彼女が記念写真を見せてくれたので、この隣の人が結婚相手だよね、と訊いた。たぶん、と彼女はこたえた。たぶん? 彼女はいくぶんぼんやりした顔で話した。彼と知りあって数ヶ月しか経っていないこと、すぐに恋人になり、相手の家の事情で急いで結婚したこと。 彼女が途方にくれた顔をしているので、なにか困ったことでもあったの、私は訊いた。たとえば彼の家は代々かえるの神さまを祀っていて、毎日十匹のいきのいい蠅をつかまえて捧げなければならないとか。 私の冗談のできがよくなかったせいか、彼女はごくうっすらとしか笑わず、悪いことや変なことはない、こたえた。夫の親族はいい人たちだし、自宅には夫と二人で住んでいるので、生活上の摩擦みたいなものもない。 帰ってくるの、と彼女は話しはじめた。帰ってくるの、なんだかすてきな人が。私が残業した日には先に帰っていて、おかえりって言う。私が前の家から持ってきたソファの上で私が買った
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