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  • 『脳に刻まれたモラルの起源』 金井良太 (岩波科学ライブラリ-) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋ウェブストアで購入 道徳は長らく理性の働きと考えられてきたが、18世紀英国で同情心や共感といった感情の働きに根ざすという道徳感覚説が登場した。ハッチソン、ヒューム、アダム・スミスらで、特にヒュームは道徳を情念の働きと見なした。 高級な理性の働きであるべき道徳を低級な感覚に、それもよりによって低級な中でも低級な情念に結びつけた道徳感覚説に対する反発は激しかった。カントの『実践理性批判』がたまたま道徳にかなっているように見える行為でも、道徳法則にもとづかない感情によって引き起こされた行為にすぎないなら道徳的ではないとする厳格な道徳観を打ちだしたのは道徳感覚説に対する反論という側面があったといっていいだろう。 だが現代の脳科学は道徳感覚説を復活させつつあるらしい。著者は書の狙いをこう語っている。 倫理観というのは、人間の脳の中にある根的な道徳感情に由来する。人類が誕生し集団生活を行

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    ROBOT_KUN 2013/08/02
  • 『皮膚感覚と人間のこころ』傳田光洋(新潮社) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋ウェブストアで購入 「なぜ他人に触られると気持ちいい?」 私たちはときに「やっぱり皮膚感覚が大事だよね」などと口にする。まるで「皮膚感覚」がハードな学問や綿密な思考よりも上位に立っているかのように。しかし、そのような言い方で「皮膚感覚」に言及するとき、当は私たちは「皮膚感覚」をあまり信用せず、軽視しているようにも思う。皮膚など所詮表層=表面=覆い=見かけにすぎない、当はその下にある内臓や血管や、財産や法律や、命や魂の方が大事に決まっている、と。だからこそ、つかの間、「皮膚」にこだわってみせるのだ、と。 書の著者傳田光洋は「皮膚」のことを気で、徹底的に考えてきた人である。つかの間どころではない。このを読むと、私たちが何気なく「やっぱり皮膚感覚だよね」などと口にしてしまう背景に、たいへんな歴史があることがわかってびっくりする。傳田の仮説はこうだ。人類は120万年前に体毛を失

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    ROBOT_KUN 2013/07/19
  • 『お墓に入りたくない! 散骨という選択』村田ますみ(朝日新聞出版) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋ウェブストアで購入 人生には、年を重ねてこそ初めてわかることがある。心意気はまだ若くても、体力の衰えを実感するようになり、心配事が増えてくる。二十代の頃には想像できなかった現実にいやおうなく直面させられるのだ。たとえば、なってみないと老眼の不便さはわからない。事中、自分がべているものに焦点が合わないのは、実にせつない。また「体力が落ちてくる」とはどういうことかにも思い知らせられる。駅の階段を駆け登るのも息が切れるし、ましてや1段抜かしで駆け降りて電車に飛び乗る、など今ではとてもできない。年金生活への漠然とした不安も無視できないし、認知症になったらどうしよう、という心配もある。 そんな心配のひとつに、お墓の問題がある。 一昔前までは「死んだらその家の墓に入る」という世間一般の流れがあった。子は親の墓に入り、よほどの事がなければ嫁も一緒に入れられる。「先祖代々の墓」であり、折々に

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    ROBOT_KUN 2013/07/17
  • 『並盛サラリ-マン』木下晋也(竹書房) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋ウェブストアで購入 読むと全身の力が抜けて、ほどよく笑えて、すっと眠りに入れる。そんなを私は「睡眠導入」と名付けて密かにコレクションしています。前回「睡眠導入」として紹介したのは、『生きていてもいいかしら日記』(北大路公子著)でした。今回はもっとゆるい、例え、会社の運命を決する重要な会議の直前だったとしても、数分で脱力してしまう、恐ろしい漫画をご紹介したいと思います。 それが木下晋也の漫画です。私が『ポテン生活』に出会ったのは書店の店頭でした。寝っころがって描いたようなゆるいタッチの絵。帯には「何巻から読んでも大丈夫」というようなことが書いてありました。何巻から読んでも大丈夫って……。いくら8コマ漫画とはいえ、固定のキャラクターもいるようなのに、そんな適当でよいのでしょうか。木下さんの担当編集者さん、それでいいんですか? 結論から言うと何巻から読んでもホントに大丈夫でした。

