昨年7月に封切られるや、少ない上映館ながらじわじわと世間に浸透し、終わってみれば2006年を代表するアニメーション映画となった『時をかける少女』。だが、その公開時期は、『ゲド戦記』や『ブレイブストーリー』といった大作とぶつかる厳しいものだった。それをどう覆し、昨年度の映画賞を総なめにするまでに至ったのか。同作のプロデューサー、マッドハウスの齋藤優一郎氏と音楽プロデューサー・岡田こずえ氏に宣伝戦略を聞いたところ、それは実にシンプル極まりないものだった。 テレビとタイアップとか、大規模な宣伝戦略は眼中になかった ――映画公開に向けて最初に立てられた宣伝戦略は? 齋藤 : この作品は小さくても本当の輝きを持つ良品っていうことで「小品」っていう言い方をしているんですけど、300館での上映やテレビとのタイアップが必須であるとかみたいな考え方を作品作りのベースにはしていなかったんです。基本的には、良質