その人は外出すると、行きと帰りで違う道を通るといいます。 ちょっとした景色の変化の中から、創作につながる発見はないか探すというのです。 人間国宝の井上萬二さん。佐賀県が誇る陶磁器・有田焼の“白磁”の第一人者です。 純白の輝きが持つ美しさにこだわり続けてきました。 94歳になっても、衰えない創作意欲はどこから湧いてくるのでしょうか。 (NHK佐賀放送局 藤岡信介 記者) 白磁の新作 テーマは「麦」 東京・銀座の中心街。 6月下旬、ランドマークとなっている時計塔のあるギャラリーでは、 井上萬二さんの新作を集めた個展が1週間あまりにわたって開かれていました。 展示されていたのは、白を基調とする有田焼の「白磁」。 派手な装飾は施さず、器やつぼ、そのもののかたちで、りんとした美しさを体現しています。 萬二さんの代名詞とも言われる白磁は、 部屋の照明による明暗さえ取り込んで、作品の表情のひとつにしてい