制のおかげだろう。
  • 白井さんと話したこと - 内田樹の研究室

    政治学者の白井聡さんと2年半ぶりに対談した。 編集者からの最初の質問は日の安全保障政策の歴史的転換がなされたのに、どうして国民はこれほど無反応なのかだった。戦争に巻き込まれるリスクが一気に高まったというのに。 白井さんと私の答えはほとんど同じだった。それは日の安全保障戦略を決定しているのは日政府ではなく米政府だからである。 白井さんは『永続敗戦論』でも『国体論 菊と星条旗』でも、日は主権国家ではないということを指摘してきた。大日帝国において天皇が占めていた超憲法的地位に今は米国がいる。日は安全保障もエネルギーも糧も基幹的な政策については米国の許諾を得なければ決定することができない。米国(とりわけ在日米軍)の既得権益を減ずるリスクのある政策は決して物質化することがない。 日は米国の属国なのである。これは白井さんと私がずっと繰り返し指摘してきたことである。 日の指導者たちは徹

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    BUNTEN 2023/04/01
    沖縄からグアムかどっかに軍を引き上げるという話が以前あったが「少なくとも県外」どころか辺野古を落としどころにしたのは日本側だとも聞いた。政府は安全保障について国民に考えさせる気はない。
  • 上海の近況 - 内田樹の研究室

    上海に出向中の門人の李くんが一時帰国したので、現代中国の市民生活についていろいろとご教示を乞うた。実際に中国で生活している人の生の声を聴くことができる貴重な機会である。 最初の話題は、上海での電気自動車の普及。上海ではガソリン車を購入すると、ナンバーを取るまで2年間待たなければならない。電気自動車ならすぐナンバーが交付されるし、助成があるので、同じ車格なら、ガソリン車よりもはるかに安い値段で買える。当然、みんな電気自動車に乗り換える。 電気自動車は上海市内で乗り回す分にはいいが、いったん郊外に出ると充電できるスタンドがなかなか見つからない。高速道路を走っていて渋滞に遭遇したりすると、残りの電気量が気になる。電気が切れたおしまいだから、冷房を切り、エンジンを切り、電気を節約する。「あのどきどき感はなかなかです」ということだった。 自然に、人々は車に乗って遠出するということを自制するようになる

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    BUNTEN 2023/04/01
    全国民の監視が可能なだけの設備があるかどうかはともかく、いわゆる「盗聴法」によって、権力機関は合法的に情報収集できる仕組み自体は日本にもある。今のところいちいち介入してはこないが。
  • 3・11から学ぶこと - 内田樹の研究室

    3.11の時、東京電力福島第一原発では炉心溶融、建屋爆発が連続発生し、事故はチェルノブイリ原発事故と同レベルの過酷事故と認定された。以後再稼働することなく廃炉作業が続けられている。廃炉作業にどれほどの歳月と費用が必要なのかもまだわからない。経産省は2016年に22兆円と計算したが、2019年には民間シンクタンクが最高81兆円の試算を示した。政府のこの種の試算はだいたい後になって大幅に上方修正されるのが通例であるから、いずれ81兆円を超えても私は驚かない。 日列島は、全世界のマグニチュード6以上の地震の20%が周辺で発生する世界有数の地震多発地帯である。世界標準を超えるレベルの安全基準を採用するのが当然だと私は思うが、原発を建てた人たちはそうは思わなかったらしい。 東電の旧経営陣3人が業務上過失致死傷で起訴された裁判で、東京高裁は「巨大津波の襲来を予測することはできず、事故を回避するために

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    BUNTEN 2023/03/09
    過酷事故の責任は会社を潰してでも、あるいは経営陣の総とっかえでもって償わせるのが筋のところ、原発事故の補償責任には上限が設けてあって尻を国に拭かせる仕掛けなのでモラルハザードが起きる。
  • 70年後のテレビ - 内田樹の研究室

    「70年後のテレビ」 という不思議なお題を頂戴した。NHKテレビ放送を開始したのが70年前なので、70年後はどうなるかを予測して欲しいということである。おそらくアンケート回答者の過半は「70年後にテレビは存在しない」と予測するだろうと思う。問題はいつごろテレビは消えるかということである。5年後なのか、10年後なのか、それとももう少し生き延びるのか。どちらにしても「程度の差」である。もちろん、業界内部にいる人たちにとっては死活的に重要な「程度の差」だが、遠からずテレビが主要メディアの一角から脱落することは間違いない。 私自身はテレビを見るという習慣を失って久しい。過去数年を振り返っても、目当ての番組を見るためにテレビをつけるという動作をしたのは国政選挙の開票速報の時だけである。今はそれも放送開始と同時に「当確」が打たれて、大勢が決してしまうので、そこで見るのを止めてしまう。 今もリビングに

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    BUNTEN 2023/02/22
    「NetflixやPrime Videoやケーブルテレビ」こいつらはテレビではないという位置づけ?無線で送られる動画という定義にするとスマホで見るYoutubeの扱いが疑問に。