『法廷で裁かれる 南洋戦・フィリピン戦 訴状編』瑞慶山茂編著 高文研・5400円 この本を手にした時、表紙の絵に衝撃を受けた。南洋サイパン島のバンザイ岬とその下に描かれた海は血に染まっている。この海の血の一滴が私たち家族のものであり、飛び込んで亡くなった親戚のお兄ちゃんのものであり、共に飛び込んだ者たちのものだからである。 「沖縄は国内で唯一地上戦が行われた場所」という文言に接する度に、それは違うと思い続けてきた。私たち家族の暮らしていたサイパンでも、沖縄戦と同じ地上戦があり、集団自決(集団死)があり、餓死(がし)があり、日本兵による壕(ごう)からの追い出しがあった。そのことを、本書の中では「アジア太平洋戦争で初めて一般住民居住地で一般住民を巻き込んだ壮絶な日米の地上戦が闘われた」と明記している。 この書は、南洋戦・フィリピン戦の強いられた民間人玉砕の国家責任を問う裁判の〈訴状編〉である。
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