もう一軒訪ねた銭湯は、北区滝野川の稲荷湯。やはり宮造り銭湯が東京に続々と建てられていった頃である1930(昭和5)年築だ。現在の女将の土本公子さんの曾祖父が石川県から上京して大正初期に銭湯を始めた。現在の建物は曾祖父が「日本一の風呂屋を作るんだ」と宣言して建てたものだ。 宮造りの銭湯は、正面に寺社のような「千鳥破風」と呼ばれる屋根を持ち、その下の玄関上に唐破風がある二重破風(屋根)が特徴だが、稲荷湯はそれがさらに三重になっている。稲荷湯にも脱衣場の外には池を擁した庭があり、憩いの空間に。以前は現在の脱衣場の一部まで池が広がっていたが、改築されている。 ここは、男湯女湯の間に仕切りがあるとはいえ、吹き抜け空間の高い天井が気持ちよく、大きな窓から自然光が入る。女将さんによると「この明るさがいいと、まだ日の高いうちにおいでになる常連さんもいらっしゃいます」という。 こちらも2014年に洗い場の改