前田恒彦容疑者は大阪地検特捜部の“エース”として、検察上層部の信頼を一身に集めていた。以前在籍していた東京地検特捜部の信頼も厚く、民主党の小沢一郎元幹事長の資金管理団体の政治資金規正法違反事件では“指名”で東京への応援を要請されたほどだった。 「非常にまじめで捜査は緻(ち)密(みつ)」。元検察幹部はそう評する。捜査資料は綿密にそろえられ、報告もきちんとしていた。容疑者から次々と重要な供述を取る「割り屋」としての評価も高かった。後輩検事からは「リーダーシップがあって面倒見もよい」と慕われる一方で、強引なところもあったという。 ある検察関係者は「郵便不正事件の当初、取り調べの結果が検察の構図に合わなくても部下の報告を聞いていたらしい。しかし、事件が立て込んできたころから自分の意見を押しつけるようになったようだ」と漏らす。その理由について「事件を立件するプレッシャーが原因だったのではないか」と振
障害者団体向け割引郵便制度をめぐり偽の証明書が発行された郵便不正事件で、証拠品として押収したフロッピーディスク(FD)を改(かい)竄(ざん)していた疑いが強まり、最高検は21日夜、証拠隠滅容疑で、大阪地検特捜部検事で、この事件の主任を務めた前田恒彦容疑者(43)を逮捕した。合わせて前田容疑者の大阪府内の自宅や大阪地検の執務室などの捜索令状を取った。最高検は検察側の描いた事件の構図に沿うよう改竄した疑いが強いとみて全容解明を進める。 無罪判決の確定が確実な厚生労働省の村木厚子元局長(54)を起訴した一連の捜査の問題は、検事の刑事責任追及に向かう異例の事態となった。 関係者によると、改竄されたのは特捜部が昨年5月26日、村木元局長の元部下だった上村勉被告(41)=公判中=の自宅から押収したFDの最終更新日時。当初の「2004年6月1日」から、検察側主張に沿う「6月8日」に書き換えられていたとい
障害者団体向け割引郵便制度をめぐり偽の証明書が発行された郵便不正事件で、大阪地検特捜部の前田恒彦主任検事(43)が証拠品として押収したフロッピーディスク(FD)の最終更新日時を改(かい)竄(ざん)していた疑いが強まったとして、最高検は21日夜、証拠隠滅の疑いで、前田検事を逮捕する方針を固めた。検察側の描いた事件の構図に沿うよう書き換えた可能性が高いという。 最高検はあわせて同日、大阪府内の前田検事の自宅や、大阪地検の執務室などの家宅捜索令状を取った。 関係者によると、改竄されたのは特捜部が昨年5月26日、厚生労働省の村木厚子元局長(54)=虚偽有印公文書作成・同行使罪で1審無罪=の元部下だった上村勉被告(41)=同罪で公判中=の自宅から押収したFDの最終更新日時。当初の「2004年6月1日」から、検察側主張に沿う「6月8日」に書き換えられていたという。FDには偽の証明書や文書作成のデータが
元最高検検事の土本武司筑波大名誉教授(刑事法)の話 データ改竄がもし事実であれば、捜査側が描いたストーリーに合うように証拠を位置付けた疑いがますます強くなる。単なる捜査上のミスにとどまらない犯罪の可能性も出てくる。(物証の捏造は)かつて警察ではあったが、検察はしないという信頼感があった。とうとう出てしまったかという感じだ。改竄が組織的に行われたとなると、すべての検察の権威にかかわってくるし、威信もどこかに吹っ飛んでしまう。
