絵と文 熊倉功夫 16―葉っぱの食卓― もっそう飯 もっそう飯という言葉は、今ではあまり聞きません。昔は、牢屋の食事のことを「モッソメシ」といいました。別名、臭い飯。よほど悪い飯を使ったのでしょう。モッソメシは物相飯がなまったもので要するにお替りのできない盛り切り飯のことです。 四十年前といえば、かくいう私の子供時代のことですが、一杯飯というのは行儀の悪いことでした。ご飯はお替りするのが当然で、一杯しか食べないのは体調が良くないとか、逆に罰として一杯しか食べさせてもらえない場合のことでした。だから、モッソメシというのは、そういう一杯飯の代名詞で、まともならざることだったのです。 それで大人なるまで、モッソメシとは、よくないものだというイメージをもっていました。ところが、茶の湯の懐石には物相というものがありますし、松花堂などの弁当に登場する型に抜いたご飯が物相であることを知るに及んで、別に物