情報の失敗は情報の収集ではなく、主に情報の分析過程で発生する。最も重大なのは偏見だ。偏見は他の可能性を排除し、自分の主張に有利な情報ばかりを積み上げるため、結局は確証バイアスがかかってしまう。(…)技術情報力がいくら上がっても、AI技術を導入したとしても、偏見を排除しなければ何の役にも立たない。分析の失敗はいつも機械ではなく人がおかすのだ。 キム・ヨンチョル|元統一部長官・仁済大学教授 10月7日(現地時間)、パレスチナのイスラム武装組織ハマスによるものとみられるミサイルが、ガザ地区からイスラエルへと打ち込まれている=ガザ/EPA・聯合ニュース なぜイスラエルはハマスの奇襲攻撃を察知できなかったのだろうか。典型的な情報の失敗だ。情報機関は可能性を警告し、直前には動きをとらえていたし、周辺国からは関係する情報が伝えられていたが、ネタニヤフ政権はなす術もなくやられた。イスラエルの情報の失敗から
「北朝鮮の実像なんて知らなかったんですよ」 何の気負いもなく、当然のことのように穏やかな言葉が返ってきた。私は一瞬、どう問い返すべきか戸惑った。 1980年代後半の韓国学生運動を席巻した大派閥「主体思想派」の創設者で、リーダーだった金永煥(キム・ヨンファン)氏。かつて「鋼鉄」という別名で知られた男性は、そんな雰囲気などみじんも感じさせない穏やかな表情で私に人懐こい笑顔を見せていた。オフィスと住宅が混在するソウル市内の地下鉄駅近くにあるコーヒーチェーン店の2階で平日の昼下がりに向き合った元闘士は、間違っても周囲の注意をひきつけることなどない平凡な中年男性に見えた。 主体思想派の全盛期だった89年、ソウルへ語学留学した学生時代の私は主体思想派のニュースを見るたびに首をひねっていた。主体思想は、北朝鮮の金日成独裁体制を正当化するための理論である。当時の韓国はまだ先進国水準には遠かったけれど、それ
韓国の文在寅(ムンジェイン)政権は発足当初から、「所得主導成長」、「公正経済」、「革新成長」を経済政策の3つの柱として、最近ではこれらを合わせて「人間中心の経済」あるいは「(革新的)包容国家」と称している。3つのうち、公正経済とは従来、「経済民主化」と呼ばれてきた、財閥・大企業への経済力集中の抑制、濫用の防止、さらにそのオーナー家族による専横の防止を指す。また革新成長は技術革新の促進を通じて成長を実現しようとするもので、前政権が掲げた「創造経済」に近い概念といってよいだろう。これらふたつとは異なり、所得主導成長は文在寅政権が新たに打ち出した経済政策である。本稿は、政策主導者が政権発足前に所得主導成長をどのようなものとして構想していたのかを紹介するとともに、それが発足後に具体的な政策として導入された際にどのような展開をみせたのかを明らかにする。 文在寅大統領と所得主導成長を結びつけたのは、2
韓国でいま、「586世代」に対する批判が高まっている。 1990年代に30代で、1980年代の民主化闘争に関わった1960年代生まれのことを「386世代」と呼ぶ。その彼らが現在は50代になったので「586世代」と呼ばれている。 そのきっかけは、文在寅大統領が強行した法相任命だった。 ハンギョレ新聞で起きた局長辞任要求事件 法相に就任したのは文大統領の側近で、前大統領府民情首席秘書官のチョ・グク氏だ。チョ氏にまつわるスキャンダルなどは、日本国内でも過熱気味に、興味本位で報じられているのでここでは詳しくは触れない。そして、チョ氏が指揮する検察組織はいま、チョ氏が法相に就任した後も彼の親族を逮捕するなど捜査の手を緩めておらず、「法相・文政権」対「検察」の全面対決となっている。 こんな中、有力紙のハンギョレ新聞で、入社7年目以下の若手社員31人が編集局長の辞任を要求するという事件が起きた。チョ氏の
日韓が衝突する背景にはいつも「歴史認識」の問題が存在する。現在、最大のトピックになっている徴用工問題をはじめ、振り返ると、歴史教科書、竹島、慰安婦……と歴史問題が浮上するたびに、日韓は対立してきた。 なぜ日韓の歴史をめぐる議論は噛みあわないのか。その背景には何があるのか。そこで「文藝春秋」編集部では、朝鮮半島研究を専門とする神戸大学の木村幹教授と、韓国出身のジャーナリスト崔碩栄氏の対談を企画。「韓国における歴史とは何か?」というテーマで語り合ってもらった。 「事実にかなった歴史」ではなく「理にかなった歴史」 印象的だったのは、対談中、木村教授が次のような指摘をしていたことだ。 「韓国語の『正しい歴史(オルバルン・ヨクサ)』という言葉は、『事実にかなった歴史』という意味ではなく、『理にかなった歴史』『あるべき歴史』という意味で使われます」 神戸大学の木村幹教授 ©文藝春秋 その上で、木村教授
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