小学館のパーティは、立錐の余地もない混雑ぶりで、ようやく中野晴行氏に会い、それから回遊しようと会場の半分まできたら、中央前のテーブルから声がかかった。ベレー帽をかぶり手塚風になった島本和彦さんだった。 僕が横に座ると、「さああ、行きましょうか!」と腕まくりをして、いきなり島本節の『あしたのジョー』論が熱く始まった。面白かったし、その通りだと思うので感心して(たまに突っ込みつつ)聞いていたが、あの有名なラストシーンを読んだときの印象については、小学生だった島本さんと、すでに20歳を過ぎていた僕では若干異なった。 そういうと、島本さんは僕をまじまじと見ながら「ダメですかあ、説得されませんかあ」と残念そうにいうので、「いや、全然違和感ないよ、それは島本さんの読み方として正しいんじゃない?」といったのだが、納得できないようだった。 「これを聞いたヒトはみんな、負けたあ~ってがっくりするんですよお」