「保育所落ちた」が大きな注目を集めて約1ヵ月が経ちました。保育所の拡充は民主党政権時代から遡上に上りながらもほぼ放置されてきたといってよいテーマですが、SNS時代の世論の圧力は、腰の重い政府を動かし始めたようにみえます。 個人的には保育所の拡充にもろ手を挙げて賛成します。その一方で、保育所の拡充は、子育てや働き方といった領域にとどまらず、「世界や社会をどうみるか」という遠大なテーマの一端を示しています。それは、保育所の拡充を含めた出産・育児支援に加えて、社会保障や労働環境の整備といった広い意味での福祉国家のあり方をめぐって、「個人の生活や福利を充実させる役割を誰(どこ)に期待するか」という考え方の対立があるからです。 「個人の生活や福利」は誰が守るかかつて、どこの国や社会でも、高齢になったり、健康を害したり、あるいは何らかの事情で充分働くことができなくなったとき、または最低限の生活水準を維