前回の記事で 2021-22 にかけてアメリカ化学会の発行する学術誌で起きた「キャンセルカルチャー」をめぐる論争について、大雑把なものながら紹介をした。反応を見ると、「科学の政治化」を憂い、「キャンセルカルチャー」批判を行う側のアンナ・クリロフに共感した人も、「政治と無関係な科学」の不可能性を説き、「キャンセルカルチャー」という概念そのものに疑問を投げかけるフィリップ・ボールやハーバートらに共感を抱く人も両方いたようだ。 ぼく個人としては、ボールやハーバートらの主張にシンパシーを抱きつつも、各々の主張の紹介は公平なものであることを心掛けていたつもりなので、評価が分かれたことは多としたい。 ボール(たち)の主張にいまいち乗り切れないものを感じる場合、「科学はそもそも政治的である(そうでないものはありえない)」という科学観がどうしても魅力を欠いたものであるということがあると思う。クリロフとボー