自分の音楽を信じてくれる人に誠実であること、聴き手と痛みも喜びも分かち合える嘘のない歌を紡ぐこと、そんな歌をずっと歌って生きていくこと……きっとカネコアヤノが音楽家として大事にしているのは、こういうことじゃないだろうか。4月14日にリリースされた新作『よすが』を聴いてそんなことを思った。 前作『燦々』(2019年)以降、カネコアヤノへの注目は加速度的に高まっている。さまざまなフェスやイベントで確かな存在感を放ち、音楽家やアーティストやクリエイター、そしてリスナーから厚い支持を集めるようになっていた。だからこそそのキャリアにおいて、今回のアルバムはこれまでの作品以上に重要な意味を持っていたはずだ。リスナー層をさらに拡大するべく、キャッチーで開けたアルバムを作ってもよかったし、作れたはず。しかし、結論から言うとカネコアヤノはその道は選ばなかった。 新型コロナウイルスの影響に加えて人生の転機も重
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