ブックマーク / honz.jp (502)

  • なぜ薬物依存が減らないのか『ドラッグと分断社会アメリカ 神経科学者が語る「依存」の構造』 - HONZ

    薬物依存には大変恐ろしいイメージがある。一度でも手を出せば最後、もはや依存から逃れることは叶わず万難を排して薬を手に入れることに邁進し、捕まってもやめることはできない──。 確かにコカインやマリファナといった薬物には”依存”はある。だが、世間一般に流布しているイメージは科学的に正確とは言い難いものだ。違法薬物による依存とはどのような種類の依存なのか? 依存に陥らない状況もあるのか? という点について、ただ闇雲に恐れるのではなく科学的に検証する必要がある。書は、アメリカの貧しい黒人居住地区で生まれ、幼少─青年時代を”薬物”と身近な日々を過ごした神経科学者による、”正しく怖がる”ための薬物教育の一冊である。 邦題と違い原題は『High Price: A Neuroscientist’s Journey of Self-Discovery That Challenges Everything

    なぜ薬物依存が減らないのか『ドラッグと分断社会アメリカ 神経科学者が語る「依存」の構造』 - HONZ
  • 『ヒトの遺伝子改変はどこまで許されるのか ゲノム編集の光と影』イノベーションに突きつけられた、大きな課題 - HONZ

    『ヒトの遺伝子改変はどこまで許されるのか ゲノム編集の光と影』イノベーションに突きつけられた、大きな課題 生殖医療技術と遺伝子改変技術の目覚しい進展により、人類はすでに、自分たちの遺伝子を改変する時代に入っている。 書の「遺伝子改変は”どこまで”許されるのか」というタイトルは、いま議論すべき喫緊の課題である。書では、生命倫理学の専門家である著者が、生殖医療技術と遺伝子改変技術の過去と現在を紹介しつつ、この課題の落としどころを冷静に探ってゆく。 ゲノム編集技術「CRISPR/Cas9(クリスパー・キャスナイン)システム」の登場により、従来の遺伝子組み換え技術とは比較にならないほど、高効率で容易に、しかも安価に生物の遺伝子改変を行うことが可能になった。CRISPR/Cas9システムを用いた遺伝子改変により、筋肉が増量したマダイやウシなどの農産物や、医学研究のためにヒトの疾患を再現したサルが

    『ヒトの遺伝子改変はどこまで許されるのか ゲノム編集の光と影』イノベーションに突きつけられた、大きな課題 - HONZ
  • 『わたしと統合失調症 26人の当事者が語る発症のトリガー』リカバリーを生きるということ - HONZ

    私たち当事者は、人として破綻しているわけではなく、ただ「見えない病気になっているだけ」なのです。私は、当事者がこれほどまで無理解な状況におかれている現状に強い憤りを覚えます。 自分のことを言われているような気がして胸がチクチクする。いや、まさに自分のことだ。正直に書いておくが、統合失調症をもっと理解しようと思う自分 vs ちょっと遠慮したいと思う自分のせめぎ合いがいまだ脳内で継続中である。 書は26人の統合失調症当事者=「リカバリーを生きる人々」の体験談と、編者の精神科医・佐竹直子氏の解説により構成されている。 巻頭で編者は、 発症の頃のエピソードは、どんなことが統合失調症のトリガーになるのかだけでなく、発症当時の混沌とした状態と同じ感覚を今まさに抱えている人に、自らに起こっているかもしれない問題を気づかせてくれるかもしれません。また、その人にとってのトリガーとなる出来事は発症後の症状の

    『わたしと統合失調症 26人の当事者が語る発症のトリガー』リカバリーを生きるということ - HONZ
  • 『人質の経済学』地球を駆け巡る、壮大なるブーメラン - HONZ

