俳優の池部良が亡くなった。一九一八年生まれだから九十二歳だった。言わずと知れた、と言っても若い人たちは知らない人の方が多いかもしれないが、少なくとも昭和のうちにものごころついた人たちにとって、池部良は昭和を代表する映画俳優だったわけだが、私と妻にとってはここ二、三年、毎月一度は話題にのぼるひじょうにホットな現役の書き手だった。 「銀座百点」という、銀座の名店を紹介するPR誌というのかなんというのか、とにかくそういう月刊の冊子があり、池部良はそこで毎号「銀座八丁おもいで草紙」というエッセイを連載していて、これがもうメチャクチャおもしろい! それで池部良の本を調べてみると『そよ風ときにはつむじ風』という一九九〇年に出版された本を皮切りに、続々出てくる。 「日本文芸大賞も受賞するほどのエッセイの名手であり、」みたいな紹介文もあるが、賞なんかとっていてもつまらないエッセイはいくらでもある。池部良の