素粒子論研究室の改装工事も終盤になりました。木曜日には工事の騒音を避けて、物理学・数学・天文学部門の事務室のならびにある副部門長の居室で、こっそり研究をしていました。 部門長が現れて、「ニュートリノが光より速いって聞いたかい。」と言います。 持っているのはニューヨーク・タイムズ紙の記事。速報論文や研究所のプレスリリースでないところが普通ではありません。 「CERNからグランサッソに打ったニュートリノが60ナノ秒早く着いたって言うんだ。」 「誤差はどのくらいですか。」 「10ナノ秒と書いてある。」 「距離にして3メートルか。GPSを使えば可能ですね。」 後で聞いた話では、他にも誤差の因子があるので、距離については20センチメートル程度の精度が必要だそうです。 「超新星1987Aまでの距離ってどのくらいでしょうか。」 1987年に観測された超新星Aからのニュートリノは、可視光が地球に届く約3時