◇森茉莉(まり) <1>贅沢貧乏(森茉莉著/講談社文芸文庫/1103円) <2>恋人たちの森(森茉莉著/新潮文庫/580円) <3>記憶の絵(森茉莉著/ちくま文庫/798円) 時代の変わり目、避けられぬ災禍の中、人は不幸にあった時どうするだろう。例えば家庭を、財産を失った時、愛してくれた人が死んでしまった時。 かつての「仲間」からさえ誤解され誹謗(ひぼう)された時、我が子に土地も預金も差し出して報われなかった時。唯一頼る相手からついに疎まれた時。親友がライバルと気付いてしまった時、そんな否応(いやおう)ない、「孤独」の中で。 文学があれば幸福な時がある。思考が無限に思え内面が輝く瞬間を文に残して。 森茉莉は生涯「幸福」な作家だった。それは「記憶の絵」の幸福や「空想」の幸福、作家の文の中に蘇(よみがえ)る幸福である。戦後の喪失の中で彼女は、「薔薇(ばら)色」の世界を見て「愛」に生きた。その絢