    テクノロジーが進化し、世界中の人たちは密接につながりだした。人類には、太古からのナレッジだって十分に溜まっている。それでも世界情勢は安定せず、中東をめぐる問題は予断を許さない状況が続いている。 とりわけ深刻なのが、大量の難民が雪崩をうったようにヨーロッパへ流入し、深刻な社会問題を引き起こす可能性が高いということだ。驚くべきことに、このヨーロッパへ流入した難民の90%が犯罪組織に頼ってやってくるという。そして密入国を斡旋する業者たちの原資が、外国人の誘拐ビジネスで稼いた身代金であったというから話は穏やかではない。 書は、そのデリケートさゆえにあまり報じられることのない誘拐ビジネスや人質交渉の舞台裏を起点に、グローバル化した世界経済の闇の部分を描き出した一冊だ。著者はテロ・ファイナンスを専門とする女性エコノミスト。犯罪ネットワークの全貌や歴史的な背景を知ることで、センセーショナルさだけに目を

    『人質の経済学』地球を駆け巡る、壮大なるブーメラン - HONZ
  • 『全裸監督 村西とおる伝』真珠湾でAVを撮ったビジネスマン - HONZ

    安倍晋三首相が28日に米・ハワイの真珠湾を訪問した。当初は、今回が現職首相として初の真珠湾訪問とされていたが、吉田茂、鳩山一郎、岸信介も首相在職時に訪れていたとの報道も出てきた。突如、過去に3首相の訪問が浮上してきたわけだが、真珠湾上空で男女の情事を撮った男は日どころか世界でも一人であろう。 村西とおる。もはや過去の人かもしれない。十数年前に息子が超有名難関私立小学校に入学したことで、「あの村西とおるの子が!」と話題になったが、全盛期のパンツ一丁で業務用カメラを抱えて、「ナイスですね」とハスキーボイスで発する姿は多くの人にとって、忘却の彼方だろう。 とはいえ、この男、一時代を築いたのは間違いない。80年代末には、5つの会社を経営、年商100億円のAV王国をつくりあげた。『SMっぽいのが好き』でデビューさせた専属女優の黒木香は知的な語り口とお下劣なキャラクターのアンバランスさと「腋毛」で、

    『全裸監督 村西とおる伝』真珠湾でAVを撮ったビジネスマン - HONZ
  • 宇宙植民の可能性を問う──『宇宙倫理学入門──人工知能はスペース・コロニーの夢を見るか?』 - HONZ

    近年イーロン・マスク率いるスペースX社を筆頭に、民間企業による宇宙開発が加速している背景がある。書は「宇宙倫理学」と書名に(聞き慣れない言葉だ)入っているように、そうやって人間が宇宙に出ていく際に不可避的に発生する倫理/哲学的な問いかけについての一冊だ。 ショートレンジとロングレンジの問いかけ そうした説明だけをきいてなるほど! 宇宙での倫理を問うのねわかるわかる! とはならないだろうから(僕も当然ならなかった)、具体的にその「宇宙倫理学」の中で、どんな問いかけ/議論が存在するのかをざっと紹介してみよう。まず身近な、現在すでに具体的な問題として存在するものでいえば、宇宙における軍備管理、人工衛星から得られる情報の取扱、スペースデブリの処理をめぐる問題、宇宙飛行士その他宇宙滞在者の健康管理についてなどなどがあげられる。 現在でも静止軌道をめぐる取り決めはあるが、今後地球周回軌道上がより希少

    宇宙植民の可能性を問う──『宇宙倫理学入門──人工知能はスペース・コロニーの夢を見るか?』 - HONZ
  • 『失われた宗教を生きる人々 中東の秘教を求めて』 - HONZ

