資料をめくる。「1/f ゆらぎ」という言葉が目に入る。単調でなければランダムでもない、自然界に多く存在する特別な振動。小川のせせらぎやそよ風、星のまばたき、蛍の光なども「1/f ゆらぎ」なのだそうだ。 定規で引いた線より、手描きの線のほうがしっくりくるように、不規則でも規則的でもないあいまいな振動が、心地よさを醸す。人間の鼓動も正確なリズムを刻んでいるのように思えるが、呼吸も脈も一定のリズムではない。早くなったり遅くなったり。ここにも、ゆらぎがあるらしい。 お父さんやお母さんの胸に抱かれた赤ちゃんは、ゆらぎのある振動を身体で感じることで、安心を得る。この春訪れた沖縄では、子どもが親に抱かれ、膝の上で安心する様子を「腰当(クサティ)」といい、転じて、祖先の霊や神に囲まれた安寧の場についてもこの言葉を使うことを知った。 谷崎潤一郎の「陰翳礼賛」に、 (日本人は)美は物体にあるのではなく、 物体