わが国でインドとの関係の重要性が語られるとき、かならず登場するのが「基本的価値観の共有」という前提だろう。中国や北朝鮮、ロシアはどうみても独裁・権威主義体制だ。現在の韓国とは自由民主主義体制で親和性があるとしても、歴史認識ではわが国と大きな隔たりがある。こうした国々の向こう側にある大国インドは、われわれにとって理想的なパートナーのように映る。 なぜか? まずなんといっても、インドは日本同様、第2次大戦後のアジアにおいて、一党独裁や軍事政権を経験したことのない稀有な国だからである。韓国や東南アジアの多くの新興独立国は、経済成長を錦の御旗にした「開発独裁」の道を採用した。けれどもインドは違った。その貧しい独立当初から、民主的な選挙を連邦、州、地方、村落のあらゆるレベルでつづけてきたのだ。たとえ一時であっても、ひとびとの生活を犠牲にするような政治が行われれば、そんなリーダーは選挙で淘汰されるはず