CA1979 – 動向レビュー:欧州の図書館と電子書籍-従来の公共図書館よ、安らかに眠れ? / ベンジャミン・ワイト,井上靖代(翻訳) 映画評『ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス』 国際日本文化研究センター図書館:江上敏哲(えがみとしのり) 元・京都シネマ:谷口正樹(たにぐちまさき) 関西大学文学部:門林岳史(かどばやしたけし) 1. はじめに ワイズマン(Frederick Wiseman)監督による2017年公開のドキュメンタリー映画『ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス』(以下「本作」)が、2019年5月から日本でも公開された。舞台となった米・ニューヨーク公共図書館(NYPL)は、蔵書数5,500万点、利用人数は年間1,700万人を超える、世界でも最大級の「知の殿堂」である(1)。ニューヨーク市の中心街・マンハッタンの5番街に面した本館は観光スポットとしても有名で、全体では
カレントアウェアネス No.271 2002.03.20 図書館研究所での編集業務を終了するにあたって 図書館研究所長 平野美惠子 関西館設置に伴う組織機構の再編により,これまで図書館研究所で担当してきた本誌の編集業務は,この4月以降,関西館で担当することになりました。したがって,次の272号(6月刊行予定)からは関西館事業部図書館協力課の編集でお届けいたします。 本誌は,図書館に関する最新情報の速報を当館職員に提供して館運営の参考に資することを目的に,昭和54年8月に総務部企画教養課図書館情報室によって創刊されました。それ以後,編集業務の所管は昭和59年4月に参考書誌部に移り,昭和61年6月には図書館研究所に移りましたが,いずれの場合も,本誌の目的や掲載の内容に大きな変更を加えるものとはなりませんでした。 平成元年6月,館外からの強い要望に応えて,それまで当館職員の執務資料であった本誌を
透明で公正なディスカバリーサービスのために 筑波大学学術情報部・松野渉(まつのわたる) 学術情報の統合的な検索を可能とするウェブスケールディスカバリーサービス(CA1772参照)が登場してから既に10年以上が経過している。日本においても,文部科学省が実施した2019年度の学術情報基盤実態調査によれば,国内の約20%の大学図書館がディスカバリーサービスを導入している。 通常,ディスカバリーサービスの導入・運用においては,コンテンツプロバイダー,ディスカバリーサービスプロバイダー,図書館等が利害関係者となるが(E1266参照),その間で検索対象となるリソースの全体像が不確か,メタデータの由来が曖昧など「透明性」が問題となることがある。その対応のため,米国情報標準化機構(NISO)が立ち上げたOpen Discovery Initiative(ODI)は,ディスカバリーサービスの透明性向上のため
CA1968 – 映画評『ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス』 / 江上敏哲, 谷口正樹, 門林岳史 欧州の図書館と電子書籍-従来の公共図書館よ、安らかに眠れ? ボーンマス大学知的財産権政策・管理センター:ベンジャミン・ワイト 獨協大学経済学部:井上靖代(いのうえやすよ)(翻訳) The Original (Written in English) 図書館における電子書籍事情は、欧州においては難題であり続けている。若者にとって電子書籍は常に自然な書籍環境であり続けてきたが、比較的新しい現象であることは覚えておく価値がある。電子書籍は、1994年にインターネットが公に採用されてから数年以内に、科学分野の出版社と研究図書館の間で利用可能になり始めた。例えば、ElsevierのScience Directは1997年に発売された(1)。しかしながら、消費者を対象とした電子書籍はそれから10年
本格的電子アーカイブを目指して−アジア歴史資料センターの紹介− 1. 公文書館の新しい使命 岩倉使節団随員,久米邦武編『米欧回覧実記』には,欧米の「博物館」や「書庫」(図書館や文書館)が日本の近代化に不可欠なものとして紹介されている。明治6年5月29日の記録にはベニスの「アルチーフ」(文書館)の書庫に至ると記され,大友宗麟や支倉常長の書簡を実見し「西洋ニ博物館アリ,瑣細ノ微物モ,亦択ンテ蔵ス,書庫ノ設ケアリ,廃紙断片モ亦収録ス,開文ノ至リト云ベシ」と驚嘆した様子が残されている。久米をはじめ使節団の一行は欧米の発展が「旧ヲ棄テ新ヲ争」った結果ではなく,古今東西の知識を蓄え,一般に供した「知ノ開明」にあること,それを「博物館」や「書庫」が担っていることを理解していた(1)。 明治の指導者達は博物館や図書館の建設を奨励した。しかし,文書館が設立されることはなかった。国立公文書館が総理府の一組織と
2020年2月20日、東京都港区の国立新美術館において、文化庁主催シンポジウム 「企業の文化投資は経済界・文化界に何をもたらすのか」が開催されます。 「文化経済戦略」をまとめた文化庁が行っている、企業の文化芸術領域への投資活動の促進や企業・組織の保有する美術品の活用等を通じた、文化界・経済界双方の発展のための文化経済戦略推進事業の一環として実施されるもので、同事業の位置づけや戦略の説明のほか、世界の潮流や国内の事例を共有して、課題や今後の展望について議論するとしています。 参加費は無料ですが定員は240人で、事前の申し込みが必要です。 内容は以下の通りです。 ・文化庁が推進する“文化と経済の好循環 今里譲氏(文化庁次長) ・基調講演:文化と経済の好循環を生むためには 青柳正規氏(多摩美術大学理事長、山梨県立美術館館長、東京大学名誉教授、前文化庁長官) ・イノベーションのドライバーとしてのア
