廃業の日2015年12月3日、福島県本宮市に暮らす三瓶利仙(60)と恵子(57)の酪農家夫婦は、牛舎で次々と売られていく牛を眺めていた。 朝10時過ぎに始まった牛の販売会には同業者が50人ほど集まった。あらかじめ組合関係者や獣医など目利きによって付けられていた値段を参考に、参加者は夫婦によって売りに出された49頭の牛を挙手で購入していく。価値の高い牛には、40人が購入を希望した。その場合にはくじ引きで購入者が決められた。 販売会は、数時間で終了した。妻の恵子は「牛が売られてトラックに積み込まれて行く様子を見ていると、5年前に牛と一緒に避難した日のことが蘇ってきて、正直言って辛かった」と語る。 そしてこう続けた。「これまで5年、無我夢中で必死に生きてきました。だから実感がなかったのかもしれないが、今初めてとんでもないものを失ったんだと気がついた」 この夫婦は40年間続けてきた酪農をこの日、廃
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