タグ

ブックマーク / dain.cocolog-nifty.com (68)

  • 東大・京大で『勉強の哲学』が一番売れている理由「勉強するとキモくなる」

    「勉強とは何か?」を根源的に考えた一冊。一言なら「勉強とは変身である」になる。 巷に数多のノウハウではない。意識高い系の自尊心をくすぐるではない。勉強するとはどういうことか、勉強することで何が起きるのかを、言語と欲望の問題にまで踏み込み、掘り下げる。 議論のバックグラウンドに、フーコーの権力システム、ドゥルーズ&ガタリの脱コード化、さらにウィトゲンシュタインの言語観をも引き込んでいるが、咀嚼しきった上で原理的に考え抜く、その知的格闘が面白い。 勉強すると何が起きるのかを考える際、勉強する「前」はどうなっているかに着目する。自分が話す(=考える)言葉やコードは、そのときに自分がいる環境に依存しているという。半径5mの仲間や学校、家族、手元の端末のSNS、マスコミ、社会などから、「こうするもんだ」というコードにノッて話し、考え、行動する保守的な状態だという。 それが、勉強することにより、慣

    東大・京大で『勉強の哲学』が一番売れている理由「勉強するとキモくなる」
  • 『土と内臓』はスゴ本

    人体をトポロジー的に見ると、消化器官を中心とした「管」となる。もちろん胃や腸には逆流防止のための弁が備えられているが、位相幾何学的には「外」の環境だ。 この見方を推し進め、内臓をぐるりと裏返しにしてみる。くつ下を裏返すように、内側を外側にするのだ(このグロい思考実験は、クライヴ・バーカーのホラー小説でやったことがある)。裏返しにされた小腸や大腸を見ると、そこに植物の根と極めてよく似た構造と営みを見出すことができる。「水分や栄養素を吸収する」相似だけでなく、そこに棲む微生物との共生関係により、健康や成長面で重要な物質がやり取りされている。根と腸は、微生物とのコミュニケーションや分子取引をする市場なのだ。 書の結論は、微生物を中心とした人体の腸と植物の根の相似型であり、これに頭をガツンとやられた。ばらばらに得てきた知識が書で一つにまとまるとともに、わたし自身が囚われていた先入観がぐるりと―

    『土と内臓』はスゴ本
  • この本がスゴい!2016

    人生は短く、積読山は高い。 せめては「死ぬまでに読みたいリスト」を消化しようとするのだが、無駄なあがき。割り込み割り込みで順番がおかしくなる。読了した一冊に引きずられ、リストは何度も書き直される。 重要なのは、「あとで読む」は読まないこと。「あとで読む」つもりでリツイート・ブックマークしても読まないように、あとで読もうと思って読んだ試しはない。だから、チャンスは読もうと思ったそのときしかない。実際に手にとって、一頁でも目次でもいいから喰らいつく。勢いに任せて読みきることもあれば、質量と体力により泣く泣く中断するもある。かくして積読山は標高を増す。 ここでは、2016年に読んだうち、「これは!」というものを選んだ。ネットを通じて知り合った読書仲間がお薦めするが多く、それに応じてわたしのアンテナが変化するのが楽しい。わたし一人では、数学経済学歴史学、進化医学や認知科学の良を探し出せな

    この本がスゴい!2016
  • 『ナチスドイツと障害者「安楽死」計画』はスゴ本

    「役に立たない人を安楽死させよう」という世の中になるなら、それはどんなプロセスを経るか? これが、嫌と言うほど書いてある。ヒトラーの秘密命令書から始まったT4作戦[Wikipedia]を中心に、医師が「生きるに値しない」と選別・抹殺していった歴史が緻密に書かれている。 対象となった人は多岐に渡る。うつ病、知的障害、小人症、てんかんに始まり、性的錯誤、アル中、反社会的行動も含まれていた。こうした人びとが何万人も、ガス室に送られ、効率的に殺されていった。ユダヤ人の迫害にばかり目が行っていて、書を読むまで、ほとんど知らなかった自分を恥じる。書は、不治の精神病者はガス室へ『夜と霧の隅で』で教えていただいた(hachiro86さん、ありがとうございます)。 問題は、ナチスに限らないところ。優生学をナチスに押し付け断罪することで、「消滅した」という図式にならない。社会システム化された「安楽死」(と

