明治20年代、〈美術〉に対抗する概念として成立した〈工芸〉。帝展の工芸部門開設と「新古典派」の出現、戦時体制下における桃山復興、占領統治下の工芸の輸出と日米文化交流、昭和30年代の「伝統工芸」の成立など、その歴史的展開を辿る。誕生以来、工芸の存立を支えてきた制度や価値体系をてがかりに、近代ナショナリズムとの関係を問い直す。 プロローグ 工芸における「ナショナリズム」と「伝統」/Ⅰ 「工芸」ジャンルの形成―明治二十年代のナショナリズムを背景として(「工芸」という曖昧なジャンル―「工芸」と「工業」/「美術工芸」の創出―帝国博物館の分類体系/「工芸」というジャンルの成立―明治二十年代/殖産興業から技芸保護へ―帝室技芸員制度/「美術工芸」による国威発揚―シカゴ博とパリ万博)以下細目略/Ⅱ 「帝国」日本における工芸とナショナリズム―アジアへのまなざし/Ⅲ 工芸における「日本的なもの」―国家主義時代の