日本の製造業の研究からイノベーションの本質を解き明かした「知識創造理論」や日本軍の敗戦の過程の共同研究「失敗の本質」で知られる経営学者、野中郁次郎氏は企業の経営者に大きな影響を与えてきた。しかし、野中氏が世界のITエンジニアに影響を与えていることはあまり知られていない。80年代の野中氏と竹内弘高氏の論文から「スクラム」というソフトウェア開発の方法を生み出したジェフ・サザーランドが近く来日することを機に、その流れを紹介したい。 なぜ野中理論は事あるごとに話題になるのか 「都庁は敗戦するわけにはいきませんから」 そう語って小池百合子東京都知事は、『失敗の本質―日本軍の組織論的研究』を、就任早々の会見で自身の座右の書として紹介した。このニュースがメディアに流れると、書店には小池氏推薦という触れ込みで、同書がベストセラーコーナーに積み上げられた。 『失敗の本質』は野中氏を始め複数の研究者による共著