    『ナチスドイツと障害者「安楽死」計画』はスゴ本
    akihiko810
    akihiko810 2016/10/20
    ブーヘンヴァルト収容所の所長のこの言葉も負けず劣らず強烈だ「うちの収容所に病人は一人もいない。健康な人と死人だけだ」
  • 村上春樹の読書案内&創作教室『若い読者のための短編小説案内』

    もはや「若い読者」ではないし、熱心な村上春樹の読者でもないが、この一冊から得るものは多かった。理由はみっつある。 ひとつは、なぜ村上春樹が短編小説を書くのかを、確認できたこと。もうひとつは、小説を読む喜びの根っこがどこにあるのかを、再確認できたこと。そしてみっつめは、小説を書く秘訣のうち、最も重要なものが何であるかについて再確認できたこと。すべてここで明かすつもりだが、聞いてしまえばなんてことのない。だが、そこに至るまでの過程こそが、喜びであり肝なのだ。これ、「人はなぜフィクションを必要とするのか」にもつながる話。 書は、以下の作家から各一作品ずつ短編小説を挙げ、読み手と書き手の両方の視点から読み解いた読書案内。米国の大学での講義内容を元にしているため、しゃべり言葉になっており、とても読みやすい。また、あらすじを紹介しつつ進めているため、これらを読んでなくても問題なく楽しめる。(ただし、

    村上春樹の読書案内&創作教室『若い読者のための短編小説案内』
  • 『クオ・ワディス』はスゴ本

    面白かった! これは、最高に面白い小説になる。そして、誰にでもお勧めできる夢中小説であり徹夜小説であり試金石ならぬ試金となる。(幸福な)未読の方は、だまされたと思って読んでほしい。そして、もし当に騙されたと思ったならば、これを凌駕もしくは匹敵する作品を教えてほしい。まさにその作品名は、検索できないものだから。 舞台は頽廃の都ローマ、暴君ネロの治世。キリスト教徒の娘リギアと、エリート軍人ウィニキウスとの恋愛を縦軸に、粋なトリックスターであり審判役もするペトロニウスとネロの権謀術数、弾圧されるキリスト教が大化けして世界を変革する様相が、ドラマティックに描かれている。絶望と狂気、快楽と歓喜が、圧倒的に伝わる物語となっており、人の魂の最上級の姿と、人の欲望の最も醜い貌の、両方を同時に見ることができる。 さらに、豪華贅沢三昧の宮廷イベントや、読むのをためらうほど身の毛もよだつ残虐シーンや、劫火と

    『クオ・ワディス』はスゴ本
  • 人生の役に立って欲しくない『毒の科学』

    「部屋とワイシャツと私」の2番について、と語り合ったことがある。 期待と不安が混じりあった新婚ほやほや感が、甘い思い出とシンクロしてええなぁ……と思っていたら、2番だった。オンナの勘は鋭いのよと前置きしてから、「あなた浮気したら、うちでの事に気をつけて」と警告する。なぜなら、「私は知恵を絞って、毒入りスープで、いっしょに逝こう」だから。 ほとんどの毒は臭いや味で気付くだろうし、微量で死に至らしめるようなものは、そもそも手に入らないだろう……と言ったら、「だから知恵を絞るんよ」と返された。曰く、ホームセンターで手に入るような化合物は、死ぬにはいいけどスープには適していないという。経口摂取ならキノコや魚類がいいそうな。く詳しいねと言ったらニッコリされた。 半信半疑で『毒の科学』を読んだら当だった。もう一度言う、の毒の知識は物だった。 『毒の科学』は、人にとって「毒」とは何かという定

    人生の役に立って欲しくない『毒の科学』
  • この本がスゴい!2015

    「いつか読む」は一生読まない、いつ読むの? 人生は短いのに、読みたいが多すぎる。残り全部を注いでも、いまのリストは読みきれぬ。己の変化を確かめる、再読リストも増えている。今際に後悔しないため「読んでから死ね」が優先なのに、積まれるスピードさらに上。を通じて出会った人から教わったがまたスゴい。オフ会は危険な場、積読山がマシマシだ。それでも読むしかない、それも今しかない。 「このがスゴい!2015」は、この「今」を積み上げた一年間からピックアップしたもの。ネットや読書会を通じてお薦めされた作品もあれば、書店や図書館で「呼ばれた」もある。非常に愉しいのは、リアルで話し込んでいると、記憶の底からリレースイッチのようにタイトルが"発火"してゆくところ。完全に忘れてた、思いもよらない作品につながってゆく様は鳥肌もの。 世界は対話で拡張する。わたしが知らないスゴを"発火"させる、あなたが凄い

