真に読むに値する本とはやっぱり本は短いのに限る。そもそもぼくが断章やアフォリズムが好きになったのは、17歳の頃、パスカルの『パンセ』を読んでからだったと思う。それまでドストエフスキーやフローベルなどの小説を努力して読んできたけれど、当時は本を最後まで読みとおす忍耐心があまりなかったので、すっかりパスカルのやり方が気に入ってしまったのだった。 パスカルはわずか39歳で病没するも、それまでに多彩な才能を開花させたことで知られている。キリスト教神学者として著名であったのみならず、「人間は考える葦である」の思想家であり、「ヘクトパスカル」に名を残す科学者であり、計算機の生みの親であり、ルーレットの考案者であり、確率の研究で知られる当代一の数学者でもあった。 そんなパスカルが書いた『パンセ』には心をうつ言葉がいっぱいあって、ノートが埋め尽くされるほどだった。ぼくがこれまで書いた本のなかでも、たとえば

