「100%の恋愛小説」 村上春樹は1987年に発表した長編「ノルウェイの森」に、自らの発案で「100%の恋愛小説」というキャッチコピーをつけました。一体なぜ、「100%」なのでしょうか。僕の考えでは、その理由は臆面もなく「女の子が死ぬ恋愛小説」だからです。 文芸評論家の川田宇一郎=入交佐妃(いりまじり・さき)撮影 恋愛小説では、実によく女の子が死にます。21世紀に入ってからも「世界の中心で愛を叫ぶ」という女の子が死ぬベストセラーがありましたが、日本文学では、徳富蘆花「不如帰」(1899)、伊藤左千夫「野菊の墓」(1906)、室生犀星「或る少女の死まで」(1919)、堀辰雄「風立ちぬ」(1937)、武者小路実篤「愛と死」(1939)など、枚挙に暇がありません。 伊藤左千夫=千葉県の山武市歴史民俗資料館提供 ちなみに、夏目漱石は「野菊の墓」に感激して、作者に「あんな小説なら何百篇よんでもよろし
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