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    ROBOT_KUN 2013/07/05
  • 『[銀河鉄道の夜]フィールド・ノート』寺門 和夫(青土社) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋ウェブストアで購入 「謎解き[銀河鉄道]」 宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」はややこしい作品だ。読むによって印象が変わる。というか、内容が変わる。 学生時代、「銀河鉄道の夜」でレジュメを書くことになり、参考のため『「銀河鉄道の夜」とは何か』(村瀬学著、大和書房)というを読んだ。著者の村瀬氏が「(賢治によって)最終稿では削られてしまった」と書いていた部分、「セロの声」や「ブルカニロ博士」に関する記述になぜか見覚えがあった。 おっかしいなあ、と思いつつ手元にあった角川文庫版『銀河鉄道の夜』(平成3年7月30日改版66版。改版の初版は昭和44年発行)を見てみると、やはり「セロの声」も「ブルカニロ博士」も登場していた。で、書店に行って新潮文庫版を見てみると、セロも博士も登場しないのだ。当時の書店には、内容が微妙に違う「銀河鉄道の夜」が同時に並んでいたのだ。 以来、私にとって「銀河鉄道の夜」

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    ROBOT_KUN 2013/07/01
  • 『エッチのまわりにあるもの――保健室の社会学』すぎむらなおみ(解放出版社) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋ウェブストアで購入 「無条件の承認でもなく、まったくの否定でもなく」 このの著者であるすぎむらなおみさんは、高等学校に勤務する養護教諭(いわゆる「保健室の先生」)です。定時制高校に赴任し、なかなか心を開いてくれなかった生徒たちと文通を始めたことをきっかけに、生徒たちのさまざまな性に関する経験と悩みに直面し、How-To的な対処法がまったく通用しない中で一体どう考えたらよいのかと、著者は自問を重ねます。その成果がこのであり、取り上げられるトピックは、恋愛とセックスだけにとどまらず、同性愛、外国人生徒の経験する文化的摩擦、(恋人同士の間におこる)ドメスティック・バイオレンス、セクシュアル・ハラスメント、レイプ、等々多岐にわたっています。 実は、私は当初軽く読み流すつもりでこのを手に取ったのですが、いつの間にか引き込まれ、最初から最後までじっくりと読みました。なぜそうさせられたの

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    ROBOT_KUN 2013/06/03
  • 『The Power of Habit 』Charles Duhigg(Random House) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋ウェブストアで購入 「習慣の力を語った」 まず初めに人間の自制心についての質問をひとつ。 自制心というのは生まれながら遺伝的に各人それぞれ違うレベルで備わっているものだろうか。それとも、技術のように訓練を積めば習得できるものだろうか。 今回読んだ「The Power of Habit」にはこの質問の答えが載っていた。 ある実験で事を抜いた学生をふたつのグループに分け、大根とチョコレート・クッキーが並んだ部屋に入れ、ひとつのグループにはクッキーをべて大根はべるなと指示し、ほかのグループにはクッキーを無視して大根をべろと指示をしておく。 マジックミラー越しにグループの行動を観察すると、大根だけをべろと言われたグループの数人はクッキーの匂いを嗅いだり、手にしたクッキーから溶け指についたチョコレートを舐めたりするが、自制心を働かせクッキーをべることはなかった。 一方、クッキ

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    ROBOT_KUN 2013/05/11
  • 『英語は科学的に学習しよう』白井恭弘(中経出版) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋ウェブストアで購入 「英語教育の大騒ぎ」 うわっ、これはひどい。みなさん先週の朝日新聞をお読みになっただろうか。オピニオン欄の「大学入試にTOEFL」特集(5月1日朝刊)で、「TOEFL導入」の旗振り役の自民党教育再生実行部長・遠藤利明先生がインタビューに答えておられるのだが…。 中学高校で6年間英語を学んだのに英語が使えない。コミュニケーションできない。それが現状です。これではもったいない。ならば変えましょうということです。 どうやって変えるか。まず目標を決め、そこから逆算して教育の中身を決めていくことが確実です。探したら米国にTOEFLというテストがある。聴く・話す・読む・書くを全部測れます。130カ国で使われ、米国留学につながるなど汎用性が高い。これを目標にしようというわけです。 (中略) 英語教育の専門家にも聞きました。みなさん、さまざまな説をおっしゃるけど、どれが正し