2020年1月27日、電子学術情報アーカイブPorticoが、2019年現在で、保存データは8.4%増加し、雑誌・電子書籍・デジタルコレクションといったコンテンツの保存ファイル数は17億8,000万点となったと発表しています。 Porticoでは、将来にわたっての信頼性の高い保存のため、アーカイブ管理にあたり厳格な基準に従って行っていますが、手作業を最小化し、職員を増やすことなく規模を拡大できる、事前取込(Pre-Ingest)プロセスを導入することでコスト管理が改善したとしています。 また、2020年には、新しいタイプのデジタルな学術成果を十分に保存するための最善の機会を保証するため、出版者のためのガイドラインやベストプラクティスを提供する計画であるとしています。 Celebrating our collaborative progress on preservation: 2019 y
組織内でデジタル保存の重要性を説明するためのガイド 関西館図書館協力課・木下雅弘(きのしたまさひろ) 2019年5月,ユネスコは,英・電子情報保存連合(DPC)と共同で作成したオンラインのガイド“Executive Guide on Digital Preservation”(以下「本ガイド」)を公開した。組織の意思決定者に対し,デジタル保存の重要性を分かりやすく示すための各種情報を提供するものである。デジタル保存に関しては,マイグレーション・エミュレーションのような技術的課題に注目が集まりがちだが,担当人員や予算の不足,コンテンツ管理体制の不備といった組織的課題もまた,デジタル保存の大きな障害となる。本ガイドは後者の課題に焦点を当て,意思決定者からの理解・支援の獲得を最終的な目的としている。以下,その概要を紹介する。 本ガイドは,ユネスコの事業「世界の記憶」の一部として進められている電子
『カレントアウェアネス』50年に向けての期待 調査及び立法考査局議会官庁資料課:村上浩介(むらかみこうすけ) 筆者は2005年7月から4年間、係長として本誌の編集業務を担当した。また編集業務の傍ら、オンラインでの情報提供に係る業務、システムの整備にも取り組み、2006年6月にウェブサイト「カレントアウェアネス・ポータル」(CAポータル)の本格運用を開始した。これが本誌40周年のエポックの1つであるとして、当時を振り返る記事の寄稿を仰せつかったが、筆者にとっては既定路線、敷かれていたレールの上を進んだだけである。CAポータルの立ち上げについては、当時、いくつか記事を執筆したが(1)、担当を離れて10年以上が経過し、少しは客観的に見られるようになった今、筆者が当時抱いていた感想を基に、本誌の占める特徴的な位置付けを再考してみたい。 大変ありがたいことに、CAポータルに対しては、図書館関係者から
2019年8月8日、米国ジョージ・メイソン大学のロイ・ローゼンツヴァイク・歴史・ニューメディアセンター(RRCHNM)は、Omeka Sのバージョン2.0.0の公開を発表しました。Omeka Sは、同センターが開発に携わっているデジタルコレクションのウェブ公開用オープンソースソフトウェアOmekaの機関向けバージョンです。 今回のリリースでは、検索性能の向上、コンテンツのタイトルや説明文の表示に関する機能の改善等が行われており、あわせてOmekaチームが開発した全モジュール及びテーマの更新も行ったとあります。なお、バージョン2.0.0公開後もバグ修正等の改善が行われており、2019年8月20日時点の最新版はバージョン2.0.2となっています。 Omeka S v2.0.0 Now Available!(RRCHNM, 2019/8/8) https://omeka.org/news/201
2019年8月24日、特定非営利活動法人映画保存協会は、ウェブページ「磁気テープの適切な取扱いと保存方法」の公開を発表しました。 主にカセットテープやVHS等のビデオテープを対象として、歴史や特長等の紹介とともに、適切な取り扱い及び保存の方法について解説しています。 「磁気テープの適切な取扱いと保存方法」を公開(特定非営利活動法人映画保存協会, 2019/8/24) http://filmpres.org/whatsnew/10963/ 磁気テープの適切な取扱いと保存方法(特定非営利活動法人映画保存協会) http://filmpres.org/preservation/library02/ 参考: ユネスコ“Information for All Programme”と国際音声・視聴覚アーカイブ協会(IASA)、磁気テープ記録の長期保存問題に取組む“Magnetic Tape Alert
アーカイブサミット2018-2019<報告> アーカイブサミット組織委員会・井上奈智(いのうえなち),眞籠聖(まごめたかし) 2019年6月11日に,千代田区立日比谷図書文化館(東京都)において,アーカイブサミット組織委員会(委員長:長尾真(京都大学名誉教授))の主催により「アーカイブサミット2018-2019」が行われた。本稿では,同委員会事務局の立場から,本会の内容について報告する。「アーカイブサミット」とは,産官学民を横断するアーカイブ関係者による集まりで,2015年,2016年(E1814参照)は東京で,2017年(E1973参照)は京都で開催された。5年間で4回目の開催となる今回がいったんの着地点となる。なお,今回は集中的な議論をするため招待制をとった。 ●アーカイブサミットが達成してきたもの 長尾氏の開会挨拶では,アーカイブサミットの意義として,ばらばらに課題に取り組んでいた産
2019年ISO/TC46国際会議<報告> 収集書誌部逐次刊行物・特別資料課・柳澤健太郎(やなぎさわけんたろう) 電子情報部電子情報流通課・奥田倫子(おくだともこ) 2019年5月6日から10日まで,カナダのオタワでISO/TC46(International Organization for Standardization/Technical Committee 46)の国際会議(E2047ほか参照)が開催された。TC46は「情報とドキュメンテーション(Information and Documentation)」を担当する専門委員会である。今回はTC46総会と4つの分科委員会(Subcommittee:SC)の各総会及び作業部会(Working Group:WG)が開催され,日本から4人が参加した。以下,国立国会図書館からの参加者(筆者)が出席した「技術的相互運用性(Technical
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