Cortexymeという創薬ベンチャーがScience Advancesに報告した論文を紹介したい.アルツハイマー病(AD)の原因は,P. gingivalisという歯周病菌(口腔偏性嫌気性菌)であり,この菌が歯肉から血中に入り,加齢や脳血管障害で脆弱化した血液脳関門を通過し,脳内でタンパク分解酵素gingipainを産生・分泌することであるという論文である.そして,このgingipainを阻害する薬剤を用いたADに対する臨床試験がすでに開始されているという本当に驚くべき内容である.個人的には胃がんとピロリ菌の関連が明らかになったときのことを思い起こした.もし事実ならADの予防や治療が大きく変わる可能性がある.論文の内容を箇条書きでまとめたい. ・歯周病菌P. gingivalisは健常人の口腔内にも存在し,歯磨きやフロス,歯科治療などで一過性の敗血症をきたし,冠動脈,胎盤,肝臓などに移行