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    ROBOT_KUN 2013/05/10
  • 『テレビという記憶―テレビ視聴の社会史』萩原滋 編(新曜社) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋ウェブストアで購入 「歴史化されるテレビ書のサブタイトルは、「テレビ視聴の社会史」であり、テレビ歴史的な視点からとらえようとする先鋭的かつ意欲的な論文からなる論文集となっている。 評者は、まずこの、テレビという存在が歴史化されるという分析視角に、大いなる感慨を抱かざるを得なかった。それは、この社会における、一定年齢層以上の人々には共通するものであるだろう。それほどにテレビとは、いつもすぐそこの、身近な現実に存在するメディアだったからである。 さて、テレビ歴史的な視点からとらえると言った場合、すぐに思いつくのは、番組の内容の変遷を追ったようなものや、あるいはテレビという受像機の技術的な歴史ではないだろうか。 だがサブタイトルにもあるように、書の視点はそれらとは異なっている。むしろ、この社会が、そしてこの社会の人々が、テレビというメディアをいかにまなざし、受容してきたのか

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    ROBOT_KUN 2013/05/03
  • 『ゲーム理論と共に生きて』鈴木光男(ミネルヴァ書房) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋ウェブストアで購入 「ゲーム理論にかけた人生ゲーム理論はいまや経済学に限らず他の社会科学や自然科学でも広く使われるようになっているが、書(『ゲーム理論と共に生きて』ミネルヴァ書房、2013年)の著者(鈴木光男・東京工業大学名誉教授、1928年生まれ)が若い頃はそうではなかった。鈴木氏の人生はひとえにゲーム理論の発展と普及に捧げられたといってもよいが、ミネルヴァ書房の「自伝」シリーズの一冊として著されただけに、単に分析手法の解説に終始するのではなく、鈴木氏の人生とのかかわりがどのようなものであったかに重点が置かれた興味深いである。 私の学生時代は、鈴木氏の初期の著作『ゲーム理論』(勁草書房、1959年)がまだ版を重ねていたが、いま思い出しても、学問的水準を落とすことなくゲーム理論がどのようなものなのかを丁寧に解説した名著であったと思う。ゲーム理論の先駆的な業績は、例えば、1

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    ROBOT_KUN 2013/04/21
  • 『ぼくたちの外国語学部』黒田龍之助(三修社) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋ウェブストアで購入 「その他の外国語」の話をしよう」 新学期、語学を新しく始めた人も多いだろう。もっとも、「外国語」というと今日も世間は「英語」「英語」と喧しい。も杓子もTOEICやTOEFLの点数を気にする世の中では、「その他の外国語」の居場所はますます小さくなる一方だ。語学は英語だけじゃないよ!と声を大にして言いたい人はこのを読もう。(やっぱり英語が気になる人も読んでください。旧著『ぼくたちの英語』もすばらしいですよ。) この時代に、黒田龍之助さんの存在は貴重だ。数多くの言語に通じ、言語学のバックグラウンドもあって、多様なことばの世界の魅力を軽やかに語ってくださる。と言うと、亡き千野栄一さんが思い出されるが、その大きな空白を埋めているのが黒田さんなのだと勝手に思っている。千野さんの専門がチェコ語だったように、黒田さんもロシア語はじめスラブ系の言語に造詣が深いが、その語学の

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    ROBOT_KUN 2013/04/18
  • 『呑めば、都』マイク・モラスキー(筑摩書房) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋書店で購入 「禁欲的飲酒法」 春の飲み歩きシリーズ第二弾。今回はマイク・モラスキー氏の『呑めば、都』をとりあげたい。先月見た大竹聡さんの『ひとりフラぶら散歩酒』と読みくらべるとおもしろいだ。どちらも最大の目的がひとりでふらふら飲み歩くことにあるところはそっくりで、モラスキーさんのアンチ高級志向や、「はげ」「おやじ」「ガイジン」「肝臓いじめ」といった自虐的な自己意識も――「はげ」や「ガイジン」といった細部は別として――大竹さんもある程度は共有しているかもしれない。競馬場に足繁く通うあたりにも共通したスタイルが見て取れる。 でも、この二冊、かなり対照的でもある。『呑めば、都』は、ぶらぶら散歩エッセイという設定にもかかわらず、きわめて禁欲的なのだ。日酒の銘柄と味覚が列挙され、おやじたちと交わした会話や店主の挙動もしっかりメモされる。国立マダムの会話の法則を調査したかと思うと、競馬

