「観戦記者」という職業を知っているだろうか。将棋・囲碁専門の記者のことで、主に新聞や雑誌に掲載される対局のレポートを書く。解説だけでなく、対局者や控室の様子、後日談が盛り込まれ、棋士の勝負観や人生観が浮きぼりになる。棋士の内面に迫るため、取材を重ねるうちに深い付き合いになりやすい。 今回は現役最長老の85歳、高橋呉郎さんにインタビューした。高橋さんの観戦記者生活は45年に及び、八大タイトルのひとつ、棋王戦を中心に執筆。体調を考慮して仕事を絞っているものの、今年6月にも観戦記を書き上げた。 戦前から無邪気に楽しんだ将棋や文壇の将棋会の光景。そして大棋士たちに見る、藤井聡太ら若手が時代を築くために必要なものとは何か。 ◆◆◆ 男の子の8割が将棋のルールを知っていた時代 将棋界の実力制タイトル戦が始まったのは、1935年のことだった。江戸時代から終身制だった「名人」の称号は、世襲名人制から実力で