海老原さんの日本型雇用システムの利点(企業のインサイダーは一定年齢以上で、よほど能力を低評価されていないかぎりリストラされない、管理職は転職できない=企業内特殊熟練ゆえ)に注目した、私見では海老原さんの著作の最高傑作だと思います。 あいかわらず各種の統計データを駆使して、通念や政策の場で言われていることを冷静に論駁しています。例えばワーキングプア1022万人の中味が実は大半が「主婦」であること。最低賃金改正は経営基盤の弱い企業を直撃する、また「同一価値労働同一賃金」の空理空論ぶりも指摘しています。 もちろん本書では日本型雇用システムの長所をあえてクローズアップする戦略を採用していて、むしろ日本型雇用システムの問題として指摘されてきた諸点は、その批判者たちの事実誤認による、という海老原さんの戦略はわかりやすいものです。僕も『日本型サラリーマンは復活する』で同様の戦略を採用したからです。もちろ