徳島県南端にある太平洋に面した海部町(現海陽町)は日本で自殺率が最も低いことで知られている。この町を対象とした研究から自殺の危険を抑制するコミュニティの特性が見えてきた。それらの社会実装に向けた試みを紹介する。 ※本稿は、SSIR Japan 編『スタンフォード・ソーシャルイノベーション・レビュー 日本版 05 コミュニティの声を聞く。』より転載したものです。 岡 檀 Mayumi Oka 社会的レジリエンスを高める「自殺予防因子」への着目 日本は自殺の多い国として知られている。昨年の自殺者数は 2万1881人であり、交通事故死者数の約8倍に相当する。人口10万対自殺率は G7加盟国の中では常にワーストである。自殺多発地域における自殺危険因子(健康問題、離別など自殺行動につながる要因)の研究は国の内外において厚い蓄積がある一方、自殺希少地域を対象とした自殺予防因子(自殺の危険を抑制する因子