長期戦を遂行するためには、軍隊の動員基盤を継続的に強化する処置が欠かせません。このためには兵士を送り出す家族に対する支援も必要です。これは政府軍の人事のみならず、反乱軍の人事を考える場合にも当てはまります。 中国大陸で日中戦争(1937~1945)が勃発したとき、毛沢東はそれまで敵対してきた蒋介石と和解し(第二次国共合作)、一致して日本に対抗する戦略をとりました。同時に、自らが率いる中国共産党の軍事部門を拡大することにも努めています。1937年に党の武装部隊であった中国工農紅軍を八路軍に改編した当時、その兵力はおよそ2万8000名ほどでした。しかし、8年にわたる民衆工作と軍事行政を通じて党は兵力を増強し、日中戦争が終わる1945年には90万名の兵力を保有していました。 この組織の急拡大で重視された措置の一つが兵士家族への支援でした。毛沢東は前線に送る兵士の戦意を維持する上で家族支援の重要性