◇歌劇客運んだ幻の12年 高松市南端の山間部にひっそりとある、塩江温泉(高松市塩江町)。かつて、この温泉と同市仏生山町を結ぶ「塩江温泉鉄道」が存在した。温泉では専属の少女歌劇が華麗なショーを連日繰り広げるなどにぎわい、一時は「四国の宝塚」とも呼ばれたが、日中戦争の影響から1941年(昭和16年)に廃線となった。今でもあちこちに往時の名残があり、後世に記憶を残そうとする住民の動きも出ている。 鉄道は28年、高松琴平電鉄の前身「琴平電鉄」が設立。翌年から約16キロの区間で運行を始めた。架線を設置する費用を節約するため、燃料はガソリン。塩江温泉郷の開発も併せて行い、不動産と鉄道が一体になったビジネスだった。 新たに出来た温泉旅館「花屋」の目玉は、宝塚歌劇をほうふつとさせる少女歌劇。少女らは温泉に住み込みで、毎日2回公演を行った。当時から塩江町で暮らす蓮井正文さん(91)によると、「舌切りスズメ」