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ブックマーク / www.aozora.gr.jp (9)

  • 夢野久作 猟奇歌

    殺すくらゐ 何でもない と思ひつゝ人ごみの中を 濶歩して行く ある名をば 叮嚀(ていねい)に書き ていねいに 抹殺をして 焼きすてる心 ある女の写真の眼玉にペン先の 赤いインキを 注射して見る この夫人をくびり殺して 捕はれてみたし と思ふ応接間かな わが胸に邪悪の森あり 時折りに 啄木鳥の来てたゝきやまずも *     *     * 此の夕べ 可愛き小鳥やは/\と 締め殺し度く腕のうづくも よく切れる剃刀を見て 鏡をみて 狂人のごとほゝゑみてみる 高く/\煙突にのぼり行く人を 落ちればいゝがと 街路から祈る 殺すぞ! と云へばどうぞとほゝゑみぬ 其時フツと殺す気になりぬ 人の来て 世間話をする事が 何か腹立たしく殺し度くなりぬ 今のわが恐ろしき心知るごとく ストーブの焔 くづれ落つるも ピストルのバネの手ざはり やるせなや 街のあかりに霧のふるとき ぬす人の心を抱きて 大なる煉瓦の家に

    NAPORIN
    NAPORIN 2024/06/06
  • 太宰治 駈込み訴え

    申し上げます。申し上げます。旦那さま。あの人は、酷(ひど)い。酷い。はい。厭(いや)な奴です。悪い人です。ああ。我慢ならない。生かして置けねえ。 はい、はい。落ちついて申し上げます。あの人を、生かして置いてはなりません。世の中の仇(かたき)です。はい、何もかも、すっかり、全部、申し上げます。私は、あの人の居所(いどころ)を知っています。すぐに御案内申します。ずたずたに切りさいなんで、殺して下さい。あの人は、私の師です。主です。けれども私と同じ年です。三十四であります。私は、あの人よりたった二月(ふたつき)おそく生れただけなのです。たいした違いが無い筈だ。人と人との間に、そんなにひどい差別は無い筈だ。それなのに私はきょう迄(まで)あの人に、どれほど意地悪くこき使われて来たことか。どんなに嘲弄(ちょうろう)されて来たことか。ああ、もう、いやだ。堪えられるところ迄は、堪えて来たのだ。怒る時に怒ら

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    NAPORIN 2023/10/17
  • 夢野久作 ビール会社征伐

    毎度、酒のお話で申訳ないが、今思い出しても腹の皮がピクピクして来る左党の傑作として記録して置く必要があると思う。 九州福岡の民政系新聞、九州日報社が政友会万能時代で経営難に陥っていた或る夏の最中の話……玄洋社張りの酒豪や仙骨がズラリと揃っている同社の編集部員一同、月給がキチンキチンと貰えないので酒が飲めない。皆、仕事をする元気もなく机の周囲(まわり)に青褪めた豪傑面を陳列して、アフリアフリと死にかかった川魚みたいな欠伸をリレーしいしい涙ぐんでいる光景は、さながらに飢饉年の村会をそのままである。どうかして存分に美味(うま)い酒を飲む知恵はないかと言うので、出る話はその事バッカリ。そのうちに窮すれば通ずるとでも言うものか、一等呑助の警察廻り君が名案を出した。 今でも福岡に支社を持っている××麦酒(ビール)会社は当時、九州でも一流の庭球の大選手を網羅していた。九州の実業庭球界でも××麦酒の向う処

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    NAPORIN 2017/11/05
  • 小さき者へ - 有島武郎

    お前たちが大きくなって、一人前の人間に育ち上った時、――その時までお前たちのパパは生きているかいないか、それは分らない事だが――父の書き残したものを繰拡(くりひろ)げて見る機会があるだろうと思う。その時この小さな書き物もお前たちの眼の前に現われ出るだろう。時はどんどん移って行く。お前たちの父なる私がその時お前たちにどう映(うつ)るか、それは想像も出来ない事だ。恐らく私が今ここで、過ぎ去ろうとする時代を嗤(わら)い憐(あわ)れんでいるように、お前たちも私の古臭い心持を嗤い憐れむのかも知れない。私はお前たちの為(た)めにそうあらんことを祈っている。お前たちは遠慮なく私を踏台にして、高い遠い所に私を乗り越えて進まなければ間違っているのだ。然しながらお前たちをどんなに深く愛したものがこの世にいるか、或はいたかという事実は、永久にお前たちに必要なものだと私は思うのだ。お前たちがこの書き物を読んで、私

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    NAPORIN 2015/08/15
  • 芥川龍之介 金将軍