    この本がスゴい!2015
  • お金、セックス、戦争、そしてカルマ『西洋の欲望 仏教の希望』

    仏教の智慧から、現代をほぐした一冊。 巨大な問題を扱っていながら、わたし個人の「つらさ」を見透かされているように感じる。さらに、自分の中の仏教的な見方に気づくというよりも、むしろ、今までの知的探索のアプローチと重なっていることを思い知らされた。 資主義と格差社会の根源的な理由や、承認欲求・応答システムとしての性文化、持続可能な戦争のモチベーションなど、現代社会の問題を「仏教」というレンズを通して捉え直し、解きほぐす。「十分なお金を持つとはどういうことか?」「ブッダは遺伝子組換え品を認めるか?」など具体的な問いを立て、「空」、「無我」、「縁起」、「カルマ」といった仏教思想の観点で斬る。すると、そこに潜む「dukkha(苦)」が露になる。 残念ながら、こうした諸問題を一気に解決する手はない。ただし、わたしがどんな姿勢で向き合えばいいかは、分かる。イデオロギーや文化により常識化されたアタマか

    お金、セックス、戦争、そしてカルマ『西洋の欲望 仏教の希望』
  • 苦しまないと、死ねない国『欧米に寝たきり老人はいない』

    せめて、死ぬときぐらい安らかに逝きたい。 だが、現代の日では難しいらしい。老いて病を得て寝たきりになっても、そこから死にきるためには、じゅうぶんな時間と金と苦しみを必要とする。寝たきりで、オムツして、管から栄養補給する。痰の吸引は苦しいが、抵抗すると縛られる。何も分からず、しゃべれず、苦しまないと死ぬことすらままならない。 タイトルの「欧米に寝たきり老人はいない」理由は、簡単だが単純ではない。というのも、「寝たきりになる前に(延命治療を拒否して)死ぬから」が答えであることは分かっていても、なぜ「延命治療を拒否する」ことが一般化しているか明らかでないから。書によると、数十年前までは日と同様に、終末期の高齢者に対し、濃厚医療が普通だったという。欧米では、これが倫理的でないという考えが広まり、終末期は「べるだけ・飲めるだけ」が社会常識になった。金の切れ目が命の切れ目。高齢化社会に伴う医療

    苦しまないと、死ねない国『欧米に寝たきり老人はいない』
  • お尻を理解するための四冊 【紳士限定】

    女は尻だ。 何度でも言う、女は尻が肝心だ。もちろん、おっぱい山頂への関心は否定しないが、お尻のあわい目への興味と比べるまでもない。なおかつ、男はおっぱい星人であるとともにオシリストにもなれる。お尻を賛美することは、おっぱいを否定することにならないのだ(逆もまた然り)。 女の尻のすばらしさについては、室生犀星が「蜜のあわれ」で力説している。人間でも金魚でも果物でも、円いところが一等美しいのだという。そして、人間でいちばん美しいのは、お尻だと一気呵成にヒートアップする。太字化はわたし。 「人間では一等お尻というものが美しいんだよ、お尻に夕映えがあたってそれがだんだんに消えてゆく景色なんて、とても世界中をさがして見ても、そんな温和しい不滅の景色はないな、人はそのために人も殺すし自殺もするんだが、全くお尻のうえには、いつだって生き物は一匹もいないし、草一だって生えていない穏やかさだからね、僕の友

    お尻を理解するための四冊 【紳士限定】
    akihiko810
    akihiko810 2015/03/18
    。「アナル全書」
  • 人生が捗るトルストイ『戦争と平和』

    忘れっぽいので書いておく。わたしは死ぬし、あなたも死ぬ。なぜなら生きてるから。わたしの命は時である。時は、微分すると今になり、積分すると人生になるから。 では、この死ぬまでの時は、何のためにあるのか? それは、幸せになるため。人生は、それを使って幸せになるためにある。小説の最高傑作として掲げられるトルストイ『戦争と平和』には、この究極のライフハック「幸せになる方法」が書いてある。 いきなり答えを書く。「なぜ生きるのか」に衝き動かされ、自分探しに翻弄された主人公ピエールがたどり着いた結論だ。たえず探し求めていた「人生の目的」から解き放たれ、自分が完全に自由であることに気づく場面で、エピローグの直前にある。 ことばではなく、理屈ではなく、直接の感覚で、もうずっと前にばあやから聞かされていたことを悟ったのだ。それは、神さまはほらこれですよ、ここですよ、どこにでもいますよ、ということだった。 これ