    書『Heirs to Forgotten Kingdoms』は、アラビア語とペルシア語を流暢に操り、イギリスおよび国連の外交官を務めた経験をもつ著者ジェラード・ラッセルが、中東の宗教的少数派のコミュニティを訪ねて旅し、現地の言葉で丁寧に話を聞きとって、現代に生きるその姿をまとめあげたものである。 1997年、駆け出しの外交官だった著者は、エジプトに配属されてアラビア語を学んでいた。著者はカトリック教徒で、祈る時にもアラビア語を使えば上達するのではないかと思い、エジプトのキリスト教会であるコプト教会に通い始めた。これが著者と宗教的少数派の初めての出会いだったという。聖テレーズ教会というその教会は、キリスト教徒だけでなく、地元のユダヤ人やムスリムからも愛されていた。そこには、イスラーム教と他の宗教との確かな共存の形があった。 中東といえばイスラーム教一色だと思いがちだが、実は中東は多様な宗教

    『失われた宗教を生きる人々 中東の秘教を求めて』 - HONZ
  • むっちゃいけてまっせぇ~ 『マンガ 超ひも理論をパパに習ってみた 天才物理学者・浪速阪教授の70分講義』 - HONZ

    むっちゃいけてまっせぇ~ 『マンガ 超ひも理論をパパに習ってみた 天才物理学者・浪速阪教授の70分講義』 -そして「実録! 大阪大学出版委員会」- 超ひも理論である。HONZ代表の成毛眞とともに挑んだが、まったく歯が立たなかった難攻不落の理論である。まぁ、ひょっとしたら、挑んだ相手というか、説明してくれた人が悪かったのかもしれない。我々を十分に納得させてくれんかったのだから。その敗北記は、東洋経済オンラインの『天才物理学者・浪速阪教授に聞く、その1、その2』に詳しい。 その浪速阪教授こそ、小説『超ひも理論をパパに習ってみた 天才物理学者・浪速阪教授の70分講義』(略称『ひもパパ』)の原作者である橋幸士・大阪大学理学研究科教授なのだ。実際には、小説『ひもパパ』がおもろいからというので話を聞きに行って、予想通り玉砕したのである。ちなみに、読んでも超ひも理論のことようわからへんのに、小説『ひも

    むっちゃいけてまっせぇ~ 『マンガ 超ひも理論をパパに習ってみた 天才物理学者・浪速阪教授の70分講義』 - HONZ
  • 『進化とは何か? ドーキンス博士の特別講義』 - HONZ

    最良の進化論入門書 あなたはどうしてこのを手にとったのだろうか。進化についての興味からだろうか。それとも、リチャード・ドーキンスというスター科学者にたいする関心からだろうか。あるいは、すでに熱心な愛読者であるために手にとるのも当然のことだったかもしれない。 どちらにせよ、あなたは最高の一冊を選びとった。書は現在望みうる最良の進化論入門書であり、またサイエンス入門書である。なにしろ、マイケル・ファラデーの不朽の名著 『ロウソクの科学』を生んだ英国王立研究所のクリスマス・レクチャーに、稀代の科学者・ 科学啓蒙家であるドーキンスが挑んだドキュメントなのだ。聴衆の子供たちを夢中にさせたにちがいない刺激的な連続講義は、まさしく現代版『ロウソクの科学』と呼ぶにふさわしい。 また、高度な内容を易しく面白く伝えるテクニックは、専門家にとっても学ぶところか

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  • 『カフェインの真実 賢く利用するために知っておくべきこと』 - HONZ

    著者のマリー・カーペンターは米国でも環境やの安全に対して住民意識が高い先進地域に在住するジャーナリストで、ダムを取り壊した川にサケが還ってきた事例など、環境問題に関する報道も多く手掛けている。 書ではまず、もともとは呪術者や王侯貴族専用の「魔法の薬物」だったチョコレートやコーヒー、お茶など、カフェインの入った飲物が一般大衆にも嗜好品として普及するようになった歴史的過程をたどる。古代には神官や呪術者など、一部の限られた人たちが伝承された専門知識や経験に基づいてカフェインを使いこなしていたと思われるが、現代では一般の人たちも手軽に利用できるようになり、カフェインにまつわるさまざまな問題が生じている。著者はそうした悲喜劇を数多くの事例を交えて取り上げている。現代社会でカフェイン問題が生じている根的な原因は、誰もが魔法の粉を簡単に手に入れることができるようになったにもかかわらず、私たち一般

