<死刑囚や司法関係者に取材を重ねてきた僕は、日本では冤罪がとても多いと実感している。和歌山カレー事件の犯人は林眞須美死刑囚だと思っているあなたには『マミー』を観て衝撃を受けてほしい> 今年9月26日に再審公判の判決が言い渡される袴田事件は、日本の刑事司法においては例外的な冤罪事案だとあなたは思うだろうか。僕はそうは思わない。オウムの死刑囚たちとの面会をきっかけに日本の刑事司法について考え始めた20年前から現在に至るまで、多くの死刑囚や司法関係者に取材を重ねてきたが、冤罪はとても多いと実感している。 理由の1つは、否認すると勾留が続く「人質司法」や機能していない再審制度、検察側が不利な証拠を提示しなくてもよいなどの司法制度の欠陥。もう1つは、検察や裁判所は決して間違えないとする無謬(むびゅう)性への強固な信仰と、メンツや責任回避を最優先とする組織論がとても強いこと。そして、悪は決して許さない