その学生は、世間話には興味がなかった。 「先生は『金正日将軍の歌』を聞いたことがありますか?」。彼は尋ねてきた。「あります」。私は慎重に答えた。「どう思いますか」と、また聞かれて、私は固まってしまった。 馬鹿正直に答えては話にならない。彼は北朝鮮の平壌科学技術大の学生だし、私は彼の教師だ。学生も教師も囲われた敷地に隔離され、授業から活動から?時間監視されているのだから。 「私たちアメリカ人には国歌があるの」。私は答えた。「その歌は、あなた方にとっての国歌のようなものだと思うから、敬意を持ってるわ」 他の学生たち2人は硬い表情で黙り込んでいる。1人がたまらずサッカーの話題を持ち出したが、彼は続けた。「国会って、どういうものですか」 「どの国会?」。私はうろたえた。「アメリカ合衆国議会のこと?」「どこでもいいんです。先生はアメリカ人だから、アメリカの仕組みを教えてください」 私は深呼吸をして、
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