    『カフェインの真実 賢く利用するために知っておくべきこと』 - HONZ
  • 『10分後にうんこが出ます』悲劇と情熱がウンをもたらした! - HONZ

    HONZが送り出す、期待の新メンバー登場! 小松 聰子は精密機械メーカーに勤務するワーキングママだ。先日『ブルマの謎』の客員レビューを寄稿してもらったところ大きな反響を呼び、即、正規メンバー入りが決まった。愛称はもちろんブルマー小松。そんな彼女が仕上げてきた次なる原稿のテーマは「うんこ」。「ブルマー」から「うんこ」へ、この流れで当に大丈夫なのか!? そんな彼女の今後の活躍に、どうぞご期待ください! (HONZ編集部) うんこ。 アイドル以外の人類ほぼ全員が関わる現象であるにも関わらず、正々堂々と発声するには憚られるこの単語、しかしながらそれに悩んでいる人はとても多い。 例えば私…書のページをめくりながら、1歳半の息子の感染性胃腸炎のゆるゆるうんち(書ではうんこ)と闘っていた。いくら昨今の紙おむつが優秀とは言え、大量のゆるゆるを放置すれば大惨事に見舞われることは請け合いなのである。ゆえ

    『10分後にうんこが出ます』悲劇と情熱がウンをもたらした! - HONZ
    agrisearch
    agrisearch 2016/12/16
    なんだかすごい。
  • マンガ新聞 - 漫画の記事・無料連載・新刊情報・おすすめ漫画レビュー

    不倫SF漫画の結末はハッピー?バッド?『あげくの果てのカノン』米... 2018年11月16日 2018年7月23日(月)漫画『あげくの果てのカノン』完結記念イベント「ハッピーエンド(もしくは地獄のはじまり)の作り方」が開催されました。  『あげくの果てのカノン』といえば、「不倫×SF」とい...

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  • かわいいあいつも、食べるとおいしい。『世界のへんな肉』アルパカもビーバーも、肉。 - HONZ

    肉。ああ、なんて魅惑的な響き! 焼きたての熱々をほおばれば、じゅわっと脂がとろけて、たちまち脳内はあふれ出る幸せホルモンの大洪水や~!! じるるっ。 おっと、よだれが。失礼しました。日人がこういうときに想像するのは、やっぱり牛肉? 北海道の人ならヒツジかな? でも、世界では「まさかのあんな動物」や「かわいいこんな動物」も、肉です。材なのです。 書は3年かけて世界一周の旅に出た著者が、いろんな国で出会った心温まる肉とのふれあい……じゃなくて、動物とのふれあいと、そのお肉の味を、おおらかな文章とゆるいイラストでたっぷり紹介してくれます。 ただ、著者は肉のために旅に出たのではありません。低血圧で朝が苦手で会社員に向いていない→  ふと自分が生まれてそろそろ1万日であることに気付く→  会社を辞める→  目的もしがらみも締め切りもない旅に出る。そして どこへ行っても動物と触れ合うのを楽しみに

    かわいいあいつも、食べるとおいしい。『世界のへんな肉』アルパカもビーバーも、肉。 - HONZ
    agrisearch
    agrisearch 2016/12/12
    「一心不乱に肉をむさぼるチーターたちを見ているうち、「かわいそう」とついさっきまで思っていたのに、だんだんインパラが旨そうに見えてくる」。。
  • 『マイクロバイオームの世界 あなたの中と表面と周りにいる何兆もの微生物たち』 - HONZ

