山が多い日本では伏流水や雪解けの流れが古くから田畑を潤す。この農業用水などを活用した小水力発電が増えている。省スペース、低コストで建設でき、維持管理の人手もほとんどかからない。秋田県では農地改良に活用されるほか、「農業用水をエネルギーに変えたい」という「夢物語」を一人の民間人が実現した。水力発電は巨大ダムだけではなく、身近な流れを活用する時代を迎えた。 農家の負担軽減に山形・秋田県境にそびえる鳥海山は「出羽富士」と称され、初夏でも山肌を覆う残雪から、雪解け水や伏流水が大小無数の川に流れ込む。その一つ、秋田県にかほ市の白雪川から引き込んだ金浦温水路は、稲作には水が冷た過ぎるため、水路を広く浅くして多くの段差を設け、日差しや空気で水温を上げている。 広い温水路の起点にある畑野小水力発電所の発電機(中央)と制御盤を囲う上屋(右)=秋田県にかほ市 県が総工費1億2千万円で建設し、同市土地改良区が運
