高速増殖実験炉「常陽」の事故とその重大性 小林圭二(元京都大学原子炉実験所講師) 昨年(2008 年)の原子力学会年会、14 の分科会に分かれた広範かつ膨大なプログラム の中に、「ナトリウム冷却型高速炉の原子炉容器内観察・補修技術の開発」という地味な タイトルが含まれていた。特に注意はしていなかったが、直前に送られてきた予稿集を読 んで、「おや、これは何だろう」と思う記述があった。「計測線付実験装置と回転プラグと の干渉」という短い記述である。胸騒ぎを覚えて当日の口頭発表を聞きに行き、そこで高 速増殖実験炉「常陽」で事故があったことを初めて知ったのである。 常陽は茨城県大洗町にある熱出力 14 万キロワットの実験炉で、発電設備は備えてない。 現在はもっぱら将来の高速増殖炉用燃料や材料の開発のための照射試験用原子炉として使 われている。 「常陽」の炉心は、「もんじゅ」と同じような六角形の燃