    書はWelcome to the Microbiome(Yale University Press, 2015)の全訳である。原書カバーの袖に記された紹介文によれば、アメリカ自然史博物館で2015年11月から2016年8月まで開催されていた、マイクロバイオームをテーマとした展示会に合わせて制作されたものらしい。展示会はその後、アメリカ国内のみならず国外へもツアーをおこなう予定とのことなので、いずれ日で開催されることもあるかもしれない。 著者ふたりはいずれもアメリカ自然史博物館の学芸員で、ロブ・デサールは比較ゲノム研究での昆虫学が専門、スーザン・L・パーキンズは微生物の系統分類学とゲノム研究が専門だ。 ところで、マイクロバイオームという言葉になじみのない方も多いだろう。だが腸内細菌とか腸内フローラなら耳にしたことがあるのではないか? 健康品や医療関係の情報で近ごろ注目されるようになって

    『マイクロバイオームの世界 あなたの中と表面と周りにいる何兆もの微生物たち』 - HONZ
  • えっ!ウチと違う!? 『お雑煮マニアックス』 - HONZ

    初のお雑煮のムックである。著者の粕谷浩子さんは、お雑煮が好きすぎて、各地のべ比べレトルトパックの会社を立ち上げた情熱の人だ。その道のりは我々が想像するより、ずっと険しいものだった。お雑煮はレストランなどに無いため、粕谷さんは「地元の人と銭湯で仲良くなる作戦」などを駆使して、奥深いお雑煮の世界を丹念に調べていくしかなかったのだ。47都道府県のお雑煮を一挙に紹介した書は、そんな努力が結実した日文化史上の記念碑的作品である。 私はイベントや出版企画をまとめる仕事をしていて、その過程で、家でゴキブリを飼育してべる女性や、古墳が大好きなシンガーソングライターさん、鉄工所を営むかたわらエスカルゴの養殖をされている方など、多くの面白い方々とお会いしてきた。粕谷さんは、その中でも対象物に向けられた情熱のピュアさ加減が、ほんとに、ズバ抜けた人なのだ。初対面で、これは普通じゃないと私は感じた。

    えっ!ウチと違う!? 『お雑煮マニアックス』 - HONZ
  • 『進化の教科書 第1巻 進化の歴史』 進化入門の決定版 - HONZ

    ハーバード大学やプリンストン大学をはじめ、全米200以上の大学で採用さている教科書『Evolution: Making Sense of Life』の邦訳3分冊の第1巻である。「教科書」といっても、書は議論の余地のない事実が淡々と積み上げられた退屈なものではない。原著者は『ウイルス・プラネット』等で知られる大人気サイエンスライターのカール・ジンマーと『動物たちの武器』のモンタナ大学教授ダグラス・J・エムレンであることからも分かるように、科学読み物としての楽しさを保ちながら、確かな知識を与えてくれる内容となっているのだ。またAmazon.comでは『Evolution』の価格は12,000円以上と高価だが、この第1巻はフルカラーの図を多く含みながら、1,680円(税別)だというのだから買うしかない。さらに、邦訳者の1人には、『化石の生物学者』の著者であり『ネアンデルタール人は私たちと交配し

    『進化の教科書 第1巻 進化の歴史』 進化入門の決定版 - HONZ
  • 『ブルマーの謎 <女子の身体>と戦後日本』ブルマー教授が出来るまで - HONZ

    『ブルマーの謎』は、最近ではすっかり見ることもなくなった女子体操服の「ぴったりブルマー(密着型ブルマー)」をテーマにした一冊である。長年研究を続けた社会学者が手掛けており、ブルマー研究の決定版とも言える内容だ。しかしこの画期的な研究が始まったのも、ゼミ生たちとの苦し紛れのやり取りから生まれた「偶然の産物」であったという。当時、山ゼミに所属していた小松聰子さんに、ブルマー教授誕生までの秘話を寄稿いただいた。(HONZ編集部) 今、私の中では嫉妬の炎が燃えまくっている 。そう、我らがブルマー教授こと山先生がとうとうブルマーを出されたのだ。これが身悶えずにいられようか。 なぜ、私がこんなにもムズムズとしているのか、それを説明するためには15年以上も前に時計の針を戻さなくてはならない。私は書の著者、山雄二教授のゼミに所属する大学3回生であった。卒業グループ研究のテーマを決める打ち合わせの

