長期入院の男性患者が病院職員に置き去りにされた事件の背景には、退院しても行き先のない「医療難民」と呼ばれる患者を受け入れたくないという医療機関の本音が見え隠れする。 「難民」が生じかねない最大の要因は、厚生労働省が打ち出した療養病床の削減計画にある。療養病床は治療が目的の一般病床とは異なり、長期入院のお年寄りを受け入れる療養目的の病床で、全国に約35万床ある。療養病床の削減は医療制度改革の柱でもあり、厚労省は介護施設などへの転換で5年後までに約15万床に減らし、医療費を圧縮したい考えだ。 背景には、治療の必要がほとんどないのに家庭で介護が難しいなどの理由で入院を続ける「社会的入院」患者が今後も増え続け、「医療制度そのものが成り立たなくなる」(厚労省幹部)との危機感がある。
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