    ある夏の日、笠をかぶった僧が二人(ふたり)、朝鮮(ちょうせん)平安南道(へいあんなんどう)竜岡郡(りゅうこうぐん)桐隅里(とうぐうり)の田舎道(いなかみち)を歩いていた。この二人はただの雲水(うんすい)ではない。実ははるばる日から朝鮮の国を探(さぐ)りに来た加藤肥後守清正(かとうひごのかみきよまさ)と小西摂津守行長(こにしせっつのかみゆきなが)とである。 二人はあたりを眺めながら、青田(あおた)の間(あいだ)を歩いて行った。するとたちまち道ばたに農夫の子らしい童児が一人、円(まる)い石を枕にしたまま、すやすや寝ているのを発見した。加藤清正は笠の下から、じっとその童児へ目を落した。 「この小倅(こせがれ)は異相(いそう)をしている。」 鬼上官(おにじょうかん)は二言(にごん)と云わずに枕の石を蹴(け)はずした。が、不思議にもその童児は頭を土へ落すどころか、石のあった空間を枕にしたなり、不相

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    NAPORIN 2014/06/03
  • aozorablog » 電子の本が燃やされるとき

    カテゴリー:,電子書籍,青空文庫 | 投稿者:OKUBO YuAuthor: OKUBO Yu About: 青空文庫には高校生のとき参加して、今や翻訳家・翻訳研究者。しばらく青空文庫をお休みするつもりだったのにそうも言ってられなくなってしまっててんてこまいの日々。ここでは電子のことをしゃべったり、物語を書き散らしたり、はたまた青空文庫批判をしてみたり、自由にやっていくつもり。See Authors Posts (55) | 投稿日:2014年5月22日 | が青空の棚から消えてなくなる、という事態は、単に図書が閉架になることでも、禁帯出になることでもない。 著作権法上、データベース上にアップロードしてアクセスだけ禁じる、という形で残すこともできない。また青空であることは館内がないということだから、まさにを棚から消すことしかできないわけだ。 それは青空の棚の実務に携わる者からすれば

    NAPORIN
    NAPORIN 2014/05/22
    著作の権利は創作の苦労に報いるが二次著作権、編集権を青空が主張することはできないのだろうか。あと、相続税はひきあげるのに死後も苦労に報いるべきとホンキで政府は思っているのか。
  • 青空文庫 - 梶井基次郎 「桜の樹の下には」

    桜の樹の下には屍体(したい)が埋まっている! これは信じていいことなんだよ。何故(なぜ)って、桜の花があんなにも見事に咲くなんて信じられないことじゃないか。俺はあの美しさが信じられないので、この二三日不安だった。しかしいま、やっとわかるときが来た。桜の樹の下には屍体が埋まっている。これは信じていいことだ。 どうして俺が毎晩家へ帰って来る道で、俺の部屋の数ある道具のうちの、選(よ)りに選ってちっぽけな薄っぺらいもの、安全剃刀の刃なんぞが、千里眼のように思い浮かんで来るのか――おまえはそれがわからないと言ったが――そして俺にもやはりそれがわからないのだが――それもこれもやっぱり同じようなことにちがいない。 いったいどんな樹の花でも、いわゆる真っ盛りという状態に達すると、あたりの空気のなかへ一種神秘な雰囲気を撒き散らすものだ。それは、よく廻った独楽(こま)が完全な静止に澄むように、また、音楽の上

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    NAPORIN 2014/04/04
  • 八木重吉 秋の瞳

    私は、友が無くては、耐へられぬのです。しかし、私には、ありません。この貧しい詩を、これを、読んでくださる方の胸へ捧げます。そして、私を、あなたの友にしてください。 [#改ページ]

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    NAPORIN 2012/04/30
  • 作家別作品リスト:桑原 隲蔵

    公開中の作品 紙の歴史 (旧字旧仮名、作品ID:42345) 元時代の蒙古人 (旧字旧仮名、作品ID:4269) 支那史上の偉人(孔子と孔明) (旧字旧仮名、作品ID:3537) 支那人間に於ける人肉の風習 (旧字旧仮名、作品ID:42810) 支那人の人肉風習 (旧字旧仮名、作品ID:4270) 支那人の妥協性と猜疑心 (旧字旧仮名、作品ID:2588) 支那人の文弱と保守 (旧字旧仮名、作品ID:2587) 支那人弁髪の歴史 (旧字旧仮名、作品ID:4271) 支那の宦官 (旧字旧仮名、作品ID:4272) 支那の孝道殊に法律上より観たる支那の孝道 (旧字旧仮名、作品ID:44907) 支那の古代法律 (旧字旧仮名、作品ID:44908) 支那猥談 (旧字旧仮名、作品ID:7941) 司馬遷の生年に関する一新説 (旧字旧仮名、作品ID:42244) 秦始皇帝 (旧字旧仮名、作品ID

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