    『ブルマーの謎 <女子の身体>と戦後日本』ブルマー教授が出来るまで - HONZ
    agrisearch
    agrisearch 2016/12/12
    「これが山本ゼミ・ブルマー研究班誕生の瞬間だったのだ。」
  • 『落葉樹林の進化史』 - HONZ

    著者は米国コネチカット州にあるコネチカット・カレッジという教養大学の生物学教授である。カレッジのある町は北海道の函館くらいの緯度にあたり、ニューヨーク市から東方に車で三時間くらいのところにある。 第1章にあるように、現地の落葉樹林を訪れてみると、太平洋を隔ててはるかかなたにあるのに、似たような緯度にある北海道南部の落葉樹林に実によく似ている。 また文にあるように、教授は日を数回訪れて、特に京都には半年程度ずつ滞在していたので、その折に自然地域や文化的な場所も含めて、日の各地を実際に訪問している。専門の鳥類学分野では、森林の分断化で鳥類が悪影響を被ることをいち早く察知して警鐘を鳴らした一人であり、『サイエンス』誌(1995年)にも寄稿している保全生物学的見地に立つ研究者である。 書の醍醐味は何といっても、著者の視野の広さだろう。落葉樹林を切り口にして、中生代か

    『落葉樹林の進化史』 - HONZ
  • 『衛生害虫ゴキブリの研究』年季入りの本格的ハードコア・ゴキブリ書 - HONZ

    「黒塗りの家庭内ランナー」としてお馴染みの生きもの、ゴキブリ。 たったの一匹が加工品に混入しただけで、ひとつの企業を存続の危機に追いやるほど、この生物は忌み嫌われている。だがはたして、この同居人の実際の姿を知る日人は、いったいどれくらいいるだろうか。 何のてらいもないタイトルの通り、書は、屋内で遭遇する衛生害虫ゴキブリの研究書である。著者は、民間の研究所などで50年以上にわたってゴキブリ研究に従事してきており、ちなみに昭和7年生まれ。そして書には、著者らによる圧巻の研究成果の数々が、これでもかと言わんばかりに詰め込まれている。表紙に描かれたイラストこそゆるふわの脱力系だが、けっして生半可な気分では読了できない格的なハードコア・ゴキブリ書に仕上がっているのだ。 書のページを開くとまず目に飛び込んでくるのが、巻頭カラーグラビアを飾っているゴキブリたちだ。これらはいずれも日の屋内に

    『衛生害虫ゴキブリの研究』年季入りの本格的ハードコア・ゴキブリ書 - HONZ
  • 『一汁一菜でよいという提案』 家庭の料理を初期化しよう! - HONZ

    育では、一緒にべることの大切さ、家族揃って卓を囲むことの大切さが説かれます。けれど、商売をやっている家庭や、親が働いている家庭では、一緒に卓を囲めないのは当然で、親が用意した汁を自分たちで温めて、子どもだけでべる。そんな家庭はたくさんあると思います。それでも、大切なものはもうすでにもらっています。それが手作りの料理です、愛情そのものです。だから、別に一緒にべることばかりが大切じゃないのです。 だれもいない夜、両親の帰りが遅いとき、鍋焼きうどんの材料が全部入った皿が台所に用意してあったら嬉しいでしょう。うどん、鶏肉、かまぼこ、しいたけ、ねぎの切ったものが入っています。一人用の土鍋に入れて、だし汁を張って火にかけて煮立てて、うどんを煮込みます。熱々の鍋焼きうどんをテレビの前で一人でべた夜は、私にとって大切な思い出です。 このくだりを読んで、胸がじんとして、涙が出てしまった。しばら

    『一汁一菜でよいという提案』 家庭の料理を初期化しよう! - HONZ
    agrisearch
    agrisearch 2016/11/17
    「作者:土井善晴」