選手として全日本選手権10連覇、五輪に2度出場。指導者としても50年近いキャリアを持ち、現在は浅田真央らを教える佐藤信夫コーチが、フィギュアの魅力や難しさ、指導者としての思いなどを語ってくれた。 佐藤信夫のフィギュアよもやま話 フィギュアスケートは、見た目の華やかさとは裏腹に、過酷な競技だ。私が現役だった50年ほど前、フリーの演技時間は5分間(現在は男子が4分半、女子が4分)。音楽が鳴ったらノンストップだ。4分が過ぎてスピンを回ると、酸欠状態で視界が薄暗くなったのをよく覚えている。 フィギュアの動きを自動車に例えるならば、トップスピードで走って赤信号で急ブレーキをかけるようなものだ。選手たちはそんな動きを絶えず繰り返しながら、難しいジャンプやステップをこなしている。 現在の採点方式になったここ10年ほどは、難しい技をやればやるほど、得点は足し算で積み上がっていく。私の現役時代には、演技の中