競馬にオートレース。雨の日も風の日も船橋で予想を売って50年のミスター船橋 「女房を質に入れてでも買ってください!」その小気味のいい口上はもはや漫談の域で、これを聞くために競馬場を訪れるファンも多い。 「ミスター船橋」こと川村栄一、70歳。競馬場公認の予想屋=場立(ばた)ちを極めた男の鉄火場の作法とは!? * * * 近年、経営悪化が続く、船橋競馬場(千葉県)に“生ける伝説”と呼ばれる男がいる。 頼りない蛍光灯に照らされたスタンド下の通路には、8つの予想台が並んでいる。昔は2階にも予想台が並んでいたが、今は1階だけ。 ほとんどの台が、客がいないか、いてもひとりかふたり。そんななか、ひとつだけ十数人の客に取り囲まれ、にぎわっているブースがある。 「この騎手は、今日は一回走り(その日、1レースしか騎乗予定がないジョッキーのこと)。一回なら、がんばっちゃうでしょ! 俺も夜、一回ならがんばれるもん