    人生が捗るトルストイ『戦争と平和』
  • ウィトゲンシュタインの読み方『哲学探究』入門

    ウィトゲンシュタインを読むのは、認識の仕様が知りたいから。 中二病の宿題を終わらせる『論理哲学論考』で、彼がやりたいことを知った。日常言語を用いる限り、数学のように論理を引き出して直接扱うことは難しい。だから、せめて「ここまでは語り得ますよ」という限界を示すのだ。そして、言語の誤謬を避けるため、厳密に論理的なシンタックスに則った記号言語を構築してゆく。 これをリバースエンジニアリングすると、認識のモデリングになるのではないか、というのがわたしは目論み。人であれAIであれ、知性はどんなやり方で(自分も含めた)世界を理解しているのかが分かれば、すなわち意識とは何か、そして「私とは何か」に近づけるんじゃないかと。アフォーダンスや数学、認知科学の近辺をウロウロ読んでいる動機は、これなのだ。 ただし、『論考』のプロセスの論理学は厳密だ。完全な純粋さを目指すあまりとっかかりがない。plainすぎて摩擦

    ウィトゲンシュタインの読み方『哲学探究』入門
  • コンサルタントはこうして組織をぐちゃぐちゃにする『申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。』

    「嘘つきは経済学者の始まり」という諺があるが、コンサルタントも入れるべき。 中の人として働いたことがあるので、その手法は分かってる(まとめ:[そろそろコンサルタントについて一言いっておくか])。だから書は、徹頭徹尾、黒い笑いが止まらない。騙される幹部が悪いのだが、振り回される社員はたまったものではない。ファームであれジコケーハツであれ、理論武装を「外」に求める人は、予習しておこう。あるいは、コンサルティングを「説得の技術」と捉え、逆にそこから学ぼう。 書は、マジシャンが種明かしするようなもの。コンサルタントの方法論である「適応戦略」や「最適化プロセス」「業績管理システム」は、役に立たないどころか、悪影響にもなると暴きたてる。著者は経営コンサル業界で30年も働いて、いいかげんこの「お芝居」にウンザリして、懺悔の名を借りた曝露を出したという。その具体例が生々しい&おぞましい&あるある。

    コンサルタントはこうして組織をぐちゃぐちゃにする『申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。』
  • 女は尻だ。異論は認めない『FRaU 2014/3』

    女は尻だ。異論は認めない。 女は尻だ。異論は認めない。 すべては尻であり、尻にある。美しさ、強さ、優しさを兼ね備えた、あらゆる魅力と質の表象であり、かつ全人類の故郷であり桃源郷であり、世界でいちばん穏やかで不滅で争いのない場所である。君に、おっぱい山頂への征服欲があることは理解できる。だが、そこは四足から二足へ移行する際、成熟のバロメーターとして採用された代替品だ。山頂を踏破したら清水で潤すべく、谷へ降り蟻の門渡りを目指せ。お尻を賛美することは、おっぱいを否定することにならない(逆もまた然り)。 この真理に全力を注いでいるのが、『FRaU』3月号だ。「おしりは女のバロメーター!おしりが上がると人生が上がる!」とばかりに、みんなの大好きな魅惑のお尻たちをビシバシ紹介する。尻爛漫の春なのだ。それだけでなく、お尻はダイエットの勘所であり、美尻を目指すトレーニングがキレイにも痩せにもつながること

    女は尻だ。異論は認めない『FRaU 2014/3』
    akihiko810
    akihiko810 2014/03/01
    男も尻だぞ。「男尻の描き方」というデッサン本が今アツイらしい。昨日タモリ倶楽部でやってた
  • 池澤夏樹が選ぶ世界文学10作品『世界文学を読みほどく』

    ネットのおかげで人生のネタバレが捗ったように、書のおかげで文学のネタバレが進んだ。 借金で詰んだ人生とか、仮想敵に依存したフェミニストとか、自分で体験することなくセミリアルタイムで眺められるネット万歳。同様に、自分で苦心して読むことなく世界文学の10作品を俯瞰できる。高尚化してた文学を下品なメロドラマに堕としたり、世界を束ねる“データ・ベース”に喩えたり、やっぱりフォークナーは「あらすじ」に圧縮できないなと納得する。この一冊だけで、読んでいないについて堂々と語ることができるだろう。 ラインナップは次の通り。 スタンダール『パルムの僧院』 ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』 トルストイ『アンナ・カレーニナ』 トウェイン『ハックルベリ・フィンの冒険』 メルヴィル『白鯨』 マン『魔の山』 ジョイス『ユリシーズ』 フォークナー『アブサロム、アブサロム!』 ガルシア=マルケス『百年の孤独』