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    ROBOT_KUN 2013/04/11
  • 『デフレーション』吉川洋(日本経済新聞出版社) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋書店で購入 「デフレをどう捉えるか」 経済学はアダム・スミスの昔から優れて実践的な学問であったが、バブル崩壊後の日経済が長いあいだ低迷し続けるうちに「デフレからの脱却」という課題が急浮上するようになった。だが、経済学者やエコノミストの見解が容易に一致しないように、デフレをどう捉えるかについてもいろいろな考え方がある。書(『デフレーション』日経済新聞出版社、2013年)の著者である吉川洋氏(東京大学大学院経済学研究科教授)は、わが国を代表するケインジアンとして知られているが、一読すれば、自説とは対立する理論や政策(現内閣の「アベノミクス」もそのひとつだが)との違いが明確となるような丁寧な叙述がなされているのに気づくだろう。啓蒙書の模範というべき好著である。 一昔前、インフレ抑制が重要な経済問題であった頃、アメリカの高名な経済学者ミルトン・フリードマンは、「インフレは貨幣的な現

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    ROBOT_KUN 2013/04/06
  • 『いじめの構造―なぜ人が怪物になるのか』内藤朝雄(講談社現代新書) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋書店で購入 「世に棲む寄生虫」 数ヶ月前、何気なくテレビの報道番組を見ていた時のこと、出演中のコメンテーターの奇趣に思わず目を奪われた。発語はつんのめるような早口に加えて迂遠。語彙は過激で煽情的。感情的なのにもかかわらず漂う機械的ギコチナサ。司会者の質問を受けるや、的を外して逸れていくこと甚大。総じて、挙動不審の上に焦れったい。忍耐も限界に達したのか、司会者たちも苛立ちを隠せなくなり、語調が厳しくなっていく。詰め寄られるコメンテーターは、それに動じるでもなく(もとより動じている)マイペースである。初めは光景の物珍しさから釘づけになったものの、よくよく聴いていくと、奇矯なうわべとは裏腹に健(したた)かな正論が開陳されている。勿論、このコメンテーターこそが内藤朝雄氏だった。 わたしが著者の作品を読むようになったのは上記の報道番組以降のことだが、著者の代表作とされる『いじめの社会理論』

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    ROBOT_KUN 2013/03/05
  • 『アホウドリと「帝国」日本の拡大-南洋の島々への進出から侵略へ』平岡昭利(明石書店) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋書店で購入 12月5日(水)NHKテレビは、絶滅が心配されている国の特別天然記念物アホウドリが、現在の繁殖地である伊豆諸島の鳥島から南に350キロ離れた小笠原諸島の聟島への移転の期待が膨らんだことを報道した。鳥島はしばしば火山の噴火で壊滅的な被害が出、1939年の噴火後アホウドリは絶滅したと報告されたこともあった。アホウドリは、1887年から始まった羽毛採取のために絶滅寸前になるまで撲殺され、1951年に30-40羽にまで減少した。 なぜ、大量に撲殺されたのか。一時は日の輸出品の上位にその羽毛やはく製がランクされ、フランスなどヨーロッパに輸出されたにもかかわらず、その実態は明らかではない。その理由を、著者平岡昭利は、つぎのように説明している。「鳥には、害虫をべる益鳥という考え方があり、さらに、羽毛採取のため撲殺によって捕獲し続けたアホウドリは1907年より保護鳥に、さらに19

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    ROBOT_KUN 2012/12/15
  • 『人種とスポーツ――黒人は本当に「速く」「強い」のか』川島浩平(中公新書) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋書店で購入 「『黒人』の身体能力神話を解体する」 スポーツの国際大会の中継を見ていると、「黒人選手は身体能力が高い」という表現が実況のアナウンサーや解説者の口から頻繁に聞かれる。また、それに対をなして「身体能力で劣る日人」「組織力の日人」という表現も同時に使われる。ここでは、「黒人とは誰なのか」「身体能力とは何か」ということが一切定義されないまま、視聴者との間の共有されるべき前提となっているように思える。 「黒人選手は身体能力が高い」という表現がステレオタイプな表現であり、それ自体つくられたイメージであることは、多くのスポーツ社会学者やジャーナリストが度々指摘してきた。それでも「でも、黒人選手の身体能力は高いでしょ」という反応は絶えることがないし、そういった疑問に正面から答えようとしたものにはなかなか出会ったことがない。 書は、さまざまなスポーツの歴史や資料をもとに、「