郵便不正事件に絡む証拠改ざん事件で、最高検は23日、大阪地検で前田恒彦検事の上司だった大坪弘道前特捜部長(現京都地検次席検事)と佐賀元明前特捜部副部長(現神戸地検特別刑事部長)を東京・霞が関の検察庁庁舎に呼び事情を聴いた。改ざんへの関与の有無や把握の時期を確認するとともに、検事正らにどのような報告をしたか詳しい説明を求めたとみられる。 関係者によると、大坪前部長は前田検事がデータを書き換えたとの指摘が地検内で出た今年2月ごろ、佐賀前副部長を通じて前田検事に事実関係を確認。その後、小林敬検事正と当時の玉井英章次席検事(現大阪高検次席検事)に「問題はない」という趣旨の報告をしたとされる。 最高検は組織的な隠ぺいがなかったか確認するため、小林検事正と玉井次席検事らからも一両日中に事情を聴く方針。郵便不正事件の捜査を担当した当時の特捜部検事からも事情を聴き、捜査が適正だったかについても検証している
最高検の事情聴取のため、JR品川駅で新幹線を降りる大坪弘道・前大阪地検特捜部長=2010年9月23日午後(共同) 組織的隠ぺいはなかったのか。大阪地検特捜部検事、前田恒彦容疑者(43)が証拠隠滅容疑で逮捕された事件で、最高検は23日、上司だった大坪弘道前特捜部長(現京都地検次席検事)らの聴取に乗り出した。前田検事の逮捕に「やりすぎ」と、最高検の捜査に不満を漏らしていた元特捜トップは、自らの「監督責任」を認め、報道陣を振り切るように聴取に臨んだ。 ◇「監督責任だろう」 大坪前部長は午前10時前、大勢の報道陣が待ち構える新大阪駅へ姿を見せた。やや疲れた表情で、報道陣に「私が改ざんにかかわったわけではない。(問われるのは)監督責任だろう」と語った。その後、険しい表情のまま東京行きの新幹線に乗り込んだ。 正午過ぎに品川駅で降車すると、再び報道陣にもみくちゃに。周囲を警察官にガードされながらタクシー
「まじめ過ぎる検事だった」−。厚生労働省の文書偽造事件に関与したとされた民主党の石井一参院議員は22日、最高検が証拠隠滅容疑で逮捕した大阪地検特捜部主任検事から事情聴取された際の状況を党会合で説明した。 石井氏によると、昨年秋に主任検事の要請で聴取に応じ、文書偽造事件に関与していないことを説明。石井氏が「政治的な意図があるのか」と尋ねたところ主任検事は否定し、証拠の存在に関してはあいまいな答え方をしたという。 主任検事が石井氏の質問に誠実に応対したとした上で「とにかく一つの方向を決めたら、目的のためには手段を選ばないという気がした」と指摘。「新聞に報道されると、極悪人という印象を受けるかもしれないが、実におとなしい、いい男だった」と述べた。
割引郵便制度を悪用した偽の証明書発行事件をめぐって、大阪地検特捜部の主任検事、前田恒彦容疑者が証拠品として押収したフロッピーディスク(FD)を改竄(かいざん)していたとして証拠隠滅容疑で最高検に逮捕された。 事件をでっち上げようとしたのも同然の行為だ。検察にとって前代未聞の不祥事で、異例の逮捕も当然である。最高検にはこの際、徹底した真相の究明と、厳正な対処を求めたい。 この事件では、1審無罪となった厚生労働省の村木厚子元局長の公判で、検察側が描いた事件の構図に沿って被告らの供述を誘導した疑いが指摘された。裏付け捜査を怠っていたことも明らかになり、控訴は断念された。 FDの改竄もやはり、事件の構図に不都合な事実を隠すために行われたとみられる。 村木元局長の部下の自宅から押収したFDには偽造証明書の文書データが保存されていたが、その最終更新日時は村木元局長が発行を部下に指示したと検察側が主張す
民主党の「取り調べの全面可視化を実現する議員連盟」(会長・川内博史衆院議員)は22日、厚生労働省の文書偽造事件をめぐる大阪地検特捜部の主任検事の証拠隠滅事件に関し、公平性を担保するため最高検による捜査チームに第三者の委員も加えるよう求める声明を発表した。大阪地検の活動の全容解明と、責任の所在の明確化も要求した。 声明では文書偽造事件について「共犯者の虚偽の供述調書がなければ立件できず、取り調べの可視化が実現できていれば最初から防止できた」と指摘。証拠隠滅だけでなく供述調書作成に関与した検事の行動を含めた事実関係を公開すべきだとした。 また川内氏らは柳田稔法相と法務省で会い、声明の内容を申し入れた。