    池澤夏樹が選ぶ世界文学10作品『世界文学を読みほどく』
  • 出版不況の解法として読む『本の声を聴け』

    棚を編集する」という仕事を見ていると、いま出版業界が直面している問題を解くヒントが見える。それは次の二点に集約できる。 年百冊読む一人よりも、年一冊読む百人の“パイを増やす” そのために、最大公約数の書棚に人を集めるよりも、人が集まる場に応じた棚をあつらえる 自転車操業な台所事情と、どの書店でも似たような書棚になっていることは、同じ根っこにある。年々膨れ上がる出版点数の実体は、前のの赤字を後ので埋める「自転車操業」が作り出した現象だ。結果、売場に並んでいる時間は相対的に短くなり、少しでも「動きが悪い」=「売れない」と判断されたは、取って代わられる。 この返のサイクルが早すぎるため、棚づくりまで手が回らず、取次からパターン配されたものを「並べるだけ」の場所になっているのが、今の書店だ。出版点数が多い割に、似たようなばかり並び、棚の魅力が失せている原因は、ここにある。屋の棚か

    出版不況の解法として読む『本の声を聴け』
  • 鬱 に 効 く 映 画 『シネマ・セラピー』

    ダウナーなときは寝るに限る。三時に覚めたらどうするか? アルコールは感情の増幅剤だから控える。集中しない(したくない)ので、はお守り代わり。図鑑や手記など、断片で読めるものにして、うっかり“何かを思い出す”ことのないよう、小説は避ける。岩波青か、講談社学術文庫がいい、『自省録』『ガリア戦記』『言志四録』が鉄板。考えないための読書。 ところが書は、映画を提案する。精神科医が選んだ、適切な映画を観ることで、「死にたい」気持ちがほぐれてくるという。当か?意識を向ける必要がある映画は、ダウナーなときには向いていないと思っていたのだが……著者によると、自殺を客観的に捉え、遺される人を考えたりする上で新たな視点を提示してくれるのが、これらの映画なのだと。 著者は精神科医。自殺の実態や危険因子を解説したあと、自殺にまで追い詰められた人の心理をレポートする。さらに、「自殺したい」と打ち明けられたらど

    鬱 に 効 く 映 画 『シネマ・セラピー』
  • わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる: スローセックス宣言

    宣誓!今日からは、スローセックスを実践します。射精だけを目的としたあわただしいセックスをしないことを誓います。たっぷりと時間をかけて、おたがいに満足のいくセックスを目指します。 を読んでこんなに反省したのは初めて。おかげで目が醒めた、悪いのは全部わたしだ。男子必読の一冊(女子は読んじゃダメ)。 ■蔓延するジャンクセックス ジャンクセックスとは、男性位の、射精だけを目的としたセックス。平均20分たらずのお粗末な行為で、お互いのカラダを使ったオナニーのようなもの。そのため、 「一度もイッたことがない」 「彼のことは好きだけどセックスは気持ちよくない」 「セックスが億劫」 「セックス嫌い」 「セックスよりも寝かせてほしい」…がホンネだという。セックスは挿入でありピストン運動であり射精であるというAV幻想が、セックスをジャンク化しているそうな。ううむ、耳に痛い。性春時代のリビドーは、チョコボー

    わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる: スローセックス宣言
  • 先生の赤本「入門 いじめ対策」

    一席ぶつのもいいが、具体的に動く。 子どもが通う学校で、「ウチは大丈夫か?」と呼びかけやアンケートが実施されているそうな。大仰すぎると水面下に潜るぞーとは思うが、やらないより○。わが家では、寝しなに子どもに語ったり、夫婦でしみじみ話したり、参考書で「予習」してる。天下国家やゆとり教育の荒廃を嘆いても無駄、具体的に動いている。そこで見つけた、先生にとっての赤を紹介しよう。 小・中・高のいじめ事例から自殺予防までを扱った一冊。「入門」と銘打つ150p.足らずのだが、中身はかなり充実しており、関連書籍の紹介は膨大といっていい。入門というより、むしろエッセンスだな。類書より優れているのはII章、「いじめの緊急対応」になる。今のいま、いじめの対応について悩んでいる先生方は、II章から読むべし。 とはいっても、特別な手法があるわけではない。「見守り」「個別指導」「保護者の面談」などは、容易に想像

    先生の赤本「入門 いじめ対策」