【ネタバレありレビュー】『レ・ミゼラブル』“花の都”の現実──痛みと絶望の渦中で生まれた、現代の「民衆の歌」 SYO ※本記事には映画『レ・ミゼラブル』のネタバレが含まれます。 第72回カンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞、第92回アカデミー賞で外国語映画賞にノミネート。2019年から2020年にかけて、『パラサイト 半地下の家族』(19年)と映画賞を競い合った力作が公開を迎える。現代のフランスを舞台に、“民衆の叫び”を描いた『レ・ミゼラブル』(19年)だ。 ミュージカル映画の原作にもなった、ヴィクトル・ユゴーの小説と同じ名を冠したこの映画は、原題が意味する「悲惨な人々」をまさしく体現した一作。パリ郊外のモンフェルメイユで起こった事件が、街にくすぶる民衆の怒りに火をつけていくさまを、鋭利なタッチで抉り出す。 フランスがサッカーのワールドカップで優勝した2018年夏。犯罪多発地区であるモンフェル
