かつては年輪を重ねた年長者たちの知恵が、下の世代の人生において重要な指針になった。そのため若者は困難に直面すると必ず集落の長老を訪ねてアドバイスを求めたし、長老は日頃から敬われていた。 私たちが死の存在を認知してもなおこの世で生きていられるのは、自分たちが死んでも後世の人々をとおして自分たちの人生も続いていくという確信があるからだ。自分が蓄えた知恵は後世に受け継がれるだろうという確信は、個人の人生に一層の責任感を与える。過去から未来へと続く連続した時間の中に自分も属しているという感覚は、それだけ重要なものなのだ。 年長者は「若者たちの世界へ移り住んだ移民」なのか とはいえ現代のように急速に変化する時代では、過去の知識はすぐに意味を成さなくなる。科学技術の飛躍的な発展が、前世代の知識を使いものにならなくしてしまうからだ。そのせいで年長者の考えは古くさいものとされ、誰からも耳を傾けられなくなる