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    ROBOT_KUN 2012/12/10
  • 『朝鮮植民地支配と言語』 三ツ井崇 (明石書店) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋書店で購入 ついこの間まで日は日韓合邦時代に朝鮮語を禁止したとかハングルを抹殺しようとしたといった日悪者論が横行していたが、『嫌韓流』のブームで日が欧米の植民地ではありえない普通教育を実施し、しかも朝鮮語を必修科目としてハングルの普及に力をいれていたことが広く知られるようになった。またハングルの正書法が確立したのも日統治時代のことで、それには朝鮮総督府が大きく係わっていた。もはやかつてのようなハングル抹殺論は通用しないところにきている。 韓国歴史学界でも日が朝鮮の自発的近代化をつぶしたとする植民地収奪論はかつての勢いを失い、日支配の功罪を事実に即して冷静に見ていこうとする植民地近代化論が台頭してきている。 2006年に刊行された『解放前後史の再認識』(『大韓民国の物語』のもとになった論集)の巻末の座談会では次のような見直しが提起されている。 朝鮮語学会は植民地の期間

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    ROBOT_KUN 2012/12/09
  • 『BOOKS ON JAPAN 1931-1972 日本の対外宣伝グラフ誌』森岡督行 (ビー・エヌ・エヌ新社) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋書店で購入 「"日の対外宣伝グラフ誌"の、美しい宣伝グラフ誌」 タイトルにある1931年から1972年は満州事変から札幌オリンピックに重なる。東京・茅場町で古書店を営む森岡督行さんが、この間に刊行された"日の対外宣伝グラフ誌"から106点を選んで、時代の流れに対応させながらそれぞれの表紙と中ページの写真を載せてコメントを添えた。 "対外宣伝グラフ誌"と聞けば、日工房の『NIPPON』(1934-1944)や東方社の『FRONT』(1942-1945)など戦時下に国策で編まれた雑誌ばかりが頭に浮かぶが、鉄道省国際局発行の観光案内や、国の主要輸出品としての羊毛、真珠、自転車、ミシンなどの業界団体が作るカタログ、今では版元の所在がわからないが不思議な国ニッポンを伝えた雑誌まである。戦前、国際観光局で対外宣伝を担当していた井上万寿蔵が残した言葉、「露骨な外交工作や政治宣伝がなんらの

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    ROBOT_KUN 2012/11/30
  • 『なんらかの事情』岸本佐知子(筑摩書房) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋書店で購入 「岸道場の掟」 出た、と思った人も多いだろう。 『気になる部分』『ねにもつタイプ』につづく〝タイトルが七五調〟シリーズのエッセイ集第3弾。今回はちょっと字余りだが、細かいことは気にしなくていい。 電車の中で読んではいけないだ。単に吹き出してしまうからではない。いや、岸先生の〝タイトルが七五調〟シリーズのたちが悪いのは、表向き「イヒヒ。笑わせちゃうぞ」という顔など、ぜんぜんしてないことである。むしろ、むっつりして「いえいえ。こちらこそ。かたじけない」とお辞儀でもしそうな気配。ところが、すれちがいざまにやられるのである。たとえば「物言う物」という、ごく地味なタイトルがついた文章。 このあいだ、デパートのトイレに入ったら便器がしゃべった。 「このトイレは、自動水洗です」 驚いた。便器に話しかけられることは、まったく想定していなかった。この先、さらに何か言うつもりだろう

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    ROBOT_KUN 2012/11/23
  • 『イギリスの大学・ニッポンの大学 ― カレッジ、チュートリアル、エリート教育』苅谷剛彦(中公新書ラクレ) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋書店で購入 「東大って、やっぱりダメなの?」 オックスフォード大学との比較を通し、日の大学、とくに東大を批判する――たいへんわかりやすい図式だと思う人もいるかもしれないが、ややトーンの変わる第三部に至って、語ろうとする内容をはみ出さんばかりに横溢する著者の熱意に打たれる。筆者自身にとっても生々しい問題なので、今回は多少書評の枠をこえて末尾で私見も述べたいと思う。ともかく、まずはの紹介から。 書は三部構成からなる。第一部はオックスフォードに専任教員として赴任した著者のカルチャーショックを描いた一種の「旅行記」と考えればいい。ただし、『ガリヴァー旅行記』のようなものとちがって視線はまっすぐというか、珍妙なものをおもしろおかしく描くというよりは、まじめで、建設的である。 なかなかこうはいかない。オックスフォードやケンブリッジの大学システムというのは、はじめて見る人にとってはどうし

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    ROBOT_KUN 2012/10/29