片山善博総務相は22日午前、大阪地検特捜部主任検事が証拠隠滅容疑で逮捕されたことによる大林宏検事総長の進退問題への波及について、「主任検事の単独犯行なのか、組織全体に及ぶものなのか、捜査の進展による」と述べ、推移を見守った上で判断すべきだとの考えを示した。東京都内で記者団に語った。 片山氏は「法と正義を守る検察で捏造(ねつぞう)などもってのほかだ。政府全体で、問題をきちんと検証しないといけない」と指摘。その上で「身びいきや手を緩めることは絶対あってはいけないし、恥の上塗りになる。人一倍厳正にやらなければいけない」と厳格な捜査を求めた。【笈田直樹】
証拠隠滅容疑で逮捕された大阪地検特捜部検事の前田恒彦容疑者(43)が地検の内部調査に対し、「今年1〜2月に当時の特捜部幹部や同僚に押収したFDのデータを書き換えてしまったかもしれないと伝えた」と説明していることがわかった。検察関係者が朝日新聞の取材に対して明らかにした。 前田検事の地検側への説明によると、東京地検特捜部に応援に行っていた1月下旬、同僚検事に電話で「(上村被告側へのFD返却直前の昨年7月に)データを変えてしまった可能性がある」と打ち明けたという。この時期は、郵便割引制度をめぐる偽の証明書発行事件で起訴された厚生労働省の元局長村木厚子氏(54)の初公判の直後だった。 当時の特捜部幹部に対しても、電話で同じ内容を報告したという。 前田検事はその後、この幹部から「地検幹部らに報告した」と聞いたが、どのように報告されたかについては知らないと地検の調査に答えたという。 一方、検
郵便不正事件に絡み押収したフロッピーディスク(FD)の最終更新日時を捜査に有利な内容に改竄したとして、大阪地検特捜部の主任検事、前田恒彦容疑者(43)が逮捕された証拠隠滅事件で、最高検は22日、郵便不正事件の捜査に携わった上司や同僚の検事ら約20人に対し、23日から週末にかけ一斉聴取に踏み切る方針を固めた。主に改竄に加担していなかったかなどを聴くとみられるが、関係者によると、同僚の検事らはいずれも関与していなかった可能性が極めて高いという。 一方、前田容疑者は大阪地検の内部調査で「意図的に変えていない」と説明していたが、最高検の調べにも「故意でやったわけではない」と容疑を否認していることが、検察関係者への取材で新たに判明した。 関係者によると、聴取対象となるのは平成21年の郵便不正事件で前田容疑者の決裁を担当した上司や、ともに捜査に当たった検事・副検事ら約20人。事前に黙秘権を告知した上で
「主任検事がデータに作為を加えたらしい」 そんな噂が大阪地検をかけめぐったのは、無罪を主張していた厚生労働省元局長、村木厚子さん(54)の公判が始まった直後の1月下旬のことだった。 関係者によると、2月に入って上司から事情を聴かれた前田恒彦容疑者(43)は、素直に謝ったという。そして厚労省元係長、上村勉被告(41)が偽造証明書を作成して保存したフロッピーディスク(FD)について、「上村被告が最終更新日時をいじった可能性がありました。そういう操作ができるかどうかを確かめるために、捜査の一環としてやりました」と弁明した。 だが、そのときに「2004年6月1日午前1時20分6秒」から「6月8日午後9時10分56秒」に書き換えられた最終更新日時は、特捜部の描いた事件の構図に符合する、あまりにも絶妙の日時だった。 特捜部は、村木さんが上村被告に証明書発行を指示したのは、関係者の供述に基づき「6月上旬
リリース、障害情報などのサービスのお知らせ
最新の人気エントリーの配信
処理を実行中です
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く