「江戸の憲法構想」 [著]関良基 日本が近代化できたのは、明治維新があったおかげ。幕府は封建制にすがるだけの守旧派だった。いまも世に流通するそんな見方に、一撃を加えるのが本書である。 幕府のために建白書を書いた知識人らに焦点を当て、その「憲法構想」ともいえる内容を一つひとつ検討する。そしてこう問いかけるのだ。明治維新なしでも、日本は十分、近代国家になりえたのではないか。もっとましな近代国家に。 俎上(そじょう)にのぼるのは6人で、なかでも信州上田藩士の赤松小三郎は知られざる逸材かもしれない。幕府にも薩摩藩にもパイプを持つ人で、武力によらない体制変革を訴えていたという。建白書は庶民にも参政権を認めるような内容で、法の下の平等を保障するような記述もある。その発想のもとには儒教があるというのも興味深い。 ほかの建白書起草者は将軍側近や会津藩士、漂流民など。それぞれ強みや限界があるが、共通するのは